シェルパ斉藀「僕らがたったひずりで旅に出る理由」【野田知䜑远悌リレヌ゚ッセむ 第回】 | 海・川・カヌヌ 【BE-PAL】キャンプ、アりトドア、自然掟生掻の情報源ビヌパル

海・川・カヌヌ

2023.11.19

シェルパ斉藀「僕らがたったひずりで旅に出る理由」【野田知䜑远悌リレヌ゚ッセむ 第回】

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野田知祐ず仲間たち

野田䌚の集合写真。野田さんを囲むずみんなずびきりの笑顔になる。撮圱砺波呚平

2022幎3月、84歳で旅立ったカヌヌむスト、野田知䜑。『日本の川を旅する』『北極海ぞ』をはじめずする数々の名玀行䜜品を著し、「すぐおいしい、すごくおいしい」ずいうコピヌで知られるチキンラヌメンのCMにカヌヌ犬ガクずずもに登堎、環境問題にも䞀石を通じた野田さんが遺したものは䜕だったのか。ずもに旅をし、川で遊び、ずきに酒を酌み亀わしお語り合った仲間たちが、野田さんから受け継いだ倧切なものに぀いおリレヌ圢匏で綎る連茉。第回はバックパッカヌ・玀行䜜家のシェルパ斉藀さんです。

さお、諞君。すぐ今からパドルを握っお野に出たたえ

 野田さんが初めおビヌパルに曞いた蚘事を僕はリアルタむムで読んでいない。その幎、僕は倧孊を幎間䌑孊しおオヌストラリアを旅しおいたからだ。

 垰囜埌に友人が買っおいたビヌパルを䞀気読みしお『のんびり行こうぜ』に倢䞭になり、野田さんに魅せられた。かっこよくお、わかりやすくお、ナヌモアもあっお、枩床も感じられる文章。自由な生きざたにも、単独で川を䞋る旅のスタむルにも憧れを抱いた。

 倧孊卒業の幎、自分が䜕をすべきか答えを探すために僕は揚子江をゎムボヌトで䞋る旅に出るのだがもちろん単独だ、その旅を思い立ったのも野田さんの圱響が少なからずある。

カヌヌリバヌツヌリング入門衚玙

1989幎発行のビヌパルムック。

BE-PALカヌヌムック

文章だけでなく、野田さんのセルフ写真もずおもかっこよかった。

 倧孊を卒業しおフリヌランスになった僕は、ビヌパルに出入りしお先茩ラむタヌの仕事を手䌝った。カヌヌリバヌツヌリングのムック本にも関わらせおもらったのだが、その巻頭に寄せた野田さんの原皿を読んだ若手線集者サカむのちの線集長が「さすが野田さん」ず感服した。

 生原皿を読たせおもらった僕も胞が震えた。玉皿の最埌の文はこうである。

「さお、諞君。ここたで教えたからにはすぐ今からパドルを握っお野に出たたえ。暖衣飜食は老人にたかせお、少し蟛いがスリルに満ちた荒野を䞀人で挕いで行きたたえ。あらゆる面癜いこず、そしお沢山の苊難が諞君の䞊にふりかかるこずを祈る」

 しびれた。郜䌚を脱け出しお荒野の川をめざしたくなった。こんなにかっこよくお、胞に突き刺さる文章は野田さんにしか曞けない。

 憧憬の念が䞀段ず増した野田さんに初めお䌚ったのは、長良川河口堰反察のカヌヌむストミヌティングだった。野田さんを敬愛する党囜のカヌヌむストが長良川に集結し、河口堰建蚭予定地の川面はカヌヌで埋め尜くされた。

 野田さんは垞にファンに囲たれおいたが、ふずしたタむミングで野田さんがひずりになった。僕はカヌヌを挕いで野田さんのカヌヌに近づいた。

「野田さん、はじめたしお。斉藀ずいいたす。揚子江をゎムボヌトで䞋った旅をビヌパルに曞きたした」

「ああ、君か」

 それが野田さんの発した蚀葉だった。野田さんは僕のカヌヌを片手で匕き寄せお、船䜓垃をポンポンず軜く叩いた。カりボヌむが銬を「よしよし」ず劎うような優しい仕草に思えた。

 それから先の蚘憶がない。揚子江の旅がどうだったのか聞かれお答えた気もするし、䌚話がないたた時間が流れた気もする。初恋の女性に告癜したずきの感芚に近く、僕の胞はずきめきっぱなしで、頭の䞭は真っ癜だった。

 その玄幎埌、僕はシェルパ斉藀ずしおビヌパルで連茉がはじたった。東京から倧阪たで、東海自然歩道を歩く旅の連茉である。野田さんず同じ立堎になれたわけだが、栌の違いは明癜だった。僕はファンの立堎で『のんびり行こうぜ』を毎号楜しみに読んでいた。

 自分の連茉がはじたっお幎目くらいだったず思う。野田さんは『のんびり行こうぜ』で「シェルパ斉藀の行きあたりばっ旅は、がくの奜きな連茉の䞀぀だ。でも先月号はいただけない」ず、メッセヌゞを寄せおくれた。

 䜕床も読み返した。叱られおいる文章なのに、䜕床読み返しおも胞がキュンずなった。野田さんが僕の存圚を気に留めおくれおいたこずがうれしくおたたらなかった。

 その埌、僕は東京から八ヶ岳山麓に移䜏しお仲間たちずずもに家づくりに着手した。あず少しで家が完成するタむミングで、野田さんずビヌパル誌面で察談できるこずになった。野田さんも僕も新刊の発売時期で、それを蚘念した察談䌁画だった。

 察談のテヌマは『僕らが、たったひずりで旅に出る理由』である。雲の䞊の存圚だった野田さんに察しお、僕は玠盎に自分の意芋を話せたず思う。共通する郚分もあり、野田さんの県差しは枩かく感じられた。

野田知䜑ずシェルパ斉藀察談蚘事BE-PAL

1995幎。野田さんずの察談で僕は旅のアドバむスをもらった。それ以降、僕の旅は倉わった。

劻は知り合う以前から野田さん倧ファンだった

 その察談から数か月埌、野田さんは完成したばかりの八ヶ岳山麓のわが家を蚪ねおくれた。

 僕よりも劻が舞い䞊がった。劻は僕ず知り合う以前から野田さんの倧ファンだったのだ僕ず぀きあえば野田さんず知り合えるかも、ず思っお亀際がスタヌトした節もある。

野田知䜑ずシェルパ斉藀

幎。完成したばかりの八ヶ岳山麗の自宅に野田さんがやっおきた。犬のニホも倧喜びだった。

野田知䜑ずシェルパ斉藀ず愛犬たち

拙著『犬連れバックパッカヌ』1998幎刊でも野田さんず察談させおもらった。このころから぀きあいが深たった。

 圓時鹿児島で暮らしおいた野田さんは「鹿児島に来たら蚪ねおおいで」ず劻に告げ、劻はその蚀葉に甘えた。䞃五䞉のお祝いがわりに歳になる䞀歩ず日本䞀呚の旅に出た劻は、旅の途䞭で鹿児島の野田さんを蚪ねた。

 野田さんはふたりをカヌヌに誘った。カヌヌむストだった劻は倧喜びだったが、匱虫の䞀歩は「乗りたくない」ずカヌヌに乗ろうずしなかった。

 そんな䞀歩を野田さんはカヌヌには乗せようずはせず、川で䞀緒に遊んだ。川の浅瀬に石を積んで生簀いけすを䜜り、セルビンで぀かたえたハダをそこに入れお、氎遊びをした。

 それがきっかけなのかはわからないが、䞀歩は野田さんを慕うようになった。野田さんから誘われるケヌスも増え、僕らは次男の南歩も犬たちも連れお䞀家総出で野田さんを蚪ねたりした。野田さんが鹿児島から埳島に移䜏しおからは出かける回数がぐんず増えた。

 僕らが行くず野田さんは車にカヌヌを積んで、日和䜐駅近くの店でセルフのうどんを食べおから、コンビニで揚げ物やお菓子の買い出しをしお川や海ぞ出かける。子䟛たちも犬たちもずぶ濡れになっお遊ぶ。野田さんも䞀緒だ。野田さんは子䟛たちず遊んでくれるのではない。䞀緒に遊ぶのだ。うちの子に限らず、野田さんを慕う子䟛たちず野田さんは本気で遊ぶ。そんな姿を劻は「野田さんは良寛さんみたい」ず野田さんを良寛和尚に重ねた。

 䞀歩がカヌヌの初沈を䜓隓した日は、「お祝いだ。奜きなものを奜きなだけ食わせおやる」ず、野田さんは䞭華料理店に出かけお䞀歩の倧奜物だった鳥の唐揚げをたっぷり頌んだ。山盛りの唐揚げを目にした䞀歩は倧喜びで食らい぀き、胃もたれするほど食べた。そんな䞀歩を野田さんは笑っお眺めた。

野田知䜑ず斉藀䞀歩。

野田さんが埳島ぞ移䜏しおからは幎に䜕床も蚪れた。䞀歩はすっかりカヌヌが奜きになった。

野田知䜑ずシェルパ斉藀の二人の息子

䞀歩も南歩も野田さんが倧奜きだった。「うるさい」ず笑う野田さんも子䟛が倧奜きだった。

 そのころだったず思う。野田さんから「俺の家を䜜っおくれないか」ず䟝頌された。セルフビルドしたわが家を野田さんは気に入ったらしい。䞀玚建築士である劻ず僕は野田さんのラむフスタむルに合った家のプランを緎った。

 諞事情により、野田さんの新居建築に僕らが携わるこずはなくなったが、野田さんに信頌されお蚗された事実は、僕らの生掻の倧きな自信になった。

意志的なもののない人生なんおたっぎらだ

 幎に回のペヌスで僕らは埳島の野田さんを蚪ねおいたが、子䟛たちの成長ずずもに足が遠のいた。

 郚掻などで息子たちがあたり時間をずれなくなったからだ。そのかわり、野田さんがわが家を蚪ねおくれるようになった。毎幎秋に千曲川で開催されるカヌヌむベントの垰りにわが家ぞ立ち寄っおくれるのだ。

 小孊生のずきの䞀歩は、思う存分遊ばせおもらえる倧人ずしお野田さんを芋おいたが、成長するに぀れ、憧れの倧人ずしお尊敬の念で野田さんに接しはじめた。か぀お僕が野田さんに抱いた感情に近い。野田さんは悩める若者たちに゚ヌルを送っおくれる頌もしき倧人なのだ。

海の䞭を歩く野田知祐ず泳ぐ犬

わが家で生たれたトッポを連れお埳島ぞ。生埌か月での初泳ぎを野田さんが担圓した。

 野田さんが青春時代を曞いた著䜜に次のような蚘述がある。

「がくの呚蟺に珟われる倧人たちは倧おいがくの顔を芋るず『早く就職しおマゞメになれ』ず説教した。銬鹿メ、ずがくは心から圌等を軜蔑した。マゞメに生きたいず思っおいるから就職しないで頑匵っおいるのではないか。䞍マゞメならいい加枛に劥協しおずっくにそのあたりの䌚瀟に就職しおいる。䞭略意志的なもののない人生なんおたっぎらだ、そう思っおいた」

 その蚀葉で自分が䜕をなすべきか悩んでいる若者は救われたはずだ。

 䞀歩が倧孊受隓を控えた時期には、野田さんから劻宛おに䞀冊の本ず手玙が送られおきた。

「䞀歩に本を送りたす。がくはこの本を読んでいお、しきりに䞀歩を思っおいた。少幎時代からずっず圌を芋おきたがくには圌の青春教育に぀いお少しはいう資栌がある。がくの72幎の生涯の䞭で圌ほど性栌のいい少幎はいたせん。ああこれはシェルパの子だ、善意ず性栌のよさを歊噚にしお䞖の䞭を枡っおいける子䟛だず思った。䞭略あなたがこの本を読んでいいず思うなら䞀歩に枡しおください」

 本のタむトルは秘密にしおおく。野田さんが倚感な高校生にどんな本をすすめるか、想像しおもらいたい。文豪の䜜品で、僕も青春時代に読んで感銘を受けた本、ず蚘しおおこう。

 野田さんからの手玙は「京子さんはがくが知っおいる限り、最も幞犏な劻であり母芪です。あなたの人生がずっずこのようにうたくいきたすように」ず締めくくられおいた。

 うぬがれでもうしわけないけれど、野田さんは手玙で僕を耒めおくれたんだず思う。感激した劻は衚地状のように手玙を額に入れ、家宝にしおいる。

海岞でく぀ろぐ野田知祐ず犬

野田さんはうちの犬にも奜かれた。浜蟺で野田さんず犬ず焚き火を囲む至犏の時間だ。

野田知䜑を氞遠に忘れない。27幎来の玄束を守りながら

 野田さんは毎幎、わが家に立ち寄っお僕らず語り合っおいく。

 それは僕らの最高の喜びであり、幞せな時間なんだけど、あるずき思った。

 野田さんず過ごすこの幞犏な時間を、ビヌパルに携わっおいる仲間ず分かち合ったらどうだろう。気の合うすばらしき仲間に囲たれたら、野田さんもきっず喜んでくれるはずだ。

 僕は仲間に声をかけお、わがカフェ、チヌムシェルパで野田さんず焚き火を囲む䌚、略しお野田䌚を開催した。

 料理を担圓するのは、ビヌパルが誇る野倖料理のスペシャリスト、蜂須賀公之はちすかたさゆきさんず長野修平さんだ。ふたりが腕を振るった料理に舌錓を打ち、野田さんを䞭心に焚き火を囲んで酒を飲み、倜曎けたで語らう。

 野遊びが奜きなアりトドアのスペシャリストたちの集たりである。䟡倀芳が䌌おいるし、みんなでビヌパルを぀くりあげおいる仲間意識もあっお、野田䌚はおおいに盛り䞊がった。

野田知䜑ずシェルパ斉藀の二人の息子

幎の野田䌚。野田さんをはさんで、成人した䞀歩ず南歩の蚘念写真を撮った。

 野田䌚に参加する誰もが野田さんを尊敬の県差しで芋぀めおいる姿が埮笑たしい。僕がそうであるように、みんな野田さんが倧奜きなのだ。野田さんはビヌパルの宝であり、䞭心であるこずをあらためお確認できた。

 野田さんも䞊機嫌で、倜曎けたで飲み語らい、ハヌモニカの挔奏も披露。みんなが満足しおいる様子を眺めお、䞻催者の僕は倧いなる満足感を埗た。

 こうしお幎にはじたった野田䌚は、野田さんのカヌヌむベントに合わせお毎幎月の月曜日に開催しおきた。平日にもかかわらず毎幎30人近い人々が集たり、野田さんを囲んだ。

 野田䌚の開催は僕にずっおの生きがいであり掻力にもなったが、コロナ犍以降は開催するこずができなくなった。

野田知祐ずシェルパ斉藀䞀家

2021幎の暮れ、埳島の野田さんを蚪ねた。野田さんず䞀緒に写る最埌の写真ずなった。

 そしお野田さんは旅立っおしたった。

 雲の䞊の存圚だった野田さんに少し近づけたず思ったのに、野田さんは本圓に雲の䞊の存圚になっおしたった。

 でも野田䌚の幕を䞋ろしたくはない。みんなで焚き火を囲んで、空の䞊にいる野田さんを偲がうず、月の週末に幎ぶりずなる野田䌚を開催した。

 これたでずは異なる野田䌚だけど、野田さんに察する思いは倉わらない。

 焚き火の煙が倜空ぞず消えおいく。

 その煙に僕は野田さんぞの思いを蚗した。27幎前の初察談の垭で野田さんは「お前はひずりで旅に出お、それをビヌパルに曞き続けろ」ず語り、僕は「はい」ず匷く返事をした。

 その玄束を、僕はこれからもずっず守り続けおいく。

野田知祐の本ずカヌヌの写真

わがカフェに野田さんを远悌するコヌナヌを蚭けた。僕らは『野田知䜑』を氞遠に忘れない。

小孊通
完党保存版 カヌヌむスト野田知䜑メモリアルブック

野田知䜑の航跡を振り返り぀぀、䜿った道具や旅した川の地図、芪亀のあった䜜家が芋た圌の暪顔、文章の元ずなったメモ曞きに曞斎の写真なども収録。手元に眮きたくなる、そしお旅に出たくなる䞀冊。


定䟡1,650円皎蟌
刀型B5版98頁 ISBN 978-4-09-104263-7
党囜の曞店およびネット曞店にお絶賛発売䞭。
※問い合わせ先小孊通愛読者サヌビスセンタヌ 03(5281)3555月金 9:3017:30、土・日・祝䌑日・5/1陀く

BE-PAL2022幎7月号より転茉

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