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CINEMA 01
行きづまった脚本家がひとり、雪国へ向かう旅
『旅と日々』
(配給:ビターズ・エンド)
●監督・脚本/三宅 唱
●原作/つげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」
●出演/シム・ウンギョン、堤真一、河合優実、髙田万作、佐野史郎ほか
●TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国公開中

夏の海辺。ぼんやり佇む夏男は、ふらりと現われた若い女と出会う。「何もしたくなくて」という女ととりとめもなく話したり、みつ豆を食べたり。やがて、台風が近づく荒れた海で泳ぎ始める──。そんな作品のシナリオを書いた脚本家の李は自作の上映後、思い立って旅に出る。雪深い北国へ向かい、山の上の、崩れそうな古民家の宿にたどり着く。宿をひとりで営むのは、無口なべん造。ある夜、「錦鯉のいる池を見にいくか」と李を連れ出す……。
『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』で注目を集めた三宅唱監督が、つげ義春の漫画を実写映画化。夏の海辺と雪の山里、映画の中と日常の延長にある一人旅。そんな対照的なような、地続きなような感覚が続く。「言葉の檻の中にいる」と感じる李が、言葉から離れようとする一人旅を体感するよう。通底するのは、故郷を離れて以来、旅の途中にいるような孤独。饒舌な静寂を味わう89分。
CINEMA 02
皮肉屋の英国人とペンギンが奇跡の出会い
『ペンギン・レッスン』
(配給:ロングライド)
●監督/ピーター・カッタネオ
●脚本/ジェフ・ポープ
●原作/トム・ミシェル「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」 ●出演/スティーヴ・クーガン、ジョナサン・プライスほか
●12/5~新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

1976年軍事政権下のアルゼンチン。英語教師として名門寄宿学校に赴任したトム。混乱する社会、やりにくい生徒。気晴らしに出かけた旅先で美女に遭遇、小さな下心から重油まみれで瀕死のペンギンを救う。彼女にはフラれ、このペンギンどーする!? 不思議に懐くペンギンと、奇妙な同居生活が始まる──。
実話を基に、『フル・モンティ』の監督が映画化。無垢なペンギンが、傷を抱えた教師や凝り固まった生徒の心を揺り動かす。ペンギンの演技力に釘づけ!
CINEMA 03
世界的登山家の実話を基にした物語
『てっぺんの向こうにあなたがいる』
(配給:キノフィルムズ)
●監督/阪本順治
●脚本/坂口理子
●出演/吉永小百合、のん、木村文乃、若葉竜也、天海祐希、佐藤浩市ほか
●TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中

女性として、世界初のエベレスト登頂を成し遂げた多部純子。彼女がてっぺんの先に見たものとは?
『北のカナリアたち』の監督と再び組んだ、吉永小百合124本目となる作品。ケタ外れの偉業を成すパワーの源は、見たことのない景色を見たい! というシンプルな思い。その衝動へ忠実に前へ進む純子と、それを支える夫婦愛と友情。人を巻き込んで力にする、その腕力もエベレスト級!
CINEMA 04
哀しみと美しい涙と、中国残留孤児の今
『名無しの子』
(配給:ワノユメ)
●監督/竹内 亮
●「2025中国ドキュメンタリー映画祭In Japan」で上映
11/7~20 角川シネマ有楽町にて開催

第二次世界大戦末期。旧満州に取り残され、国籍を失った数万人の子供。彼らを我が子として育てた中国の養父母たちがいた──。
残留孤児とその家族百人を取材したドキュメンタリー。監督は中国在住のインフルエンサーで、昨年『再会長江』を発表した竹内亮。戦争という運命に翻弄された〝名無しの子”、言葉を失う過酷な人生とその先にある希望と。これもまた、リアルな中国の今。
※構成/浅見祥子
(BE-PAL 2025年12月号より)







