職人手作りのスウェーデン斧!
グレンスフォシュ・ブルーク/ワイルドライフ
スウェーデン・ヘルシングランド地方に本拠を置くグレンスフォシュは、1902年から斧を、1942年から鉄挺の生産を続ける歴史ある工房だ。単に旧来の工法にこだわるだけではなく、品質を高めることで自然資源の消費を抑えることをテーマにしている。森林用、薪割り用など25種以上の製品があるが、本作は野宿用の小型モデル。
¥24,000
問い合わせ先:ファイヤーサイド https://www.firesidestove.com/
SPEC
●重量=約445g(斧頭400g)
●全長=345㎜
●刃渡り=80㎜
●付属品=専用本革ケース付き
1902年から続くこだわりの鉄斧製作
フルタングのナイフでバトニングするのも楽しいが、本気で焚き火を楽しみたいならぜひハチェット(小型の手斧)を試してほしい。薪割りの効率がまったく違うし、ひと振りで「パカーン!」と割れる快感はナイフにはとても真似できない。
このハチェットはスウェーデンのグレンスフォシュ・ブルーク斧製作所の製品で、すべて職人の手作りだ。
現在のマスプロメーカーは分業制の工場生産がほとんどだが、同所では火床から真っ赤な鉄塊を出して鍛造用ハンマーで叩くところから、でき上がった斧を砂岩で磨き上げて刃を付け、それをヒッコリーの柄に嵌めるところまですべてひとりで行なう。そのため斧頭には責任と誇りの証として斧職人のイニシャルが刻印される。
じつは僕は20年前にこれと同型のハチェットを先輩から譲り受けてずっと愛用しているのだが、それには「MM」の刻印が入っている。マッチュアス・マッツソンという職人の作品だ。
今回撮影のためにメーカーから新品を取り寄せてみてびっくり。なんとMMの刻印があったのだ! こうして今も職人技が続いていると思うと感慨深い。まさに一生モノのひと振りだ。
ここがスゴい!
斧頭に製作者のイニシャルを刻印
手作業による鍛造から柄付けまですべての工程をひとりの斧職人が担当し、斧頭にはその職人のイニシャルが刻まれる。品質と誇りの証なのだ。
片手で振りきれる絶妙なサイズ感
多種多彩な同社製品の中で3番目に小さいモデルで、柄長345㎜で握りやすく、キャンプでの薪作りや軽作業にはちょうどいいサイズだ。
食い込みが良く叩きやすい斧頭
通常の薪割りだけでなく、鉈代わりに藪を払ったり、立ち枯れた樹から枝を落としたり、楔として丸太に叩き込んだりと、さまざまな作業に使える。
まさかり斧を現代に再定義した日本の手斧
越乃火匠 久八/手鉞共柄 黒全鋼
雪国越後の野鍛冶のブランドで、小刀、手鉞、鉈など、焚き火や薪ストーブで使いやすいシンプルで美しいデザインの製品をリリースしている。鋼材は使用目的に合った硬度と粘性にこだわり、焼き入れと焼き戻しを行ない、最適な角度で刃付けを施す。本作は薪割りに適した角度の刃付けで、刃欠けをを起こしづらく、安定した割り心地がある。革職人による高品質な専用ケースも魅力だ。
¥19,800
問い合わせ先:越乃火匠久八 https://kyuhachijapan.com/
SPEC
●重量=800g
●全長=300㎜
●刃渡り=130㎜
●付属品=専用本革ケース付き
匠の技が込められたマサカリデザイン
いっぽうこちらは日本の匠の技が作りあげた製品だ。越後の野鍛冶が昔ながらの焼き入れと焼き戻しを行なって「火造り」をしており、パラコード巻きのグリップなど洋風なのに、なぜか日本独自のセンスを感じる。
その流麗なフォルムをみて「おやっ?」と思った人もいるだろう。じつはこのデザインは、日本古来の「鉞」(まさかり)をモチーフにしたものなのだ。
鉞は倒木用の大型の斧で、金太郎が担いでいる姿でよく知られる。それを刃渡り13㎝の小さな手斧にリデザインしたのだ。さらにユニークなのは木の柄を使わず、ハンドル部分まですべて鋼材で一体製造してあること。これによって背に石や薪をガンガン打ちつけるバトニングにも対応できるのである。
実際に使って感心したのは、この共柄の部分に施された曲線だ。ここを掌でグッと握り込むことで押し切るときに力が入る。表皮を削いだり、フェザースティックを作るのにとても便利だ。
鋼材の厚みは6㎜とかなり薄いので、手斧と鉈の中間的な存在で汎用性がとても高い。伝統的な匠の手業とシンプルでモダンなデザインが融合した、じつに21世紀的な作品なのだ。
ここがスゴい!
革職人が手作りする専用革製ケース付き
専用ケースは数種類あり、写真のようなベルトループ付きのものをオーダーすることもできる。両手を空けることができて、キャンプでの作業に便利。
なんとビーパルの別注モデルもある
本誌は早い段階からそのユニークなフォルムと優れた作業性に着目し、オリジナルカラーの別注品を販売している。こちらはステンレス鋼だ。
まさかりフォルムは切削作業も得意だ
刃の直後の部分を握ることで、押し切りや切削作業時に力が入れやすくなる。薄く研がれた刃先と相まってフェザースティック作りも得意なのだ。
私が解説しました! ホーボージュン
大海原から6000m峰まで世界中の大自然を旅する全天候型アウトドアライター。X(旧Twitter)アカウントは@hobojun。
※撮影/中村文隆
(BE-PAL 2024年7月号より)