女子高生が罠猟と真剣に向き合う異色漫画『罠ガール』の人気に迫る!
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  • 2020.08.26

    女子高生が罠猟と真剣に向き合う異色漫画『罠ガール』の人気に迫る!

    昨今「アウトドア女子漫画」が増えています。その代表格といえば『ゆるキャン△』(芳文社)や『山と食欲と私』(新潮社)。アニメ化、実写化、コラボグッズの販売など、アウトドア好き以外からも高い人気を得ています。

    キャンプや登山がテーマの作品以外に、もっとディープでニッチな題材のアウトドア女子漫画が、今ジワジワと人気を獲得しているのはご存知でしょうか。そのひとつが『罠ガール』(KADOKAWA)。コミックは累計30万部(紙書籍・電子書籍合算)を突破した話題作で、その名の通りテーマは、罠猟。しかも主人公は女子高生という異色っぷり。それだけでも気になる……。今回は、その作者である緑山のぶひろさんに、お話をお伺いしました!

    作者もリアル農家! 主人公が動物と戦う姿は、ほぼ実体験

    第1巻での千代丸のセリフが印象的。彼女たちは常に真剣に動物たちと向き合っている。

    主人公は、田舎町で暮らす農家の娘・朝比奈千代丸。農作物が動物たちに荒らされてしまうことを目の当たりにし、自分も何かできないかと罠猟の免許を取得します。しかし、動物たちも頭がいい。わなを仕掛けたからって簡単には捕まってくれません。千代丸は、先輩猟師の教えなどを参考にあの手この手を使って、動物たちと格闘。その姿がなんともリアルなんです。

    BE-PAL(以下B):緑山さんも農業をされているそうですが、実際に動物の被害には合われているんですか。

    緑山のぶひろさん(以下緑山):そうですね。とくにイノシシとシカが多い地域に住んでいて、その被害に悩まされています。僕が幼い頃はそこまで感じていなかったのですが、東京に7年ほど住んだあとに久しぶりに地元に戻ったら、一気に環境が変わっていて。人間が活動している昼間でも平気で田んぼまで動物たちがやってくるんですよ。柵を建てたり、わなを仕掛けていますが、それでも追いつかないぐらい出てきています。とくにシカは、活動域が広がっているようで、以前は麓までしか出てこなかったのが、いまは街のほうでも足跡を見かけるんです。山に食べ物が減っていることもあるんでしょうが、楽をしておいしいものを食べられるなら里に行ったほうがいいって考えなのかもしれないですね。

    B:なるほど。シカたちもどんどん賢くなっているんですね。害獣被害についてはニュースなどで知っていましたが、農家の方々にとってここまで身近な被害であることは漫画を読んで知った部分も大きいです。

    緑山:そうですよね。僕も地元に戻るまで、こんな状況であることを知らなくて。あまりにも被害がひどいし、シカも増える一方。これはもっともっと広く知ってもらわなくちゃいけないことだと思いました。そんなときに漫画のお話をいただいて、描いてみようと思ったんです。

    B:農家の方の読者も多いのは、漫画の中に“農家あるある”が織り込まれているからというのもありそうですね。

    緑山:やはりどの地域でも害獣被害には悩まされていて、ありがたいことに共感の声をいただいています。最近は、罠猟の免許を取得する農家の人も増えているみたいですしね。千代丸の親友・レモンが罠猟を取るエピソードでも描いたのですが、地方自治体によっては罠猟の免許を取得するための補助金が出る地域があって、僕もその補助金を使って取得したので、費用はあまりかかっていないんですよ。

    わなの種類や使い方など詳しく説明されていて、学ぶ部分も多い!

    B:そうなんですね! レモンのエピソードもそうですが、わなの詳しい説明や仕掛ける場所なども詳細に描かれていて、学ぶことが多いです。

    緑山:その点でも主人公は女子高生がいいなと思ったんです。18歳から免許が取れることも描けるし、彼女たちは知らないこと、初めて体験することが多いので、わなのことをイチから学びやすい。どうしても動物の命を奪うシーンを描かないといけないので、そのときにも「学びの姿勢」でいられるとも思いました。

    B:たしかに、レモンが獲物を解体するときに「怖いけれど学びたいから自分もやりたい」ということを言ったときに、若さならではの言葉だと思いました。

    緑山:僕もそうなんですが、猟も解体も慣れている人だと、すべて無でやってしまうと思うんです。だけど彼女たちは読者と同じ目線でいられるので、読んだ人がよりリアルに感じられるのではないかとも思いました。それに解体はかなりショッキングな絵でもあるから、彼女たちがいることで少しでもソフトに描きたかったのもあります。

    B:彼女たちの真っ直ぐな姿勢は応援したくもなるし、和む部分もあります。なぜ罠猟で女子高生!? と思いましが、それによって読者層が広がっているのもありそうですね。

    緑山:猟自体は、ハードルが高いので「やってみよう」とは思わないかもしれないですが、どんなものなのか興味がある人はいると思うんです。女性の方からも「読んでます」と言われることもあって。僕は、農家が害獣被害で困っていることを伝えたかったのもあるので、そのきっかけとして女子高生が主人公というのはいい取っ掛かりになったと思っています。あとは単純にむさ苦しい男がやるより、かわいい女の子がやっているほうが読みやすいですよね(笑)。

    B:そうかもしれないですね(笑)。今後はどんな展開になっていくのでしょうか。

    緑山:イノシシやシカ以外の動物も出しつつ、いろんなわなも見せていきたいですね。命もテーマのひとつですし間違ったことが描けない漫画なので、専門の方に取材をしたり、実際に解体や猟を見学させてもらったりもしています。僕が学んだことをもとに彼女たちも成長させていけたらと思います。

    【著者紹介】

    緑山のぶひろさん
    実家が福岡県の農家で、自身の家の田畑を荒らす シカやイノシシを捕獲する罠猟にも関わる。マンガ家としてはアシスタントなどを経て、本作が初の連載作品。

    最新刊発売中!

    第5巻では、千代丸の通う高校の園芸部の野菜畑 がシカに荒らされ、昼夜を問わずシカの群 れが出没! 学校が対策をすることになり、千代丸はそのシカ対策の助っ人を頼まれるが、その結果は…!?

    定価:670円+税

    取材・文=中山夏美

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