稜線に沈む夕陽、標高3000mでの名月……シェルパ斉藤親子、槍ヶ岳で絶景を堪能! | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2023.11.09

    稜線に沈む夕陽、標高3000mでの名月……シェルパ斉藤親子、槍ヶ岳で絶景を堪能!

    槍ヶ岳を登るシェルパ親子

    とんがった山頂が特徴的な名峰、槍ヶ岳に次男の南歩と登った。

    1年前に長男の一歩も含めた親子3人で穂高連峰を縦走したが、天候に恵まれなくて山上からの景色を眺めることができなかった。そのリベンジとなる山旅だが、槍ヶ岳をめざした理由はそれだけではない。おそらく史上初であろう某イベントを槍ヶ岳で実施するために出かけたのだが、その内容はBE-PAL12月号の『シェルパ斉藤の旅の自由型』を読んでもらいたい。WEBでは槍ヶ岳へ向かう道中の写真をたっぷり紹介しようと思う。

    穂高連峰

    2022年9月に親子3人で穂高連峰を縦走したときの写真。長男の一歩は素足に近いワラーチで縦走した。

    登山前夜は井上靖の「氷壁」に描かれた宿へ

    槍ヶ岳に登るルートはいくつかある。表銀座縦走コースを歩くルートや富山県側から西鎌尾根を歩くルート、岐阜県の新穂高温泉から飛騨沢に沿って登るルートなどがあるが、最もポピュラーなのは上高地から梓川に沿って槍ヶ岳をめざすルートだ。

    1日で上高地から槍ヶ岳まで行けなくもないが、僕らは上高地から歩いて約1時間半の徳澤園に初日の宿をとった。

    徳澤園は井上靖の小説「氷壁」に描かれた宿であり、「氷壁の宿」がキャッチコピーになっている。山小屋とは異なる設備やサービスを提供する老舗旅館的な宿で、登山前夜に心地よい睡眠をとることができた。

    徳澤園

    個室主体の徳澤園だが、山小屋形式の相部屋もある。相部屋の場合は1泊2食で¥14,500。槍ヶ岳山荘よりも¥500高いだけだ。

    徳澤園のラウンジ

    徳澤園のラウンジ。井上靖の直筆の文が展示されたコーナーもある。

    槍ヶ岳の穂先を目指して慎重に足を運ぶ

    翌日の天気は快晴。紅葉の名所である涸沢周辺が色づいているため、涸沢方面と分岐する横尾までは団体の登山客が多かった。横尾から先は登山者の数も少なくなり、道幅も狭くなって登山届が必要な山道に入っていく。

    横尾の橋

    横尾の橋を渡ると涸沢方面、直進すると槍ヶ岳方面に分かれる。ここまではハイキングの領域。ここから先は登山の領域となる。

    ババ平

    槍沢ロッヂの先にあるババ平はテント場になっている。ここにテントを張って身軽な装備で槍ヶ岳を日帰り往復する登山者も多い。

    ナナカマドの実

    ナナカマドの実が赤く色づいていた。青空に映える、愛らしい姿だ。

    ババ平までは渓流に沿った緩やかな道が続くが、次第に勾配がきつくなって樹木が見られなくなる。

    槍沢ルート

    渓流に沿った槍沢のルートは水場も多い。開けた場所でお湯を沸かしてカップ麺を食べた。1年前から愛用しているコンパクトチェアが今回の山旅でも役立った。

    森林限界を越えて急峻な岩場の登山道に入ると、槍ヶ岳が姿をあらわす。山に詳しくない人でも、富士山と槍ヶ岳は遠くからでも判別できる。とてもわかりやすい形をしているが、間近で見ると穂先とよばれる山頂のとんがり具合が際立つ。空気が澄んだ秋の青空が広がっているため、すぐ近くに感じるのだが、ここから登りがさらにきつくなる。一歩一歩慎重に足を運んでゆっくり進んだ。

    槍ヶ岳を望む

    行く手に槍ヶ岳が見えて、テンションが上がった。しかし、ここから山道は一段ときつくなる。

    槍沢の渓谷

    振り返ると僕らが歩いてきた槍沢の渓谷が望める。その奥に望める三角形の山は、深田久弥が選んだ日本百名山の常念岳だ。

    殺生ロッジ

    殺生ヒュッテには「槍見の昼寝台」が設置されている。山小屋に早めに到着したら、ここでのんびりと昼寝をしたい。

    難関ルートなのに「県道」!?

    途中で知人が働く殺生ヒュッテに立ち寄り、そこからは西鎌尾根を直登して槍ヶ岳山荘に向かった。

    西鎌尾根の稜線に出ると槍ヶ岳の穂先が目の前にそびえる。そこから北に向かって急峻な尾根が連続する北鎌尾根が見える。

    北鎌尾根には登山道はない。スキルと経験を併せ持ったクライマーのみが通過できるバリエーションルートで、孤高の人で知られる加藤文太郎も登山家の松濤明も北鎌尾根で遭難している。それほどまでの難関ルートだが、じつはこのルートは長野県の県道に認定されている。

    北鎌尾根の北部を流れる高瀬川沿いの道を歩いているときに発見したのだが、高瀬ダムの先に行き先が「槍ヶ岳」と表示された道路標識が掲げられていたのだ。帰ってから調べたらその区間は県道326号槍ヶ岳線(起点が槍ヶ岳山頂で終点が大町市)として認定されていた。クルマどころか、一般の登山者も歩けそうにない超難関ルートが県道であることが痛快でもある。

    西鎌尾根

    西鎌尾根から眺めた槍ヶ岳の穂先。左右対称の美しい三角錐の形をしている。左側の稜線に槍ヶ岳山荘が見える。

    北鎌尾根

    穂先の先に切り立った稜線の北鎌尾根が望める。クライミングの装備と相応のスキルなしには通れない難ルートだ。

    息子とふたり、いよいよ山頂へ!

    槍ヶ岳山荘

    槍ヶ岳山荘は巨大な山小屋だ。高校時代の同級生がバイトした時代は最盛期に1000人も宿泊者がいたらしい。1枚の布団に3人、廊下も寝床になるくらいのすさまじさだったとのこと。いまはゆったりと泊まれる。

    山頂直下にある槍ヶ岳山荘で宿泊の手続きを済ませたあと、レンタルヘルメット(1回¥500)を山荘で借りて、南歩とともに山頂へ向かった。

    僕は4回目の槍ヶ岳になるが、息子とともに登頂できた幸福感もあって、最高の絶景を堪能することができた。

    槍ヶ岳の山頂付近

    穂先までは槍ヶ岳山荘から片道30分。左側が上り専用、右側が下り専用というように一方通行になっている。ヘルメット着用が推奨されたルートだ。

    槍ヶ岳の山頂

    最後のはしごを昇り切る南歩。登頂の達成感を味わって、満足げだった。

    山頂での記念写真

    標高3180mの槍ヶ岳山頂。山はとんがっているものの、山頂は平坦だ。でも「アルプス一万尺」のような「アルペン踊り」を踊る気にはなれない。

    晴天の槍ヶ岳山頂

    山頂にいた人々と記念写真を撮り合った。4回目の槍ヶ岳だけど、これほど天気に恵まれたことはない。

    穂高連峰を槍ヶ岳山頂から眺める

    昨年歩いた穂高連峰を槍ヶ岳山頂から眺める。穂高連峰の奥に乗鞍岳が、さらにその先に御嶽山も望むことができた。

    大天井岳方面

    山頂から東側の大天井岳方面を眺めたら、僕らがいる槍ヶ岳山頂の影がくっきりと映った。あたりまえだけど、影もとんがっている。

    標高3000mで味わう満月の夜

    夕食後は槍ヶ岳山荘の前で稜線に沈む夕陽を眺めることもできたが、この日の絶景はそれで終わりではなかった。

    僕らが出かけた929日は満月だったのである。しかも中秋の名月である。

    山でのご来光や夕陽はそれほど珍しくないが、中秋の名月を山上で眺めるなんて、なかなか経験できない。南歩とともにダウンジャケットに身を包んで、標高3000mのムーンライズと月明かりに照らされる穂高連峰をじっくり眺めた。

    ガスに覆われて何も見えなかった1年前のリベンジを果たせた、至福の山旅となった。槍ヶ岳に初登頂した南歩にとっても、生涯忘れない山旅になるだろう。

    笠ヶ岳方向に沈む夕日

    槍ヶ岳山荘の前で、笠ヶ岳方向に沈む夕日を眺めた。

    槍ヶ岳の夕景

    夕日に染まる槍ヶ岳の穂先。この時間に登頂している人の姿も見えた。

    中秋の名月

    サンセットのあとは、中秋の名月のムーンライズを望む。松本市や安曇野市の夜景も見えて、スケールの大きい月見となった。

    槍ヶ岳でラジオ体操

    毎朝欠かさずにしているラジオ体操を槍ヶ岳でも実践した。空気が澄んだ絶景の山でするラジオ体操は最高に気持ちいい。

     

    シェルパ斉藤
    私が書きました!
    紀行作家・バックパッカー
    シェルパ斉藤
    1961年生まれ。揚子江の川旅を掲載してもらおうと編集長へ送った手紙がきっかけで『BE-PAL』誌上でデビュー。その後、1990年に東海自然歩道を踏破する紀行文を連載して人気作家に。1995年に八ヶ岳の麓に移住 し、自らの手で家を作り、火を中心とした自己完結型の田舎暮らしを楽しむ。『BE-PAL』で「シェルパ斉藤の旅の自由型」を連載中。『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』ほか著書多数。歩く旅を1冊にまとめた『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)には、山、島、村、東海自然歩道などの旅や、犬と歩いたロングトレイルの旅を収録。

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