長い住宅エリアを抜けると一気に縦走へ…【プロハイカー斉藤のアメリカ東海岸トレイル行状記 vol.11】
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    2024.02.06

    長い住宅エリアを抜けると一気に縦走へ…【プロハイカー斉藤のアメリカ東海岸トレイル行状記 vol.11】

    ニューヨークやボストンからも近い、アメリカ東海岸にある「ニューイングランドトレイル」。2023年10月、世界各国のロングトレイルを次々と踏破している日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんが、そのニューイングランドトレイルに挑みました。日本ではあまり知られていないニューイングランドトレイルの実態、アメリカ東海岸のトレイル事情などについて、斉藤さんによる実感たっぷりの最新リポートをお届けします。(これまでのお話は記事最後の「あわせてよみたい」をチェック)

    途中にかわいい本の貸し出しボックスを発見

    山頂で風通しが良いはずだったのですが・・・。朝目覚めるとテントはグショグショでした。フライとインナーテントを分けてしまい、インナーテントが濡れないようにします。

    まずは一気に山を下る道のりです。山を降りると紅葉の綺麗な湿地帯、そして民家の裏を通るような道へと続いていきます。予想通り、Mtリンカーンを下ってしまったらテントを張れる場所は全くありません。いい決断だと思いながら先を急ぎました。

    可愛い小さな図書貸し出しボックス。

    住宅地のある道路を歩くので、時間を稼ぐためにも少しペースを上げていきます。ふと、可愛い本の貸し出しボックスを発見しました。自動販売機も防犯上の問題で屋外にほとんど置かないアメリカで、こうした本の貸し出しボックスがあることに驚きます。このあたりは治安がいいエリアなのかもしれませんね。

    ペースを上げたものの、体調の改善はあまり見られず、苦しい状況が続いています。

    長い住宅地エリアを過ぎると、一気に縦走に入るのですが、1回1回裾野に降ろされるシーンの多い縦走でした。もちろん、縦走路に入ると水場は無いようでした。

    連なる山々。

    大量の汗、わざわざ山頂を一つ一つ通らせる道のりは、アパラチアン・トレイルを思い出させるのに十分なきつさでした。きっと、道のりのきつさだけでなく、隔離期間終了目前とはいえ、まだまだ本調子ではなかったのかもしれませんね。

    狭っ、僕の大きなバックパックではすり抜けるのが難しい。

    久しぶりのトレイルマジック

    途中、中国からアメリカに来て27年というデイハイカーに出会いました。かなり距離を保ちながら話していたのですが、僕がスルーハイクしていることを知ると、徐々に物理的距離が縮んでいきます。「僕はもう帰るだけだから」と言って、リンゴとトレイルミックスをくれました。ポートレイト以外の初トレイルマジックでした。今回、出来るだけ人に関わらないように歩いていたので、まさかのトレイルマジックです。

    登山客の多いエリアらしく、多くのデイハイカーに出会ったのですが、挨拶しても、無視されたりすることが多くなりました。久々に東側を歩いて思い出しました。こんなことはよくあったなと。僕は慣れているし、ちょうど人には近づけない時期だったので、むしろ良かったと特に気にもしません。

    スキナー州立公園にあるMtホリオーク山頂。

    今日はデッキでビバーク

    お昼過ぎにマウント・ホリオーク・レンジ州立公園のビジターセンターに立ち寄り、3Lの水を補給し出発しました。ここからの登りが半端なく、3マイルくらいと思っていた道のりも、僕の見間違いで5マイル以上あったのでした。

    何度も登りで足を止め、休みながら歩いていきます。急な斜面が多くテントなんて張れそうな場所はありません。どんどん先に進んでいくと、17時30分頃、Mtホリオーク山頂に着きました。とりあえず水を補給しようとトイレに向かいますが…情報では空いているはずの時間でしたが、冬季のためちょうど10月10日から16時にクローズと変更になっていたのでした。

    今夜の寝床はここでした。

    ここから先、トレイルは下りになるし、水場も期待できません。とりあえずビバークすることにし、暗くなったらデッキで休むことにしました。

    念のため、ポートレイトにも確認すると、問題ないんじゃないかなとの事でした。夕焼けの綺麗な時間が過ぎると、1人、1人といなくなり、陽が落ち切った頃にはデッキには僕1人。袋を広げ、テントを干して寝袋に入るといつの間にか眠りに落ちていました。(15.3マイル約25km)

    デッキからの夕焼け。

    New England Trail公式サイト

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載中。

     

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