世界一周ヨット旅で出会った日本人女性セーラーの「ナイナイ尽くしの生活」がスゴい | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2024.01.15

世界一周ヨット旅で出会った日本人女性セーラーの「ナイナイ尽くしの生活」がスゴい

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「今を全力で楽しむこと」にこんなに真剣に向き合ってる人に出会ったことがない!と感じるほど、エネルギーに満ち溢れる魅力的なセーラー、マキちゃん。

セーリングヨットSANTANAで世界一周中、前田家の麻裕です。

今年最初の記事は、勝手にシリーズ化している「ヨット旅で出会った凄い日本人」の第二弾をお届けします。

第一弾は昨年最初の記事で、「ヨット旅で出会ったすごい日本人!世界で活躍するヨットレーサー高柳俊成さんの人生」でした。

今回は、前田家がヨット旅を始めてから19か月、ついに出会えた日本人クルージングセーラー「マキちゃん」のヨットライフをご紹介します。

高柳さんの人生から未知の世界へチャレンジする勇気を、マキちゃんからは『今、この瞬間を全力で楽しむ』パワーを注入してもらい、ポジティブな気持ちで新しい年をスタートしていきたいと思います。

濃厚な人生を送ってきたマキちゃんとの出会い

マキちゃんの愛艇。ツルさんこと、TURU。

マキちゃんは、2022年に日本を出港し、オーストラリアまで南下し、現在はソロモン諸島でヨット旅を楽しんでいます。

日本人セーラーというだけでも珍しいのに、なんとシングルハンドル(一人旅)と聞いて、仰天を通り越して側転する勢いでした。

しかも、愛艇のTURUは、28ft(8.5m)と外洋ヨットとしては最小クラス。

小さなヨットで一人外洋を巡る、これは間違いなく大冒険!

これだけでも凄いことですが、過去にはバイクで世界一周というかっこ良すぎる経験をしていたり、日本で馬と暮らす女子『馬子さん』として知られていた時代があったりと、日本一濃厚な豚骨スープを売りにしているラーメン屋でも勝てないほど、濃すぎる人生を送っているのです。

もう気になることがあり過ぎて一体どこから突っ込んだら良いの!?という感じですが、マキちゃんのヨットライフは驚きに満ちていました。

セーリング中はココナッツだけ!? セーラーの驚きの食事

マキちゃんは控えめに言っても超人レベルの人間だと思いますが、それでもお腹は空くし、眠くもなるはず。

シングルハンドの場合、食事や夜間の見張りを一人でどんな風にこなしているのか?同じくセーラーの端くれである私たちにとってもまさに未知の世界なのです。

そんな気になるマキちゃんの最近のセーリング中の食事は、なんとココナッツのみ!

水分補給もできるヤングココナッツ。

「料理するのが大変だったら食べなきゃ良いんだよー」と笑いながら話すマキちゃんは、やはり超人でした。しかも、ココナッツで動く超人です。

ココナッツが手に入らないときはグラノーラバーを食べたりして、操船中はなるべく怪我のリスクがある調理をしないように心がけているのだそう。

そういえば、この連載にたびたび登場しているシングルハンドセーラーのSさんも、セーリング中の食事はあらかじめ大量に茹でておいた卵のみ、と言っていたことを思い出しました(プロテイン命の元ボディビルダーです)。ということは、あちらは卵で動く超人!?

「3食バランスよくしっかり食べなくては!」という無意識下の習慣に囚われない、潔い選択はぜひ見習いたいところです。

ちなみに夜間の見張り時は30分毎に起きているそうなので、こちらはバラエティ番組やミステリー小説もびっくりの「眠れない選手権」状態。

これはどう考えても辛い……でも、「海」「私」「空」だけの究極の自由空間は、シングルハンドセーラーしか味わうことのできない贅沢ですよね。

ファミリーセーラーには到底経験することのできない静寂に思いを馳せながら、この記事を書いています(スクリーン越しに輪ゴムを飛ばしてくる息子の攻撃に耐えながら)。

皆さんは、もし誰もいない海の上で一人きりになる自由を手に入れたら、それをどんな風に楽しみたいですか?

実は裸で過ごすのが好きだったり、新たな自分を発見してしまったりして笑。

セーラー的・南の島の贅沢ご飯

村人から頂いたというヤシガニ。見た目は完全に宇宙人。

セーリング中はココナッツしか食さないストイックなマキちゃんですが、停泊地では南の島ならではの贅沢ご飯を楽しんでいます。

それはレストランでいただく食事だけではありません。

とある日、大きなビニールの袋を手にSANTANAに遊びにきてくれたマキちゃん。

中身はなんと、ヤシガニ!

ヤシガニピース!硬いココナッツの殻も砕く強力なハサミ。

ヤシガニとは大型のヤドカリの一種で、南太平洋の島々では貴重なタンパク源として昔から食用されています。日本でも鹿児島以南に生息していますが、近年その個体数は減少傾向にあり、保護の対象になっています。ソロモン諸島でも日本と同様に規定のサイズや採取してはいけない時期が決まっており、卵を抱えているメスは採取、販売が禁止されています。今回は、採取禁止時期外に地元の方が厚意で採ってきてくれたため、ありがたく頂いています。

とある日は、一緒に釣りへ。

私たちは1匹も釣れず、マキちゃんの釣果がこの日のみんな分のディナーに変身。

カヌーで野菜や魚など新鮮な食材を売りに来てくれる。お金ではなく物々交換でも良い。

購入した新鮮な野菜や果物。これで300円ほど。

このように、食べ物に恵まれた南の島を旅するセーラーの停泊地での食事は、非常にバラエティに富んでいるのでした。

陸の暮らしよりも安くつく!? 海の上の豊かな時間

マキちゃんのヨットライフでまず驚いたことは、まったくお金がかかっていないこと。

以前の記事でヨット旅一番のハードルは「ヨットを手に入れること」とエラそうに書いてしまったのですが、マキちゃんはなんと初期投資ほぼゼロでヨット生活を始めていました。

愛艇のTURUは知り合いから譲ってもらったもので、なんと0!!

私たちもお隣さんから格安でヨットを譲ってもらったのはいいけど、故障ばかり……という経験があったため、譲ってもらえるようなヨットは動かないような代物ではないかと思っていました。しかし、マキちゃんのヨットは船齢50年とは思えないほど丈夫。こうして立派に外洋を旅しているのだから、中にはお宝が潜んでいることを知りました。

マキちゃんの陸への移動手段はインフレータブルSUP。

さらに、現在ソロモン諸島に滞在中のマキちゃんの生活費は1か月1万円以下、ということで実は陸で生活するよりもお金がかかっていない!?

この他に、ヨット旅の予算を大きく左右するのメンテナンス費用ですが、マキちゃんの愛艇ツルさんには、最近の一般的なクルージングヨットにあるものの多くがありません。そのため、メンテナンスにかける時間も限りなく少なく済んでいるのです。

名付けて、ナイナイ尽くしのヨット。

まずは、移動のためのエンジン付き小舟(ディンギー)がない。

SUPなら上げ下ろしが楽で、燃料もいらず経済的。そして、マキちゃんのSUPを漕ぐスピードは信じられないほど早い!

その上、1日で10キロほど移動することもあるらしく、こうなるとエンジンの必要性を全く感じさせません。

ナイナイ尽くしでも心は豊か

一緒に地元のお祭りを見に出かけた日。

日帰りのセーリングを楽しむデイセーラーであればまったく問題ないと思いますが、長期のヨット旅には必需品と思い込んでいた冷蔵庫も、マキちゃんの生活を見ていると意外となくてもやっていけるものだなあ、と思えてきたのです。

恋しくなるのはキンキンに冷えたビールくらいのもの?

ということで、同じ停泊地に滞在中は私たちの冷蔵庫でマキちゃん専用ビールが冷えていました(笑)。

その他にも故障しそうな計器はほとんど積んでいないし、自分で修理不可能な複雑なシステムも一切なく、とてもシンプル。

カビやすいマットレスも取り外してペラペラのマットに寝ているという徹底ぶりです。

そんなマキちゃんのヨットに唯一他よりも多く搭載されているもの、それは予備の錨やロープ類。

これは、何があっても大丈夫という安心を与えてくれる必要品で、その他は基本的になくても済むものは極力持っていません。

マキちゃんのヨットは、断捨離の極意が詰まっているのでした。

この「ナイナイ尽くし」、現代の便利な生活に慣れた私たちにとっては、正直なところ「それはキツイよ、マキちゃん……」と感じる部分もあると思います。

しかし、本人にとっては余計なストレスもなく快適そのもの。そしてかつてのセーラーもこんな生活をしていたのかなと想像できます。

もちろんコンフォートゾーンは人ぞれぞれですが、心豊かに暮らすために、実は多くの「モノ」は必要ないのかもしれません。

その証拠に、マキちゃんは今日も豊かに旅を楽しんでいる。

2024年もまだまだ続くヨット旅

マキちゃんを囲んで記念撮影。紫外線の浴びすぎで美白とは無縁……。夫の顔が干し梅のようになっている。

バイクで世界一周、日本で馬と暮らす、ヨット旅……どれも大半の人が実現可能と思わないことを「やってみたらできちゃった!」と飄々と語るマキちゃん。

この行動力は一体どこから来るの!? と驚くと同時に、「できない」と思わなければ、案外人生って自分のなりたい方向へ進んでいくモノなのかな?

と、なんだか自分までポジティブな気分になれるのでした。

楽しすぎる一週間を共に過ごし、お別れの後はしばらくマキちゃんロスに陥ってしまった私たち。

太陽のような明るさに、シャープな関西人トークが忘れられません。

ソロモン諸島で日本人セーラーに出会うという、不思議。旅は本当に思いがけないご縁を繋いでくれます。

停泊中のTURU(右)と前田家のSANTANA(左)。

早いもので2024年を迎えました。読者の皆様にとって2023年はどんな1年でしたでしょうか。

私たちは、まずは今まで安全に航海を続けられたことにホッとひと息しています。

今年の前田家の目標は、いよいよ間近に迫ってきた日本寄港です!

はやる気持ちを抑えられませんが、焦らずゆっくりと進んで行きたいと思います。

引き続き、前田家のスローなヨット旅にお付き合いいただけると嬉しいです。

それでは、また次回。

※前回までの連載ではまだメキシコを旅していますが、リアルタイムの前田家は現在ソロモン諸島に滞在中です。

 

私が書きました!
旅する一家
前田家

4歳の娘と6歳の息子を連れて、セーリングヨットSANTANAで放浪中の4人家族。2022年3月、カリフォルニアを出航。寄り道をしながらゆっくりと世界一周を目指します。海の上でサステナブルな暮らしを模索中。
Instagram:@svsantanajp
YouTube:https://www.youtube.com/@sailingsantana

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