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大地の再生から始めた沼津のキャンプ場「森のキャンプベース」。地元と環境に寄り添ったサステナビリティとは?

2022.03.12

アイキャッチイラスト

そこに土地があったから、キャンプ場をつくってみた

キャンプの様子

出典:The Old Bus 公式HP

前回の記事「富士山の絶景を楽しめる沼津のチルアウトスペース「The Old Bus」。見捨てられたものに価値を見出す哲学とは?」では、オーナーの舛本夫妻(佳奈子さんと弘毅さん)がThe Old Busを開くことになった経緯やその哲学を紹介した。

舛本夫妻はThe Old Busの常連客のために、その近くにキャンプ場をつくっている。名前は「森のキャンプベース」。随所には、ふたりの哲学とサステナブルな技があふれている。

まず取り組んだことは、「大地の再生」

「大地の再生」作業の様子

「大地の再生」作業の様子。

現在キャンプ場となっているその場所は、昔もキャンプ場として活用されていた。しかし、長く使われていない間に多くの水を含み、テントを建てるには難しい状態になっていた。山からの雨水が貯まる場所ができてしまい、空気が滞(とどこお)っていたのだ。

そこで、舛本夫妻が取り組んだのは、造園技師・矢野智徳(やのとものり)さんが長年にわたる観察と実践のくり返しを経て見出した「大地の再生」。環境再生の手法だ。

大地の再生の考え方では、土の中の水と空気の流れは、人体でいう血管のようなものと捉えられている。だから、まず土地の血の流れをよくする必要がある。

まず、その滞留している水と空気の流れを改善するために、「水脈」と呼ばれる溝を掘っていく。その水脈に、炭と竹で「しがらみ」(※)をつくり、微生物が住みやすい場所にしていく作業を行ったという。つまり、土の中の水と空気を循環させる手助けをしたのだ。

※空気や水をゆるやかに通すように、枝でしっかりと組まれた木組み

弘毅さんは、大学・大学院ともに「バイオレメディエーション」を専攻している。「バイオレメディエーション」とは、微生物や植物たちの力を活用して、土壌や地下水の汚染を修復する技術のことだ。

「大地の再生」は、弘毅さんが持っていた知識と照らし合わせてみても、納得のいく技法だった。

その後、土の状態は見事に復活!

その後もキャンプ場として再オープンできるように、環境に配慮した整備をさらに進めていった。元々あるものの魅力を最大限に活かしながら、廃材も活用して設備を整えた。

“循環していない社会”になっていることがおかしい

弘毅さんは、京浜工業地帯付近で生まれ育った。母親が環境問題運動に積極的に参加しており、「サステナブル」は身近なテーマではあったという。

大学の専攻を決める際に、上記で紹介したような微生物の活躍を知って強いロマンを感じ、大学・大学院ともに「バイオレメディエーション」を専攻した。

そもそも、“サステナブル”な生き方をしていかなければ、わたしたちは“持続可能”ではない。なのに「サステナブルな生活をしよう!」と声かけしなくてはいけない現状がおかしいのではないかと、弘毅さんは言う。

「本来、すべてが循環して調和するようにシステムができているはずなのに、“循環していない社会”になっていることがおかしい、ということに気付いてほしい。僕たちは当たり前のことを、当たり前のようにやっているだけなんだ」

「サステナブル」を意識するきっかけになってくれたら

キャンプ場から見える富士山

出典:The Old Bus 公式HP

そんな想いから、 このキャンプ場では自然に寄り添い、環境をより良く持続可能なものにしていくためのルールをつくった。

トイレは「The Old Bus」とは異なるタイプの、落ち葉を使用したコンポストトイレが併設されている。

次に、合成洗剤と歯磨き粉の使用は禁止。洗剤が必要なお客さんには、米ぬかと微生物でつくられた洗剤を用意しているそう。洗い終わった後の水を土に流すと、その土を微生物たちが調えてくれるという。なんとロマンあふれる洗剤だ!

油物は水で流す前に新聞紙で拭き取るなど、洗剤を大量消費をしないような工夫をお願いしているそうだ。必要であれば、新聞紙も提供している。

このようなルールを説明していくなかで、今までサステナブルを意識していなかったお客さんが、環境に配慮することに興味を持ち始めてくれる。それがとても嬉しい。舛本夫妻は、そう語ってくれた。

キャンプの知識は自己防衛・防災にも役立つ!

キャンプ場での料理の様子

出典:The Old Bus 公式HP

キャンプでは自分で火を起こしてご飯を炊いたり、調理をする。夜の灯はランタン。そんなオフグリッドな生活は自然の中で生きる知恵であり、いざというときの防災の知識にもつながる。そう教えてくれたのは、佳奈子さん。

最近では、トンガで起こった噴火の影響で、8000キロほども離れた日本の太平洋側に東北大震災をほうふつとさせる津波警報が発令された。幸い日本には大きな影響はなかったが、後日ニュースで流れてきたトンガの様子はひどいものだった。

地震や火山も多い日本に住む、わたしたちも他人事ではない。確かに防災セットだけでなくキャンプの知識と一式があれば、何かあったときの自己防衛や大切な人を守る術につながるだろう。

また、佳奈子さんは昔モロッコで半月の間ずっと荷物を背負って野営をしながら200km歩くという旅を経験している。その生活のなかで、今まで必要だと思っていたものが、実はなくても良いということに気がついたそうだ。

改善したいことがあれば新しく買うのではなく、あるもので工夫できないか考えるようになった。ほかの人が不要だと感じてゴミになるものだって、何かに生かすことができる。

そんな人生の心強い味方である知識と知恵は、「ワイルドなキャンプ場づくりのアイデア」へとつながっていった。

できあがったのは、1日1組限定の小さなキャンプサイト

森のキャンプベース

出典:the old bus facebook page

こうして横浜から訪れる常連客の宿泊場としてつくり始めたキャンプ場は、1日1組限定・完全予約制というかたちで2021年にスタートした。

利用形態は3つ。キャンプステイ(テントで宿泊)、デイキャンプ(日帰り)、マイカーステイ(キャンピングカーなど自身の車で車中泊)から選ぶことができる。

そのほかのオプションとして、周りの自然環境を思いっきり活用したアクティビティも充実!

火起こしから行なう、焚き火でのコーヒー焙煎体験ができたり、

コーヒー焙煎体験の様子

出典:The Old Bus 公式HP

インストラクターの指導のもと、シーカヤック体験も可能。目の前に広がる駿河湾は、透明度が高いので、潜って泳ぐだけでもさまざまな海の生きものを見られるそうだ。

シーカヤック体験の様子

出典:The Old Bus 公式HP

富士山の湧水と駿河湾の深海が合わさったミネラルバランスが良くておいしい塩づくりも体験できてしまう。ちなみにこの塩は、前回の記事で紹介した「自家製塩のソルティードック風レモネード」でも使用されている。

駿河湾の海水を使ったおいしい塩づくりも体験の様子

出典:The Old Bus 公式HP

事前に伝えれば、沼津名産の干物や地元の旬な野菜などを使用した「地産バーベキュー」も可能だそうだ。※値段・内容は応相談。

沼津名産の干物や地元の旬な野菜などの食材を使用した「地産バーベキュー」

出典:The Old Bus 公式HP

そしてもちろん、「The Old Bus」でのチルタイムを楽しむこともできる!

夜の「The Old Bus」の様子

夜の「The Old Bus」

まさに舛本夫妻の哲学とアイデア、サステナブルな技満載の、地元と環境に寄り添ったキャンプ場に生まれ変わったのだった。

そして地域の思い出も循環させる新たな秘密基地に

夜の「森のキャンプベース」

出典:The Old Bus 公式HP

沼津市西浦は車で多少の距離はあるものの、筆者自身の地元の地域に含まれる。筆者が取材のために西浦に行ったことを聞き、祖父がこんな昔話をしてくれた。

「ああ、あの古いバスが停まってるとこに行ってんのか。昔はそこの裏にキャンプ場があってなあ、よく仲間たちとバーベキューしに行ったもんだよ。懐かしいねえ」

おそらく、祖父の年齢から考えるとそれはもう40年以上も前の話だろう。舛本夫妻の活動は地域の思い出も循環させ、再生させているのだと、心がじんわりと温かくなった。

The Old Bus / 森のキャンプベース

HP: theoldbus.net / Instagram : @theoldbus

Access :伊豆半島の付け根に位置する沼津市西浦の、駿河湾越しに富士山を望む場所にあります。

[お車でお越しの場合]

番地がありませんので、Google Mapをご覧いただくか沼津市西浦久料の「若松海水浴場」バス停を目指してお越し下さい。伊豆縦貫自動車道「長岡IC」から約20分駐車場は敷地内に6台(予約制)です。

[公共交通機関でお越しの場合]

沼津駅南口より東海バス「江梨」行きに乗り約1時間「若松海水浴場」で下車してバス停目の前です。バスは1日12本(休日ダイヤは10本)ですのでご注意ください。

KiKi
イラストレーター / サステナブルコラムニスト
西伊豆の小さな美しい村出身。京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業後、同大学マンガ学科研究室にて副手として3年間勤務。その後フリーランスに。2016年夏よりベルリンに移住。例えば、私のように小さな集落で暮らしている子が旅立つ時期を迎えたとき、『世界はこんなにも広くて、こんなにも選択肢があるんだ』と気付けるようなものを残していけたら、最高だなと想いながら絵と文章をかいています。
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