日本カーオブザイヤー決定!BE-PALの選考委員・金子浩久はどのクルマに投票したのか?
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    2021.12.11

    日本カーオブザイヤー決定!BE-PALの選考委員・金子浩久はどのクルマに投票したのか?

    日本カーオブザイヤー10ベストカー

    12月10日(金)に「第42回 日本カー・オブ・ザ・イヤー 2021-2022」が発表され、今年の大賞は日産 「ノート」「ノート オーラ」「ノート オーラ NISMO」「ノート AUTECH CROSSOVER」に決定しました。 おめでとうございます! ビーパルの担当者として「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の選考委員を務める金子浩久さんは、いったいどのクルマに投票したのでしょうか?  今回の選考で注目した6種のクルマと、そのクルマの「いい点」「もう一息な点」について教えてもらいました。

    トヨタ・MIRAIに最高点10点を投じた2つの理由

    トヨタ・MIRAIこそが本年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーにふさわしいと考えて最高配点の10点を投じました。

    青いトヨタMIRAI 

    その理由は、ふたつあります。まずは、MIRAIを“未来のクルマ”たらしめているFCEV(燃料電池車)としての機能と走行性能が一段とアップデイトされていること。

    先代のMIRAIは前輪駆動で、ボディデザインも新型とはまったく違うものでした。開発コンセプトと完成したクルマの実際との隔たりが小さくありませんでした。

    それに対して、新型MIRAIは後輪駆動に改められて、オーソドックスな4ドアセダンスタイルを採用。プラットフォームと呼ばれるクルマの骨格や基礎部分はレクサスの最高級セダン「LS」と共有しています。LSのパワートレインはエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドですから、MIRAIが現時点のトヨタ/レクサスに於ける最も先進的なクルマになります。

    レクサスLSとトヨタMRAI

    左:レクサス・LS、右:MIRAI。

    そうしたメカニズムと仕立てだけでなく、内容の充実を実感できたのは、MIRAIの後席に乗って走った時でした。FCEVなのでモーターによる走行は静かで滑らか。静けさと滑らかさでは他のEVも変わりませんが、MIRAIはそのだいぶ上を行っています。エクゼクティブたちがここに座って激務をこなすにふさわしいクルマです。これは、もうクラウンの発展的な後継車でしょう。

    運転支援機能「アドバンスト・ドライブ」がすばらしい

    二つ目の理由は、LSと共用されている運転支援機能「Advanced Drive」にあります。

    トヨタMIRAIのレーダーとカメラで周辺を認識する仕組み

    トヨタ・MIRAIのアドバンスト・ドライブは、多数のセンサーやカメラで周囲状況を把握し、きめ細やかに運転を支援する。

    運転支援機能は、だいぶ一般的になってきました。前のクルマとの車間距離を一定に保ちながら追走していく「ACC」(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や、車線をはみ出さいように走ったり、車線の中央を走り続けるようにハンドル操作を補助してくれる「LKAS」(レーン・キープ・アシスト)、さらにはレーンチェンジまで補助してくれる「LCAS」(レーン・チェンジ・アシスト)などを装備するクルマが増えてきました。

    それらの運転支援機能は、安全を担保し、ドライバーの負担を減らし、省エネにも貢献する優れた機能です。しかし、MIRAIとLSが装備している「Advanced Drive」は一歩も二歩も先に進んでいるのです。

    MIRAI

    どういうことかと言うと、MIRAIはACCとLKASとLCASの三つすべてを装備しながら、AIが三つを統合させながら働かせています。具体的には、例えばACCを効かせて先行車に追従して走っていて、その先行車が高速道路や自動車専用道を降りてしまい、前に何もいなくなってしまった時に急加速したりしません。

    反対に、左右からクルマが合流してくる時。その場合には、ドライバー自らが考えて対処しなければなりません。もちろん、“自動運転”ではなく“運転支援”なので、ドライバーはいつでも運転操作に戻らなければならないのですが、MIRAIはクルマが最も安全なように状況を“考え”て、加速するか減速します。

    トヨタMIRAIアドバンスド・ドライブの合流時

    ACC、LKAS、LCASの三つをバラバラに作動させるだけでなく、それら三つの間にある状況を観察し、判断し、三つを統合しながら運転を支援することを極めて速やか、かつ正確に行なうのがMIRAIの「Advanced Drive」です。クルマが担う領域が増えています。単に三つを装備しているクルマとは決定的に違います。

    トヨタMIRAI アドバンスド・ドライブ インターチェンジで降りるとき

    運転の自動化の基準には、レベル0から5までの、よく知られた基準があります。それによれば、MIRAIはレベル2に相当しますが、実質的は“限りなく3に近い2”でしょう。

    まさしく、MIRAIこそが2021年を代表し、未来を先取りしているクルマです。迷うことなく10点を投じました。

    ゴルフはとてもいいクルマ、だけど…

    持ち点25点中の残り15点の配点は、以下の通りです。

    •  フォルクスワーゲン・ゴルフ… 6点
    •  三菱・アウトランダーPHEV …4点
    •  日産・ノート …3点
    •  トヨタ・GR86/スバル・BRZ… 2点

    ゴルフはフルモデルチェンジして8代目となりました。7代目は、輸入車で初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー大賞を獲得しました。その時に、私はゴルフに10点を投じています。では、なぜ8代目には10点ではなくて6点なのか?

    8代目も完成度は非常に高く、揺るぎない世界観を示しています。運転支援技術も進化し、全モデルにマイルドハイブリッドが採用され電動化も推進されています。あらゆる部分がバランス良く進化して、抜かりがありません。しかし、“完成し過ぎてしまって”いて、新鮮味が感じられなくなってしまっているのです。モノは良くても、コンセプトが変わらないので、驚きがないのです。

    黄色いフォルクスワーゲン・ゴルフ

    なぜ、そう言えるのかというと、フォルクスワーゲンのEV(電気自動車)「ID.3」と「ID.4」がすでにヨーロッパなどで発売され、好調な売れ行きを示しているのです。日本でも、テスト車を公道で何度か見ました。

    これが何を示しているのかいえば、ゴルフ自体のでき映えの問題ではなく、“ゴルフがモータリゼーションの主役を務める時代”が、そろそろ終わりを迎えつつある”ことを示しているのではないでしょうか?

    アウトランダーPHEVが低得点な理由

    三菱・アウトランダーPHEVは、車名にもなっている通り日本向けではパワートレインをプラグインハイブリッドに一本化しました。先代モデルでもアウトランダーはプラグインハイブリッド版の評価が高かったのですが、新型は大幅に進化しています。PHEVとは言ってもEVに近くて、電気の力だけで走るEVモードの航続走行距離が、なんと76kmにも伸びました。

    赤い三菱アウトランダーPHEV

    また、走行モードが増え、さまざまな路面への対応力も高まりました。3列シート版も選べるようになり、ボディも大型化しインテリアも上質化。エクステリアデザインもオリジナリティ高いものに改められ、三菱自動車のヤル気の高まりを感じます。では、なぜ、そんなに高評価なのにたった4点なのか?

    発売日がカー・オブ・ザ・イヤーの締め切りの後になってしまい、最終選考直前の「10ベストカー試乗会」の時点ではナンバーがまだ付かないので、サーキットの周回コースでしか運転することができなかったのです。

    もし、一般道やオフロードなどで運転し、その多用途性や実用性の高さなどを全般にわたって実感することができたなら、4点ではなく確実にその何倍かの高配点が下されたことでしょう。タイミングが整わずにアンラッキーでしたね。

    ノートオーラは「小さな高級車」

    日産・ノートには、もっとたくさん配点したかった。e-POWERユニットは大幅にブラッシュアップされ、このカテゴリーで最も洗練されているでしょう。

    日産ノートオーラ オーラ 赤と黒色

    高く評価したいのは、「ノート」に加えて「ノートオーラ」をスピンオフさせたことです。パワーアップし、サスペンションもボディもインテリアも上質仕上げの別物。今まで、ありそうでなかった「小さな高級車」として立派に成立しています。その気概に、もっとたくさん配点したかった。

    大人のスポーツカーGR86/BRZ

    トヨタ・GR86/スバル・BRZも、モデルチェンジしてパワーアップしただけでなく上質感が向上しています。どちらも、大人が日常的に乗るスポーツカーとして、穴がどこにも見当たりませんでした。

    赤いスバルBRZ

     

    今年のカー・オブ・ザ・イヤー総括

    今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーは力作揃いだったと思います。

    基調となっているのは、やはり時代の要請でもある電動化と自動化の推進です。その進化ぶりは日進月歩で、クルマがどこに向かっているのかを明示しています。MIRAIが2021年を象徴している理由です。

    1台に10点、残り15点を4台に配分という規則があるので配点できませんでしたが、他の5台もそれぞれに評価しているところがあったことを付け加えておきます。

    2021年もいろいろありましたが、それらとともにFCEVによる洗練とAdvanced Driveを備えた2代目MIRAIが登場した年として記憶されることになるでしょう。

     

    日本カー・オブ・ザ・イヤー公式サイト

    https://www.jcoty.org/

    金子浩久
    私が書きました!
    自動車ライター
    金子浩久
    日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)。1961年東京都生まれ。趣味は、シーカヤックとバックカントリースキー。1台のクルマを長く乗り続けている人を訪ねるインタビュールポ「10年10万kmストーリー」がライフワーク。webと雑誌連載のほか、「レクサスのジレンマ」「ユーラシア横断1万5000キロ」ほか著書多数。https://www.kaneko-hirohisa.com/

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