ふたご座の兄弟は卵から生まれた神の子と人間の子
1月下旬、夜9時くらいになると、ふたご座のカストルとポルックス、ふたつの兄弟星が南の空に昇ってよく見えます。
その近くに見える木星は英語で「ジュピター」と呼ばれます。これはローマ時代の神様の名前で、ギリシア神話の主神ゼウスに由来します。

兄弟星の明るさは、カストルが1.6等で、ポルックスが1.2等。1.5等以上が1等星なので、ポルックスは1等星、カストルは僅差で2等星に分類されています。とはいえ、ほぼ同じくらいの明るさに見えるでしょう。やや青っぽく見えるのが兄のカストル。黄色っぽく見えるのが弟のポルックスです。
ふたご座は黄道12星座のひとつとしても有名ですが、ギリシア神話にもいくつかのエピソードが残されています。
兄弟の父親は絶大な権威を誇る全能の神ゼウス、母はスパルタ王国のレダ姫です。父は神、母は人間のため、兄カストルは人間の子、弟ポルックスは神の子として生まれました。しかも二人は卵から生まれました。なにかと希有な兄弟です。
ちなみに、ギリシア神話では、カストルの名はカストール、ポルックスの名はポリュデウケースです。カストルとポルックスという名はラテン語の読み方なのです。
兄カストールは馬術の名手、弟ポリュデウケースはボクシングの名手として、数々の闘いで活躍して名を馳せました。ヘルクレスなどたくさんの勇士が乗り込んだアルゴ船の冒険にも参加しています。父ゼウスにとっても自慢の息子たちだったようです。
人間から見ると、神の子ポリュデウケースのほうが人の子カストールより偉いように思えますが、ポリュデウケースは神を笠に着ることなく、カストールも「おれが兄だ!」などと威張ることなく、ふたりは助け合いながら生きる仲のよい兄弟として知られています。
そのカストールとポリュデウケースがふたご座になった由来は諸説あります。よく知られているのは、ある決闘でカストールが死んでしまったことが理由です。神に生まれついたポリュデウケースは不死身です。カストールの死を嘆き悲しんだポリュデウケースは父ゼウスに頼んで、自分の命の半分をカストールに分け与えました。こうして、2人は一日の半分は天に昇り、半分は地の底へ潜る星座となったということです。
矢を持つカストル、棍棒を持つポルックスのわけ
以上がよく知られたふたご座のギリシア神話由来のエピソードです。さて、あらためてふたご座の絵を見てみましょう。

ポリュデウケースは棍棒を持ち、カストールは左手に矢、右腕に竪琴を抱えてえいます。ボクシングの名手ポリュデウケースが棍棒を持っているのはおかしいですし、カストールの竪琴も謎です。
実は、ギリシア時代の他の文献を読むと、ふたご座のモチーフはカストールとポリュデウケースではなく、アポロンとヘルクレスだったという説があります。
アポロンは太陽の神。また芸術、芸能の神、弓矢の神であり、医術や予言も司る多才な神様です。しかし太陽の神様ゆえ、夜空にきらめく星座には縁がなかったようです。
ヘルクレスは夏になると天高く昇ってくるヘルクレス座の当人で、ギリシア神話きっての英雄です。棍棒を振りかざして化け獅子(しし座)を退治し、全天一長いうみへび座のヒドラをやっつけ、かに座の化け蟹を踏み潰しながら成し遂げた「ヘルクレスの12の荒業」で知られます。

ふたご座のカストールをアポロン、ポリュデウケースをヘルクレスとすると、星座絵に描かれた棍棒や竪琴、矢に納得できます。ただ、アポロンとヘルクレスがこれほど仲良しだったかどうかは……疑問です。
ちなみにアポロンもヘルクレスも父は大神ゼウス。ふたご座のモチーフがアポロン・ヘルクレスだったとしても、現在、ゼウスの星、木星は息子たちの星座に滞在中というアットホームな図になります。
冬本番の夜空、ふたご座のカストルとポルックスに別の顔を想像しながら見上げてみてはいかがでしょうか。
構成/佐藤恵菜








