
が、しかし! 実はあまり知られていない穴場があるという。
そんな噂を聞きつけたBE-PAL編集部員がたどり着いたキャンプ場とは……。
左:編集 オオシタ
実家で家庭菜園をやっていたので土いじりは大好き(だった)。キャンプ、絶景、農園で大満足。
右:編集 オガワ
日々増えていくアウトドアギアの置き場が目下の最大の悩み。今回はおニューのテントを持参。
行ってきたのはこちら!
LOWKEYS FARM
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町富士ヶ嶺28
問い合わせ:https://lowkeysfarm.com/homepage/
営業:シーズン営業(2月休園)
予約:半年前から
テントサイト:20
その他の宿泊施設:0
モデル料金:5,000円
正確にはキャンプ場ではない!?
「すげー、めっちゃ映える!」
テントとその背後の巨大な富士山を眺めて、編集オガワが声を裏返した。
「富士山近すぎ! デカすぎ!」
編集オオシタの声もついつい大きくなった。
――その1週間前の編集部。オガワはウキウキして明らかに仕事が手につかない様子だった。ギア好きのオガワ、またまた新しいテントを買ってしまったのだという。そのオガワをオオシタがキャンプに誘った。
「それなら、テントの初おろしに富士山の見えるところに行こうよ。富士山周辺のキャンプ場はどこも大人気で混んでいるけれど、別の取材の最中に穴場を見つけたんだ」
実際にここLOWKEYS FARMに来てみると、金曜日にもかかわらず他のキャンパーは2人だけ。雄大な富士山の絶景を独占できた。が、それにしても穴場すぎるのではないか?
「じつはLOWKEYS FARMは、正確にはキャンプ場ではないんです」とオーナーの荒井貴裕さん。荒井さんは、横浜、銀座のミシュラン星付きレストランなどで研鑽を積んだ後、イタリア料理店を10年ほど営んでいた元料理人だ。
「いい素材をシンプルな調理で食べるのが一番美味しい」と考えるようになり、故郷に戻って3年ほど前から本格的に農業を始めたのだという。そして、昨年7月に山梨県から市民農園の認可を受けた。
「LOWKEYS FARMは、〝来園者と一緒に楽しみながら農園や地域を創っていく〟をモットーにした体験型農園です。あくまでもベースは農園なので、キャンプのみのご利用はできません。農園利用契約をして、農作業に参加していただいた方のみ、キャンプをすることができます」
オープンしてまだ1年足らずであり、しかも「農園」なので、ネットで「富士山 キャンプ場」と検索してもヒットしない……それが穴場の理由だった。
「キャンプサイトは景色最優先になっています。元は牧草地だった小高い丘の上がフリーサイトになっていて、富士山との間に建物や電柱などの人工物が見えません。ただし、快適なキャンプをご希望の方にはあまりお勧めできないのも事実です。サイトは、シンク(水場)や仮設トイレまで5分ほど歩かなければならない不便な場所にあるからです」
たしかに、サイトには本当に何もない。ファミリーやビギナーにはワイルドすぎてつらいかもしれない。
「でも、僕たちは全然オッケーです」とオガワとオオシタが口をそろえる。
「設備がなくても最高の絶景があるので!」
看板がない! 目印は黒いコンテナ

「LOWKEYS FARM」の看板がないため、ややわかりにくい。キャンプサイトはこのコンテナの場所から一段上がった丘の上にある。
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移動販売車モーモー商店で受付

黒いコンテナ横の緑色の軽ワンボックスカーが受付。薪・炭のほか、実家の牧場で搾った生乳を使ったジェラートカップなどを販売。
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自家製ジェラートで腹ごしらえ

かぼちゃ味 うめ~!

イタリア料理店を営んでいたオーナーが生乳を使って作る自家製のジェラート(500円)やプリン(400円)は絶品。
オーナー 荒井貴裕さん
「当農園は、みんなで0から創る、リアル"あつまれどうぶつの森"をコンセプトにした、会員制体験型農園です。ぜひ一緒に楽しみましょう」
農作業を終えて食事タイムへ!
テント設営後しばらく富士山を堪能したふたりは、キャンプの条件となっている農作業をすることに。荒井さんの指導の下、苗を植えたり種をまいたりといった春らしい作業に精を出した。
子供のころの土いじりの記憶を思い出したオオシタは、楽しそうな顔で夢中になって手を動かし続ける。一方のオガワは、収穫の時期にまた来ますと宣言。
「収穫直後の野菜の旨さは格別です。でも農作業はほかにも、植え替え、施肥、草取り、など年間を通していろいろあるので、ぜひ何度でも遊びにきてくださいね」(荒井さん)
およそ1時間の農作業(通常は15~30分)を終えると食事タイムだ。ふたりとも得意技は、「切る」と「焼く」。つまり料理が苦手なのだ。必然的にメニューはバーベキューとなる。
「荒井シェフも、〝いい素材をシンプルに食べるのが一番〟といっていたよね」とオガワがいえば、「わが意を得たりって感じ」とオオシタが呼応し、行きがけに手に入れておいた地元のブランド豚「富士ヶ嶺ポーク」を炭火で焼き始める……塩胡椒もせずに。ふたりは焼きあがった肉に当然のような顔をして塩胡椒をかけ、「旨い、旨い」と食べるのだった。
絶景も肉もお腹いっぱいいただいた一日となった。
「ごちそうさまでした!」
キャンプをする条件は農作業の手伝い!
1 )イチゴ&ジャガイモ植え
イチゴ

標高の高い寒冷地でも育つ品種を選び、露地栽培に挑戦して3年目。
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イチゴの実を採りやすいように、苗はやや手前に向けて植える。
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葉と葉の間の芽が土をかぶらないように、浅めに植えるのがコツ。
ジャガイモ

「黄金男爵」ともいわれるキタアカリという品種の種イモを植える。
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霜にあたらないよう15㎝ぐらいの深さにイモを置き、土をかぶせる。
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黒マルチのあらかじめ開いている穴に黙々と種イモを植えていく。
2 )原木にシイタケの菌打ち

カットされたナラの原木に専用のドリルで穴を5~6か所開け、その穴に種駒(シイタケ菌が染み込んだ木片)を打ち込む。

荒井さんの長男・十碧くんも参戦。両手でハンマーを持って見事打ち込みに成功。

菌のかたまり
3 )ポットに野菜の種まき

指の先の細長くて白い小さな粒がサニーレタスの種。1粒置いたら土を少しかける。

この日はキャベツとサニーレタスの種まきをした。葉もの野菜は寒暖差で柔らかくなるため、高原での栽培に適しているのだそうだ。
働いた後のBBQは最高!
地元食材を調達

キャンプ場がある富士ヶ嶺地区で育った富士ヶ嶺ポークのロース、豚トロ、豚タン。焼く前に塩胡椒を忘れても旨い!(負け惜しみ)
オガワ伝授! 火おこしのコツ

折りたたみ火おこし器の下からアルコールバーナーで炭を加熱。放っておいても炭に火がつくので、並行して他の作業ができる。

ぜひ お試しを!

LOWKEYS FARMの標高は1080m。春とはいえまだまだ寒いので、アチアチの肉が最高に旨い。おっさんふたり、花より団子の図。
調理は切るだけ

料理が苦手なオガワ&オオシタでも、切るだけならできるのだ。ニンジン、パプリカ、カボチャ、シイタケなどを切りまくる!
この日のお客さんはデュオキャン1組だけ!
完ぺきなテントサイトを作っていた田島さん。キャンプ歴5年。本誌愛読者で、火吹き棒などたくさんの付録を持っていた。感謝!「ぼくらもここ初めてです」。
田島さんの会社の同僚の尾澤さん。メンズ・ビギで「FUSE」というブランドを担当している。黒で統一されたギアがおしゃれ。「キャンプ歴 1年です」。

農作業中もバーベキュー中もずっと富士山に見守られていた至福の一日。太陽の動きによって変化する山の色・表情に感動した。
近くのおすすめスポット
変化に富んだ悪路を走行できる
急斜面や岩場などのコースを楽しめる。料金は車1台4,000円。三菱/トライトンのメディア試乗会もここで開かれ、性能の高さを実感。
富士ヶ嶺オフロード
山梨県南都留郡富士河口湖町富士ヶ嶺466
TEL:0555(89)2175
独コンテストで金賞受賞のハム
ドイツで認められた「山中湖ハム」の店。自社牧場で生産する「富士ヶ嶺ポーク」はその原料にも使われ、脂の甘みと肉の弾力が特徴。
丸一高村本店
山梨県南都留郡山中湖村山中708
TEL:0555(62)1129
※構成/鍋田吉郎 撮影/小倉雄一郎
(BE-PAL 2024年5月号より)