ハチに刺されても自己責任!? 日本一危険な祭り 「くしはらヘボまつり」って? | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2024.01.24

    ハチに刺されても自己責任!? 日本一危険な祭り 「くしはらヘボまつり」って?

    ヘボとはクロスズメバチの地方名。中部地方にはこの地蜂の幼虫を食べる習慣があるが、捕獲と飼育も大きな楽しみ。そしてなんと"収穫祭"まであったのだ!

    祭りでは巣をどれだけ大きく育てたかを競う!

    祭りの注意書き

    最初にただごとではないと感じたのは、会場へ向かうシャトルバスの中。防虫ネット付きの帽子を持参している人が何人もいたことだ。いやいや、さすがにそれはないだろう。いくら蜂がテーマのお祭りといっても、会場をぶんぶん飛び回っていたり、来場者を刺すわけがない。
     
    だが、虫避け帽を手にしたおじさんたちは真顔でいった。

    「刺されるときは刺されるぞ」

    「今日は特別あったけえから、だいぶ飛ぶんじゃねえかね」
     
    ここは、ヘボの聖地と呼ばれる岐阜県恵那市串原地区。記者はここで開催される『くしはらヘボまつり』に来ている。
     
    祭りの目玉は、愛情を込めて育てたヘボの巣の大きさを競うコンテストと即売会だそうだ。
     
    会場へ着くと、白い防護服を着た出品者が防虫ネットを張った農業用ハウスで煙幕をたいていた。飼育箱のヘボを麻痺させ、巣を計量袋へ移す作業だ。
     
    ハウスの中には巣から追い出されたヘボが飛び回っている。一部は出入り口をすり抜け小春日和の青空へ。そして、飛び疲れるとどこへでも止まる。そう、来場者の頭や服にもだ。入り口にはこんな立て看板があった。

    〈蜂を振り払うなど威嚇する行為をしないでください〉

    〈蜂アレルギーの方は会場に近づかないでください〉
     
    とどめは来賓のこんな挨拶。

    「えー、日本で一番危険な祭りと呼ばれているヘボまつりでありますが、コロナを経て4年ぶりに7回目の開催ができましたこと、まことに喜ばしく……」
     
    日本一危ない祭りなんかい!

                   ◎    ◎    ◎
     
    土の中のクロスズメバチの巣を探り当て、幼虫を食べる習慣は中部地方に古くからある野遊び文化だ。人々を魅了してきたのは、巣の中の蜂の子の味。親蜂に目印付きの餌を持たせ、巣を見つける蜂追いも楽しみだ。
     
    かつては、巣を掘り出したらすぐに幼虫を取り出して料理するのが普通だったが、一部地域では持ち帰った巣を庭に置き、餌を与えて大きくすることが行なわれてきた。その楽しみは、いつしか巣をどれだけ大きく育てたかを競う方向へ。その“先進地”が串原なのだ。
     
    クロスズメバチの巣の大きさは野生下では1.5㎏ほど。上手に飼育すると4㎏を超える。大会の優勝圏は6㎏だそうだ。
     
    何もかも驚きだが、さらに目が点になったのは来場者。コンテスト後の即売会の熱気がハンパではない。ヘボの巣の価格は1㎏1万円。皆さん、目当ての大きさの巣を見つけると、マン札を握りうれしそうにレジへ。
     
    刺された人を何人も見たが、とくに騒動にもならない。日本一危険な祭りは、日本一オトナなアウトドアの祭典だった。

    クロスズメバチ

    1 獲る

    ハチの巣探し

    目印がついた餌を親蜂にくわえさせ追跡し、巣のありかを突き止める。

    2 育てる

    ハチの飼育

    掘り出した巣を持ち帰り、自作の箱の中で鶏のレバーや砂糖水を与えて飼育する。

    3 品評する

    ハチの巣の品評会

    コンテストは毎年11月3日。出品した巣は品評後、来場者に即売される。

    4 表彰する

    表彰式

    令和5年は81巣が出品され、優勝は6190gのもの。歴代では2番目の大きさ。

    場内をスナップ! 見どころ満載でした

    お祭りのためにアメリカからやってきました!

    海外の参加者

    スゴイデス! スバラシイデス!

    重装備で見物にきていたのは米国の養蜂家ファミリー。ヘボまつりは海外の蜂愛好家にも轟いており、憧れのイベントだったそう。

    作業する人は刺されないよう、みんな防護服!

    防護服を着て作業

    巣箱は軽トラックごと防虫ネットを張った農業用ハウスへ。巣は出品者自らが箱から取り出す。刺されないよう全員防護服を着用。

    はちとり煙幕でハチの巣を安全に取り出す

    はちとり煙幕

    巣を取り出すときには、殺虫成分が入っていない『はちとり煙幕』を使う。巣の中にはまだ成虫がいるため、購入者にも配布される。

    巣は飼育すると野生の大きさの数倍に!

    大きくなったハチの巣

    飼育を前提とする捕獲は、巣がまだ小さな初夏のうちに行なう。高栄養の餌を絶えず与えると蜂の数が増えて、巣も大きくなる。

    優勝したハチの巣

    今回優勝の巣は長野県からの出品者の6190g。飼い方もさることながら、捕獲した巣の女王蜂の繁殖力が強いかどうかの運にも大きく左右されるとか。

    毎回恒例の大行列! 行列のお目当てはヘボグルメとヘボグッズ

    ヘボに関する書籍、酒器、フィギュアやTシャツなどのオリジナル品がずらり

    販売ブースにはヘボに関する書籍、酒器、フィギュアやTシャツなどのオリジナル品がずらり。会場に来ないと買えないものばかり。

    ヘボのまぜごはん

    五平餅

    来場者のもうひとつのお目当てはヘボの伝統食。ヘボのまぜごはん(上)は20分で売り切れ。ヘボの入った味噌を塗った五平餅(下)は長蛇の列で1時間待ちだった。

    販売する状態

    出店するまでの流れ 

    1)ヘボを捕獲する

    巣のありかを探り当てて掘り出し、中の幼虫とサナギを取り出して食べるのが基本的な楽しみ方。近年広がっているのが、巣を持ち帰って飼育し、より大きく育てる遊び方だ。

    捕獲の様子

    林の中に生魚などを置き、肉食のクロスズバチを誘う。巣への行き来を確認したら目印付きの餌を持たせる。

                          ↓

    巣を彫る様子

    目印を追跡して巣を探り当て、掘り出す。ごく軽い振動を与えると親蜂は警戒して巣に籠るので丸ごと捕獲。

    2)飼育する

    移送箱で持ち帰った巣を自宅に設置した飼育箱に移す。働き蜂の出入り口の近くで新鮮な鶏のレバーや心臓、魚肉、砂糖水などを置き毎日与える。すぐに巣へ餌を持ち帰ることができるため、効率が上がり自然状態よりも巣が大きくなる。

    檜皮ぶき方式

    檜皮ぶき方式

    遊び心に富んだ巣箱もこの祭りの見どころ。匠の技を感じさせる、檜皮を張り巡らせた和風建築風の巣箱。

    テラコッタ方式

    テラコッタ方式

    市販の園芸用大型陶器をふたつ合わせた巣箱。クロスズメバチは土中に巣をつくるので相性はよさそう。

    観察装置方式

    観察装置方式

    赤の透明フィルムごしだと警戒しない習性を利用し、観察窓を設けた巣箱。巣の成長が日々見られる。

    ビオトープ方式

    ビオトープ方式

    草やコケ、水を配したビオトープ型の巣箱。水も飲むクロスズメバチへの配慮で、夏は巣を冷やす効果も。

    ※構成/鹿熊 勤 撮影/柳沢牧嘉 写真/鹿熊 勤(捕獲)

    (BE-PAL 2024年2月号より)

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