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    2022.05.24

    舞台はあの世界遺産ドロミティ!トレイルランの魅力に迫る!

    北イタリアの3州にまたがる世界遺産ドロミティ山塊。ゴツゴツした巨大な岩山が織りなす絶景に魅了され、登ってみたい!と憧れを持つ人は多いでしょう。では、走ってみたい人はいませんか!?

    実はここでは4月以降、毎月のようにさまざまな難易度のトレイルランが開催されています。中でも6月下旬に行なわれるラヴァレード・ウルトラ・トレイル(Lavaredo Ultra Trail)は超人的。今回はその出場経験者に話を伺い、トレイルランの魅力に迫りました。

    ゴツゴツとした岩山の連なるドロミティは2009年に世界自然遺産に登録された。

    アマチュアトレイルランナー トレーニングは仕事後や休日に

    今回お話を伺ったのはイタリア人のフェルディナンド・リッツィオリさん(44歳)。なんと本業は美容師という、アマチュアトレイルランナーです。

    美容師コンテストにも出場する腕前のFerdinando Rizzioliさん。

    7年前にトレイルランを始め、2019年に初めてラヴァレード・ウルトラ・トレイルの87km(今年は80km)、高低差4600mバージョンに参加。20時間34分かけて見事、完走を果たしました。

    –トレイルランを始めたきっかけは?

    Ferdinando(以下F):38歳になり、20年ほど続けていたサッカーをやめたんですが体は動かし続けたくて。団体スポーツで他人に負けないよう頑張るのとは違い、トレイルランは自分自身との闘い。それに挑みたいと思いました。

    –仕事しながらのトレーニングは大変そうですね。

    F:毎週3回、悪天だろうと必ず走りに行きます。美容院が休みの日曜と月曜の朝7時から山や丘に行って20kmくらい。登る高さが1500mなどと多めのときは距離を15㎞にするなど調節して、35時間くらい走りますね。あと、水曜日は仕事後すぐに飛び出して山に行き、夜11時くらいまで走っているし、月に1回は3050kmの距離を走る機会を作っています。

    –山を走っている間、何を考えるものですか?

    F.いつも2人以上で行くので、くだらないお喋りばかりですよ。

    –余裕ですね。

    実は一度、1人で行ったときに下りを猛スピードで走っていたら滑って崖下に落ちかけて。危険を感じたので、それ以来、必ず友人と行くようにしています。

    地元のトレイルランクラブに所属し、レース中も終始、仲間と一緒に走って励まし合うという。Photo: Lavaredo Ultra Trail

    憧れのドロミティでトレイルラン大会に出場

    –3年前に参加したラヴァレード・ウルトラ・トレイルについて教えてもらえますか?

    F. プロ向きの最長レースは距離120km(高低差5,800m)なんですが、僕が参加したのは距離87kmという短めのタイプ。標高10002500mに位置する山道を、アップダウンを繰り返しながら走ります。このような大会は初めてで未知の世界だったのですが、20時間半かけてなんとか走り切ることができました。

    –完走おめでとうございます。まる一日、山を走り続けるのは想像を絶しますが、一番印象に残っているのは何でしょうか?

    6時にスタートして、いきなり1000mくらいの高さを登るのはきつかったのですが、8時頃に着いたトレ・チーメ。雲一つない晴天に恵まれて、それはもう感動的でした。

    序盤、高さ1000mを登った先にあるトレ・チーメ・ディ・ラヴァレードを背景に。Photo: Lavaredo Ultra Trail

    –食事はどうするのですか?

    F:約10kmごとに給食ポイントがあり、パスタなどを提供してくれるんです。それを10分くらいでさっと食べて、また走り出します。他にもタラッリをいつも持って行きますよ。適宜、炭水化物を取るためです。

    タラッリとは小麦粉をこねて丸く形作り硬く焼いたもので、サクッと簡単に食べられるスナック的存在である。

    F:給水に関しては普通の水とミネラルたっぷりの水、2種類のボトルウォーターをリュックに入れ、ストローを使って飲んでいました。

    –服装や体温調節は?

    F:ドロミティは岩山なので日陰を作ってくれるような木々がない。そのため、標高2000m以上とはいえ、日中は35度以上もあったみたいで暑くて暑くて。ただし、早朝から夜中まで走るわけですから、防寒具は必需品です。機能性半袖シャツをベースに、長袖シャツや防風ベストなどを必要に応じて身に付けていました。

    精神的にも肉体的にも限界への挑戦

    –特に困難を感じたことは?

    F:確か9か所ほど小川を渡らないといけなくて、時に膝くらいまで水に浸かるんですよ。最初は靴を脱いで裸足で入るようにしていたんですが、時間ロスが嫌で靴のまま水の中に入るようになったんです。そしたら、残り30㎞ほど濡れた靴で走る羽目になって、足の裏全体に水膨れができてしまった。乾いた靴を保つ重要性を実感しましたね。

    –体力的にはどうでしたか?

    F:登りがきついときは、歩くことももちろんあります。早歩きですけどね。でも、70km地点あたりからがもう本当に辛くて。腹痛とか足の疲れとか体が悲鳴を上げて限界が見え始めるというか、くじけそうになりました。

    –棄権も考えましたか?

    F:いや、辛いときは家族など大切なことを考えながら進み続けます。そうすると、パワーを送られている気がして力を振り絞れるんですよね。家族はいつも「(こんな過酷なレースは)これで最後にしてね」って心配してくれているけど、最大の応援者でもあります。

    歩いてもいい。けれど、決してあきらめないことが肝心だと改めて感じました。

    ゴールした瞬間「すぐに靴を脱いだ」とのこと。その後、仲間たちと祝杯を挙げ、やり切った満足感に浸ったそう。Photo: Lavaredo Ultra Trail

    最後に、「このドロミティという唯一無二の美しい景観の中を走っていると、他の山とは一味違う、感慨深いものがあります。陽の落ちる頃、ジアウ峠に向かっている途中で見えた岩山の輝きといったら。その神々しさが忘れられないですね」とフェルディナンドさん。見渡す限り絶景に包まれたドロミティのトレイルランにはもっと短い距離の大会もあるので、気になる強者の方はぜひチェックしてみてください。

    Lavaredo Ultra Trail

    メインレースは距離120km、今年で15回目

    202262423時スタート
    ・スタート&ゴール地点:コルティナ・ダンペッツォ(2026年冬季オリンピック開催地)
    ・距離:120km、高低差:5,800m
    ・制限時間:30時間 / 平均タイム:23時間 / 最高記録:12時間4
    ・参加者:1800人(うち、13%は女性)
    ・この大会の前後(623日~26日)に、80km48km20kmバージョンも開催されます。
    ・参考URLhttps://ultratrail.it/en/

    私が書きました!
    イタリア・ヴェローナ在住ライター
    新宅裕子(海外書き人クラブ)

    東京のテレビ局で報道記者を務めた経験を活かして食やワイン、伝統文化、西洋美術等を取材し、ガイドブックにはないイタリアのあれこれやマンマ直伝のレシピを紹介中。訪れた国は45か国以上、47都道府県制覇の旅好きでもある。休日には登山やキャンプ、キノコ狩りなどのアウトドアを楽しみ、いつかアルプスの麓で山小屋を営むのが夢。海外書き人クラブ会員https://www.kaigaikakibito.com/

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