スイスの絶景山岳観光地「サースフェー」で氷河トレーニング!壮大なクレバス帯の中を歩く
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    2022.07.18

    スイスの絶景山岳観光地「サースフェー」で氷河トレーニング!壮大なクレバス帯の中を歩く

    壮大な氷河の中を歩く女性メンバーたち

    氷河のクレバス帯を歩く筆者のグループ。©Switzerland Tourism/Florence Gross

    世界記録を目指して氷河トレーニング

    スイスでは2021年から女性を対象にしたアウトドア・プロジェクトが企画されています。筆者が昨年に参加した【100% woman peak challenge】では、ツェルマットに位置する4,164mのブライトホルンを女性のチームで登頂しました。

    今年のテーマは【100% woman world record】。世界25か国から80名の女性たちが集結。「世界一長い女性のロープチーム」として世界初の試みに挑戦。目指すのはスイスの山岳観光地に位置する4,027mのアラリンホルンです。ブライトホルン同様に「スイスで難易度が低い4,000m峰」として知られています。

    イベントは6月16~17日の2日間。1日目はサースフェーの氷河でトレーニング。その様子をレポートします。日本にはない壮大な氷河の素晴らしい景観や氷河歩行の技術や心得、潜む危険などが伝わればうれしいです。

    静かで落ち着く山岳観光地サースフェー

    サースフェーの村から見る4,000m峰の山々

    早朝にサースフェーの駅前から見る4,000m峰の山々。左手奥の丸みをおびた山が登頂予定のアラリンホルン。

    サースフェーは村の麓で標高約1,800mもある山岳観光地。街からの移動は公共交通機関のポストバス。駅前には木造の古い建物が並び、白い山の景色が素敵です。ツェルマットと同様に環境に配慮したガソリン車乗り入れ禁止のリゾートです。電気自動車が走る村は、きれいな空気と静かな環境が保たれています。周辺にはスイス国内最高峰の4,545mドームや多くの4,000m級の山々が聳え立ちます。雄大な氷河の景観を見ることができ、「アルプスの真珠」とも呼ばれています。

    信頼できる軽量でコンパクトな装備

    筆者の装備品

    参考例:筆者の装備品。

    登山靴はアイゼンが装着できる防水の雪山用。水分補給はバックパックを背負ったまま下ろさずに飲めるハイドレーションがおすすめ。ハーネスは軽くコンパクトになるものを選ぶとバックパックに収納しやすいです。ストックは折りたたみ式か伸縮できるものがコンパクトになりバックパックに装着しやすく便利。標高が高いと紫外線が強く雪や氷河を反射した太陽の光も強いので、サングラスは目を保護する質の良いレンズや顔の形に合うものを選んでください。

    トレーニング開始

    筆者のチームメイトとガイドのスーザン

    チームメイトに行動の予定を説明するガイドのスーザン(左から2番目)。レングフルー展望台にて。

    サースフェーの村からゴンドラでシュピールボーデンまで行き、ロープウェイに乗り換え2,869mのレングフルー展望台へ移動。絶景のレストランとテラス席があります。筆者のチームはガイドを含めて5名。国際山岳ガイドはツェルマットで20年以上ガイドとして活動するスーザン。登山者はスイス、イギリス、ポーランド、日本の4名の構成です

    目の前には翌日登る予定のアラリンホルン

    目の前には翌日登る予定のアラリンホルン。©Switzerland Tourism/Nicole Schafer

    各チームが歩いてハーネスやアイゼンを装着するポイントへ移動。目の前には翌日に登頂予定のアラリンホルンが現われ、壮大で優雅な山の景色に圧倒されました。普段の生活での悩みも小さく感じます。

    ガイドのスーザンが登山靴に合わせたアイゼンの調整をしてくれる

    ガイドのスーザンが登山靴にアイゼンを合わせ、調整をしてくれます。

    80名の参加者のほとんどが氷河に覆われた4,000m峰の登山に初めて挑戦します。アイゼンやハーネスをつけるのも氷河を歩くのも初めてです。どんな場所でどんなトレーニングをするのか少し緊張しましたが、ガイドのスーザンが丁寧に説明して指導してくれるので信頼できると感じました。

    氷河を歩く

    氷河の中をアイゼンを履いて歩き、足を慣らす

    アイゼンを履いて氷河の中歩き、足を慣らします。©Switzerland Tourism/Nicole Schafer

    まずはクレバスが少ない氷河の上をアイゼンで歩く練習から。氷河上での歩行はクレバスに落ちる危険があるので約15m間隔のタイトロープで結びます。ロープは踏まないように、少し張ってたるませずに歩くのがポイント。

    潜むクレバスにも気を付けながら歩く

    赤丸をめがけて足を置くとクレバスに落ちません。緊張しながら飛び越えます。

    危険が潜む場所

    ツェルマットとサースフェーは谷を挟んだ近い場所に位置します。ツェルマットガイド協会に所属する土地勘のあるスーザンは、ほかのグループより先に一番乗りで氷河のクレバス帯に向かいました。スーザンが「気を付けてね」と言ったポイントがここ。クレバスが白い雪に覆われていますが踏み抜く場合もあるので、少し遠い場所に足を置いて進みます。

    暑かったのでジャケットを腰に巻いた

    ジャケットを腰に巻きウェアの調整をしました。仲間と写真を撮りあう時間がありうれしかったです。

    ウェアを調節して温度調整

    天候に恵まれ暖かく汗をかいたので、途中で上のジャケットの腕部分を脱ぎました。ストックは1本で行動。不安定な氷の上や傾斜がある場所でバランスを保つのにとても役に立ちました。ハイドレーションは好きなときにいつでも水を飲めるので助かりました。

    懸垂下降と氷河を登る練習

    ガイドが確保して氷河のクレバスに降りていく

    スーザンがゲストを確保して、ゆっくり氷河のクレバスに降ろしてくれます。

    ガイドのスーザンが大きなクレバスを見つけ、懸垂下降をしてからアイゼンとピッケルを使って氷河の壁を登るトレーニングをしました。初めてロープをつけて降りるときは怖くて写真のように腰が引けてしまいますが、ハーネスに座るイメージでのけぞり足に装着しているアイゼンを氷の壁に突っ張りながら降りるのがポイントです。

    氷河にアイススクリューを2か所打ち、支点を作るガイドのスーザン。

    しっかり確保してくれるスーザン。慣れてくるとロープに体重を預けられるようになります。

    スーザンが硬い氷河にアイススクリューを2か所打って支点を作ります。その作業も間近でみることができるのも醍醐味です。

    氷河のボトム。約5mくらいの氷の壁

    上からのぞき込んだ氷河のボトム。ガイドがいる上部まで約5mの氷の壁。

    実際に降りると深さを感じ、足元が崩れないかよからぬ心配もしてしまいます。でもスーザンが上から常に確保してくれているので大丈夫。普段の生活からかけ離れた大自然の中にいることを実感しました。

    アイゼンとピッケルを使って登る練習

    アイゼンとピッケルを使って登る練習。

    アイゼンの前の爪を食い込ませてしっかり立ち、ピッケルを刺して上がっていきます。上からはスーザンがロープを張ってくれて、「上手!がんばれ!!」と励まし褒めてくれます。良い先生に恵まれました。明日もこんな場所を登るのかと気になりましたが、この日のトレーニングのみです。

    氷河のクレバスをジャンプして渡る

    ドキドキしながら氷河のクレバスをジャンプして渡ります。

    クレバスをジャンプして飛び越える

    大きなクレバスを越えるときは、スーザンが確保して一人ずつ渡るのをサポートしてくれるので安心です。いろいろな傾斜や不安定な氷河の上を歩き、体や足元が少し慣れた気がしました。

    氷河の白、空の青、牧草地の緑

    サースフェーの村に降りると氷河から緑が美しい世界へ

    サースフェーの村に降りると、氷河から緑が美しい世界へ一変しました。

    トレーニングが終わり、遅いランチを展望台で食べてサースフェーの村に戻ると、新緑が美しい世界へ。上と下では自然環境の大きな違いに驚きました。

    村の真ん中にあるサースフェーガイド協会

    村の真ん中にあるサースフェーガイド協会。

    メインストリートを歩いていたらサースフェーの山岳ガイド協会を発見。今回のような氷河トレーニングや4,000m峰の高所登山、クライミング、ヴィアフェラータ、ツアースキーなどのプログラムがあります。ご希望の方はインターネットか現地にて予約するといいですよ。

    サースフェーのヴァリサーホフ・グランドホテル&スパ

    木造でゼラニウムの赤い花が飾られたスイスらしい雰囲気。ヴァリザーホフ・グランドホテル&スパ。

    トレーニングを終え宿泊したヴァリザーホフ・グランドホテル&スパへ戻り、シャワーを浴びて生き返りました。落ち着いた雰囲気を味わいたい旅行者にサースフェーは人気の山岳観光地です。高所登山やクライミングに限らず、ハイキングやマウンテンバイクも楽しむことができます。展望台へ行き、山と氷河の景色を味わいながらのんびりお茶をして過ごすだけでも贅沢な時間です。いつか絶景を堪能しにぜひ訪れてみてください。

    ●取材協力:スイス政府観光局

    www.myswiss.jp

    ●サースフェー観光局

    https://www.saas-fee.ch/en/

    ●ツェルマット観光局

    https://www.zermatt.ch/en

    ●100% Women Peak Challenge サイト

    https://www.myswitzerland.com/en-ch/experiences/100-women/100-women-world-record/

    ●ヴァリサーホフ・グランドホテル&スパ

    https://www.walliserhof-saasfee.ch/en-us/

    ●サースフェーガイド協会

    https://www.saasfeeguides.com/en_GB

    私が書きました!
    日本山岳ガイド協会認定登山ガイド&スキーガイド・ヨガ講師
    西村志津
    スイス在住、2児の母。スイスの山岳観光地やアクティビティ、ギア、トレンド、文化をお伝えします!ヨガを通して心と体のメンテナンス方法もお届けし、より快適な山行のお手伝いができれば嬉しいです。美味しいものとカフェ巡りが好き。スイスと日本の架け橋となる活動に努める。オンラインにて「スイスツアー」や「登山者のためのヨガ」を発信中! instagram@seas_yoga_hiking_skiing

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