キャンプに出かけたら、ぜったい楽しみたいのが「焚き火」。上手に焚き火を楽しむには、どんなことに気を付ければよいのでしょうか? ブッシュクラフトの達人・小池コータローさんに、ブッシュクラフトの技を生かした焚き火のコツを教えてもらいました。上級者編だけど、初心者でも使えるノウハウがたっぷり詰まっていますよ。
※この記事では直火の方法を紹介していますが、直火禁止のキャンプ場では必ず焚き火台を使って、ルールを守って焚き火を楽しんでくださいね!

木葉社・小池コータローさん。ブッシュクラフトインストラクター、防災士と多才。間伐材を使ったプロダクトデザイン「yaso」の商品開発も。森の総合カルチャー体験施設を開くべく奮闘中。
焚き火に必要な道具
枝切り用ナイフ
薪作りにはナイフをメインに使用。なかでもフルタングと呼ばれる、ブレードとタング(ハンドルの中にある芯)が1枚の鋼材でできた頑丈なものがいい。太い倒木用に斧も用意しよう
ファイヤースターター
着火にはファイヤースターターを使う。マグネシウム合金や、鉄とセリウム合金のロッド(棒)と金属を使って火花を作る、現代版火打ち石だ。
焚き付け用の材料
火口になる焚き付け。油分を含むシラカバの皮や、乾いた落ち葉やスギの葉を集めよう。ファットウッドと呼ばれる松脂を多く含んだ松の枝(枯れた松から採取可能)も◎。枝を細かく削ったものや麻ひもをほぐしたものも使える。
ブッシュクラフトの技を生かした焚き火術
「ブッシュクラフトの場合は、最小限の燃料で、最小限の火をおこして用を足す。遊びというより、生活に根ざした焚き火ですね」(小池さん)
そもそもブッシュクラフトは、北欧の農耕民族が使っていた生活技術のこと。自然のなかにあるものを利用し、ナイフや火の技術を駆使して、自然との共存を楽しむものだ。そんなブッシュクラフトに倣う焚き火は、ミニマムであるべきだという。
「まずは火口(ほくち)になる焚き付けを集めましょう。焚き付けは乾いていて繊維状でフワフワするもの、と覚えるといいですよ」
ススキの穂やスギの葉のほかに、麻ひもなども役立つ。
「薪は立ち枯れの枝など乾いた枝を集める。燃焼のメカニズムは同じなので、鉛筆の芯ぐらい細い小枝から、鉛筆、人差し指、親指ぐらいの太さのものまで、4段階に分けましょう」
焚き付けを集めたら、穴を掘る。ひとり用ならバレーボールの直径ほどの大きさで十分だ。
「風向きを読んで、風上に自分が座るように配置します。地面を掘ると湿っていることが多いので底に太めの枝を敷きます」
あとは天然の焚き付けをセットし薪を組み、ファイヤースターターで火の粉を飛ばして着火!
パチパチパチ、と爆ぜるように勢いよく燃え上がった炎は、焚き付けから小枝、太い枝へと、どんどん育っていった。
薪を集める

これは 濡れてるぞ。
立ち枯れの枝や倒木などを集める。地面に落ちたものは湿っていることが多いので要チェック。細い枝がついたものがいい。
太くて手で折れない場合はナイフで切る。細かい枝を落としたら、両側からナイフを交互に切り込んで、V字型に溝を掘る。枝の3分の2ぐらいまで切り込みが入ったら、あとはひざを使ってポキっと折ればOK。
初心者編と同様に、細いものから太いものへ火を移していく。重要なのは最初の火種となる小枝なので、鉛筆の芯程度の太さをたくさん集める。
Q 雨のあとで湿った枝しか見つからないときは!?
A.「宙に浮いてる枝を見つけ、樹皮を剥きます」
雨上がりの焚き火は下準備が大事。濡れた枝も中まで水は浸透していないので、内側部分を焚き付けとして使う。火がおきたら、炎の周りで濡れた枝を乾かしながら投入する。
枝に引っかかったものなど、頭より上を見て、中空に浮いている枯れ枝を探すのが先決。地面に落ちているものはNG。
30cmほどに折り、枝の白い芯が出るまで、ナイフを使って濡れた樹皮を剥がす。ゴボウのささがきを作る要領で。
芯を細かく削って焚き付けにするもよし、先端がカールするように薄く削ってフェザースティックを作るのも手。
火をおこしてみよう
土をならし、バレーボールの半分がスッポリ収まるぐらいの穴を掘る。
風下側に土を盛り、太めの横木を渡したら、穴の底に中くらいの薪を敷く。
薪の上に焚き付けを置く。シラカバの上に麻ひもを乗せさらに木屑をのせた。
鉛筆の芯程度の極細の枝を横木に立てかけ、焚き付けの横を囲む。
鉛筆ほどの枝を重ねたら、ファイヤースターターで火の粉を飛ばす。
着火したら手前にも枝を置き、徐々に太いのを足していく。
ナイフ1本で作る自分専用の焚き火です
穴の横に長方形の溝を掘り、穴を鍵型にしておくと、熾火ができたとき、移動して調理スペースを確保できる。
Q 雪の上でも焚き火はできますか?
A.「薪を敷き詰めれば可能です」
雪上の場合、わずかな熱で地面から水分が蒸発し、なかなか炎が成長しない。そのため、まず雪面を踏み固め、腕の太さほどの薪を数本地面に並べてから行なうといい。
焚き火の大きさに合わせて雪面の上に土台となる薪を敷く。その上に横木を置き、着火剤をのせて細い小枝で囲めばOK。
Q 寝ている間に鎮火し、寒さで目が覚めました。
A.「薪の組み方で火を長持ちさせましょう」
寝ている間に火が消えてしまうのはよくあること。焚き火の横で寝るなら、寝る前に太く長い薪を2本向かい合わせて置き、その間で焚き火をするか、井桁の変形型で長く燃え続けさせるといい。
中ぐらいの太さの薪を並べる。下に火種が落ちないように、隙間は小枝などで埋めること。段ごとに薪の向きを90度ずつ変えて積んでいき、4、5段積んだ上で火をおこす。
焚き火のあとはしっかり片付ける
火床が白っぽくなるまで完全燃焼させ、最後まで薪を燃やしきる。
木の棒などで突いて炭を粉々にする。粉状になるまで念入りに。
水を加えて混ぜ合わせ、触っても熱くない温度まで完全に鎮火させる。
土を入れたとき穴に収まらない炭は、肥料となるよう周囲に散らす。
掘った土を戻して穴を完全に塞ぐ。足で念入りにならしておく。
周りの落ち葉や枝を上から散らし、掘り起こす前と同じ自然な状態にする。
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※直火での焚き火は許可された場所で安全に注意して行いましょう。
※構成/大石裕美 撮影/山本 智 (BE-PAL 2021年12月号より)