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ワイルドライフクリエイター 荒井裕介さん(下の写真左)
サバイバルとブッシュクラフトを融合させ日本の風土に適したブッシュクラフト技術の開発に取り組む。スクール運営、ブランドアンバサダーなど幅広く活動中。
教わった人
元SKE48 惣田紗莉渚(そうだ・さりな)さん(同・右)
アイドル活動を経て舞台俳優・歌手として活躍。舞台鑑賞や西武ライオンズ観戦、キャンプを趣味に持ち、テレビやラジオ、YouTubeなど多方面で活躍する。
体力を使って薪をバトニング、苦労して火を付けたのにすぐ消える─。そんな我流でもなんとか乗り切れてしまう焚き火だが、やっぱりスマートに着火して、最小限の薪で済ませたい。焚き火を極めるために、薪やナイフの扱い方の基本を押さえよう。
CONTENTS
薪の選び方から組み方、火の育て方まで!
着火に手間取ったり、せっかく火が付いても、途中で消えてしまったり……、思いどおりに焚き火を楽しめないという人は少なくない。キャンプ歴5年の元SKE48の惣田紗莉渚さんもそんなひとり。
今回は焚き火の腕を磨くため、薪の選び方から組み方、火の育て方まで、ブッシュクラフトの第一人者・荒井裕介さんに基礎から正しい焚き火の方法を伝授してもらった。
教えてもらううちに、これまで正しいと思っていたやり方が意外にも間違っていたことに驚かされた惣田さん。たとえば、火を大きくするには薪に空気を送るのが大事だと思い込んでいたが、これがそもそも間違い!
「火を大きくするために空気を送ろうと、薪を動かす人は多いですが、じつは逆効果になることが多いんです」と荒井さん。
空気を余計に送ってしまうと火の温度が下がってしまうため、火を育てるときは薪で火を覆い、熱を閉じ込めて高温にするのがポイントだという。むしろ、触らずにそのまま放置が正解だそう。さらに、フェザースティックを作るときは、ナイフを固定して木を動かすのがコツなど、目からウロコのハウツーも満載。
撮影を終えた惣田さんは「次に友達とキャンプに行くときは、今回覚えたことを実践して私が教えながら楽しもうと思います!」と意気込んでいた。
手順を追ってマスターしよう!
1 薪の準備と選び方
2 ナイフで薪を割る
3 フェザースティックを作る
4 薪の組み方の基本
5 焚き火台の種類と薪の組み方
6 種類別 着火の基本
7 火のコントロール
8 焚き火のおしまい
1 薪の準備と選び方
焚き火でまず必要なのは薪の準備だ。市販の薪を用意しても、太い薪には簡単に火が付かない。火付きの良い焚き付けをはじめ、小割、中薪をそろえるのが肝心。また、広葉樹と針葉樹は火付きや燃え方が異なることも覚えておこう。
種類ごとに材料を用意する

POINT
まずは、最初に火を付ける材料となる焚き付け、焚き付けから火を広げる役目の小割、火を安定させるための中薪、火を長持ちさせるための大薪の4種類を用意しよう。
樹皮はポロポロ落ちるものを

焚き付けの樹皮は、乾燥していて木からポロポロと崩れるものが、火が付きやすく煙が少ない。
パキッと折れるものがベスト

火が付きやすい乾いた枝は、簡単に折れて音も軽快。枝を集める際は折って音を確認しよう。
葉の色で乾燥度をチェック

葉の色で見分けるなら、緑は水分を多く含んでいるので焚き火には向かない。枯れ色ならOK。
広葉樹と針葉樹の違い

POINT
焚き火には広葉樹と針葉樹の2種類を用意するのがベスト。焚き付けや小割、中薪までは火付きのよい針葉樹を使い、火を長持ちさせる大薪には広葉樹を使うと効率的。

針葉樹
・燃えやすいが火持ちは悪い
・ヤニやアクが多く、鍋が黒くなりやすい
・煙が苦く、スモーク料理には不向き
・枯れ葉・細枝は焚き付けに最適

焚き付けって水分量で火付きが変わるんですね。焚き付けの探し方が重要!
広葉樹
・燃えにくいが火持ちが良い
・煙やススが少なく、料理向き
・ナラなどは良い香りが付く
・大薪は広葉樹を使うのがベスト

最終的に火付きの悪い広葉樹に、火を移すための針葉樹というイメージです。
2 ナイフで薪を割る
小割は、火を育てる重要な橋渡し役。焚き火の時間や薪の量に応じて用意したい。ナイフを使ったバトニングで効率よく作ろう。

バトニングは、薪を安定した場所に置き、ナイフの背を木槌や他の薪で叩いて割る方法。小割や中薪を作るのに最適だ。
ナイフは根元から入れる

ナイフを薪に角度をつけて当て、背を叩いて根元を薪に食い込ませる。
↓

ナイフを徐々に水平にして薪を割り進め、最後にナイフをひねって割る。

小割は直径1〜2㎝程度の太さが目安。小割の用意の有無で、焚き火の成功率が変わる!
3 フェザースティックを作る
フェザースティックを作れば着火剤は必要なし。コツをつかめば誰でもきれいに作れて、ナイフを使う練習にもなる。

親指と人さし指の付け根でナイフを固定。木を引くようにして削る。
作り方
小割の先端をナイフで薄く削っていく。それを繰り返すことで削れた部分が羽のように広がる。
POINT
ナイフは固定し木を動かすのがコツ。ナイフの角度が一定になり、きれいにフェザースティックを作れる。

羽根状に削ったフェザースティックは、着火剤として有効。

うまくできた!

慣れないうちは弓を引くような姿勢で行なうと、安定しやすいのでオススメ!

4 薪の組み方の基本
薪の組み方には種類があり、火付きの良さや燃焼の長さなど、それぞれ特徴がある。火を自在に操るために、組み方をマスターしよう。
クロス型
安定着火向き

焚き火の基本となる組み方。2本の小割をクロスさせることでブリッジを作る。このブリッジを持ち上げて空気の調整ができる。
組み方
2本の小割をクロスさせる。焚き付けに火を付け、その上に小割を平行に並べ、火を覆って熱をこもらせる。
アップサイドダウン型
長時間&寒冷地向き

大薪を一番下に配置し、火が上から下へ移るような組み方。寒冷地や雪上の直火でも、安定して長時間燃やすことができる。
組み方
通常の焚き火とは逆に、一番下に大薪、その上に中薪、一番上に焚き付けと小割を置いて着火する。
差し掛け型
燃焼促進向き

片側を高く傾斜させて組むので、火は一方向に燃え進み、崩れた際も一定方向に倒れる。燃焼効率は高いが薪の消費を抑える。
組み方
大薪を1本横に置き、そこに立てかけるように小割を一方向へ傾斜させて組む。焚き付けは傾斜のすき間に。
スターファイヤー型
省エネ&調理向き

必要な分だけ薪を燃やせる、省エネで効率的な組み方。少ない薪で火をおこしたい小規模な焚き火に最適で、調理にも向く。
組み方
中央に焚き付けを置き、そこから放射線状に小割を並べる。小割は中央に少しずつ押し込んで燃やしていく。
ティピー型
短時間
高火力向き

炎が上へまっすぐ立ち上がるため勢いよく燃え、燃焼効率も高い。ただし薪の消費は多め。差し掛け型と同様、火付きもいい。
組み方
小割を三角錐状に立てかけ、中央下に焚き付けを置く。火を付けると、炎が広がり薪全体に燃え移る。
5 焚き火台の種類と薪の組み方
焚き火台の形状により、空気の取り入れ方やおき火の付き方が変わる。形に合った薪の組み方で、効率よく安定した火をおこそう。
Type
四角錐型=スターファイヤー型がおすすめ

四角錐型の焚き火台は、一点におき火が集中する構造のため、スターファイヤー型に最適。薪の消費が少なく、調理にも向いている。
スノーピーク/焚火台 M
¥17,160
問い合わせ先:スノーピーク TEL:0120-010-660

Type
V字型=アップサイドダウン型がおすすめ

V字型は、太い薪を底に配置しやすく、おき火が底に集まりやすい。アップサイドダウン型なら、着火後はそのまま放置してもOKだ。
UCO/フラットパックグリル M
¥7,150
問い合わせ先:モチヅキ TEL:0256(64)8282

二次燃焼タイプは薪を入れすぎないように

二次燃焼タイプは、二次燃焼用の空気孔をふさがないように薪入れを調整しよう。
モンベル/フォールディング ファイヤーピット
¥19,800
問い合わせ先:モンベル・カスタマー・サービス TEL:06(6536)5740
Type
小型ディッシュ=ティピー型がおすすめ

小型のディッシュ型なら、ティピー型に組むことで少ない薪でも中央におき火を集中させられる。その後、大きな薪を追加してもよい。
コールマン/ファイアーディスクソロ
¥5,390
問い合わせ先:コールマン カスタマーサービス TEL:0120-111-957

Type
メッシュ=差し掛け型がおすすめ

火床がメッシュの焚き火台は、空気の流入量が多く上昇気流が生まれる。それを利用して、炎が上に上がる差し掛け型で組むのが最適。
ベルモント/TOKOBI BLACK EDITION
¥28,050
問い合わせ先:ベルモント TEL:0256(36)1081

Type
リフレクター=アップサイドダウン型がおすすめ

リフレクター型は熱が反射してこもりやすいため、あらかじめ薪をセットするアップサイドダウン型だと、安定して火をおこせる。
ユニフレーム/薪グリルⅡ
¥14,960
問い合わせ先:新越ワークス TEL:03(3264)8311

6 種類別 着火の基本
着火はライターでもいいが、ファイヤースターターやマッチで楽しもう。着火剤として麻紐やワセリンコットンを使えば、火が付きやすい。
麻ひも

麻紐はナイフの背でほぐすことで、繊維が細かく裂け、少ない火花でも燃え移りやすいのが特徴。

付け方
ナイフを麻紐の上に置き、ファイヤースティックを引いて火花を麻紐に落とす。
マッチ
細かくした木っ端を着火剤に使う。事前にマッチ頭をナイフで削り、木っ端に混ぜておくと火が付きやすい。

付け方
マッチの火を木っ端に移し、上から焚き付けをかぶせる。
ワセリンコットン
ワセリンコットンは、コットン(綿)にワセリンを染み込ませたもの。少量の火花でも着火するので便利だ。

付け方
ファイヤースティックの火花をコットンに落として着火する。
フェザースティック
フェザースティックは表面積が広く燃えやすいが、着火剤ほどではないため、一度で火を付けるのは難しい。

付け方
フェザースティックに火が付くまで、何度か火花を散らせる。
牛乳パックも立派な着火剤!

牛乳パックは内側にパラフィンが塗られているため、よく燃えて着火剤として便利。細かくちぎって丸めると、さらに火が付きやすい。
7 火のコントロール
まずは火を育てて、おき火を作ることが肝心。基本的に薪を安易に触らず、熱をこもらせて高温にし、完全燃焼へ持ち込むのがポイントだ。
まずはおき火をつくろう
着火したらSTART!

小割から中薪へ
小割まで火が移ったら、中薪の出番。火を覆い隠すように隙間なく並べる。火を育てるには熱をこもらせて高温にすることが重要だ。
↓
おき火が完成!

隙間なく並べた中薪は、煙が出なくなるまで触らずに放置する。完全に中薪が燃えるころには、小割がおき火になっている。
↓

大薪で火が長持ち
おき火ができれば、どれだけ大きな薪を加えても自然に火が付く。市販の薪も、針金をはずさず束のまま燃やせば、火が長時間持つ。
火加減は隙間を利用しよう
大 隙間を空ける

↑↓

小 隙間を詰める
POINT
焚き火調理などで火加減を調整したい場合、薪と薪の隙間を広げれば火力は大きくなり、詰めれば火力を小さくすることができる。

炎を制す
薪をうまく使えばゴトクや風よけに活用可能。
8 焚き火のおしまい
焚き火の後始末は、安全面や自然環境への配慮、マナーの観点からも重要な工程。キャンプ場のルールに従い、適切に処理しよう。

薪が残ってしまったら
理想は灰になるまで燃やしきることだが、どうしても燃えさしが残った場合は、焚き火台から燃えさしだけを取り出して水をかけ、消火してから灰捨て場へ。

燃え残った炭状の薪は、細かく潰してパウダー状にすれば再燃せず、自然にも帰りやすくなる。
POINT
炭化した薪は細かく砕く


焚き火は火おこしより後始末に時間がかかる。使う薪の量は逆算して決めよう。
※構成/風間 拓 撮影/三浦孝明
(BE-PAL 2025年10月号より)