ユルく気ままに走ってもいいじゃない。『スポーツ自転車でいまこそ走ろう!』ブックレビュー | 本 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

ユルく気ままに走ってもいいじゃない。『スポーツ自転車でいまこそ走ろう!』ブックレビュー

2022.04.02

山本修二著「スポーツ自転車でいあまそ走ろう!」の表紙

BE-PALでも執筆活動を行なう山本修二さん著『スポーツ自転車でいまこそ走ろう!』。

これから自転車をはじめる人への道しるべ

レクリエーションのつもりで買ったロードバイクが、気づけば倉庫の端で埃を被ってしまっている。どことなく想像にたやすい光景だが、ウン万円、ウン十万円もする買い物を失敗してしまったと考えるとゾッとしてしまう。自転車が趣味として世間に定着して久しいが、今も競技として生真面目に取り組む根底の教えも多い。

もっとユルくて、マイペースに自転車と付き合える道しるべがあれば、誰もが健康的に長い年月をかけて自転車と付き合えるのではなかろうか。いまからスポーツ自転車を手に取るあなたに、また自転車には乗っているが違った楽しみ方を知りたいあなたに、いま手に取っていただきたい一冊『スポーツ自転車でいまこそ走ろう!~一生楽しめる自転車の選び方・乗り方 』をご紹介したい。

スポーツ自転車が抱える問題を「ユルく走る」提案で断ち切る

前書きに記載された「ユルく走ろう!」というフレーズ

前書きのタイトルには「ユルく走ろう!」というこの一冊のコンセプトともいえるフレーズが選ばれている。

いわゆる「スポーツ」とは、相手がいて勝敗を競ったり、楽しみを求めたりする身体運動全般の総称だ。サッカーや野球、マラソンなど、その種類は多岐に渡る。本題の「自転車」も単なる移動手段ではなく、スポーツの一種として用いられ日本でも人気を集めている。しかし、ほかの競技と比べれると、初心者がとっつきづらい側面も少なくない。とりわけプロ選手たちが活躍するチャンピオンスポーツに注目が集まり、解説書などはそこにたどり着くための道筋を説いたものが多数派となっている。

本誌でも活躍する山本修二さんの走行シーン

BE-PAL本誌でも活躍される山本修二さんと愛車のサーリー。

一方本書では、ページをめくると、初っぱなに「ユルく走ろう」という前書きが飛び込んでくる。スポーツ自転車が抱える問題を断ち切るようなフレーズだ。著者は、本誌BE-PALのウェブ・誌面でもライターとして活躍されている山本修二さん。穏やかな風貌と角のない物言いの編集マンだが、10代20代にはBMXレーサーとして活躍。大手メーカーの契約選手として国内レースで42勝を挙げた。そんなチャンピオンスポーツのど真ん中を走っていた彼が、今だからこそ見える世界を丁寧に綴っている。

速く走るだけじゃないスポーツ自転車の魅力に迫る

海岸線を走る山本修二さん

海岸線をシングルスピードの自転車で走る( Photo by 三浦孝明)。

全体で5つに分かれる章のうち、1、2章では読者が自転車を購入する前に知っておきたい事項がずらりと並んでいる。お金をかけなくても楽しめること、前傾姿勢で空気抵抗を減らさなくても自転車は楽しいこと、荷物をたくさん積めて普段の生活にも役立つ自転車があること。どのような自転車ライフを送るかは本人の自由だが、誰しもが脱落することのない、ゆとりがここには記してある。

最終章に書かれたツーリングキャンプについてのトピック

いずれの章、内容も、ベテランサイクリストの山本さんが普段楽しんでいる模様をベースに話が進んでいる。

3、4章では自転車の扱い方や、乗り方が解説される。ここでも肩の力を抜いた解説が盛り込まれており、たとえば疲れにくいパーツの選び方や、体の故障を予防するノウハウ、また公道を走るうえでの安全対策が掲載されている。速く走らない分、長い年月をかけてスポーツ自転車を楽しむためのコツがたくさん散りばめられている。

最終章では、手にした自転車を使ってどのように楽しむか、自転車での体験を「小さな冒険」と称して紹介している。サイクリングルートの探し方や、遠出する際の輪行の仕方のほか、番外編としてツーリングキャンプについてのトピックも読んでいてすぐに実践したくなるような内容だ。

長くスポーツ自転車と付き合ううえで、頼れる一冊

自転車のラックに家庭菜園用の土を積む

自転車の遊び方は本当に自由だと感じる。速く走ることを手放すことで、新たな楽しみが見つかることもあるだろう。

本ウェブサイトや自転車誌面コラムなどで私が「自転車をはじめること」について語るとき、たびたび地元の自転車屋さんの貴重さを説いている。それは、自転車屋さんが小売店としてだけでなく、ときには楽しみ方を教えてくれる先生として、ときにはそのジャンルのお作法を教えてくれる先輩として、趣味を楽しむうえでの拠り所となってくれるからだ。今回ご紹介したこの一冊は、気の知れた自転車店のような頼れる存在だと思えた。

山本修二さんの自転車キャンプ風景

先に紹介した書籍内にも登場する1シーン。ツーリングキャンプでは、写真に収まるギアすべてを自転車で運ぶこともできる。

まさにこれからスポーツ自転車を始める方が、最初に頼ることのできる心強い存在がこの『スポーツ自転車でいまこそ走ろう!』なのだと思う。

著者の説く「ユルく走る方法」とは、近年重要視されるサステナブルな姿勢、つまり環境・社会・経済面で持続可能な文化を維持するための大事なフレーズだと感じた。誰も最初からその趣味を終えるイメージをもって取り組まないし、誰もが長く楽しい趣味を続けられることを望んでいるはずである。その意味で、スポーツ自転車に乗ってみたいと考えている人、まだまだ大切な愛車に乗り続けたい人ならば誰もが手にとるべき一冊が本書だ。

『スポーツ自転車でいまこそ走ろう!~一生楽しめる自転車の選び方・乗り方 』

著者:山本修二
発売元:技術評論社
定価:1650円
ウェブサイト:https://gihyo.jp/book/2022/978-4-297-12633-9

私が書きました!
CX/BMXアスリート
腰山雅大
自転車歴20年の社会人アスリート。BMXパーク競技を経て泥の中をレースするシクロクロスへ参戦、ボーダーレスな自転車競技活動を続けている。All-City Cyclesの本国契約ライダーとして国内トップカテゴリーを走る一方、本職では自動車整備業に従事。乗り物のほかコーヒー、銭湯、カメラにアウトドアなど、趣味は常に多彩でオーバーフロー気味。https://www.instagram.com/vhlg/
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