“国境の街”ドイツ・ゲルリッツで待っていた景色とは?【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.10.03

    “国境の街”ドイツ・ゲルリッツで待っていた景色とは?【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

    “国境の街”ドイツ・ゲルリッツで待っていた景色とは?【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
    突然ですがみなさん、その足で国境を超えたことはありますか? 島国である日本から海外旅行をすれば飛行機または船で国境を超えられますが、歩いては無理ですよね。

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
    Text

    「国境の街」ゲルリッツへ(ドイツ・ザクセン州旅その1)

    というわけでやってきたのはドイツ東部にあるザクセン州。旧東ドイツで、東側の国境はチェコ、南側はポーランドと接しています。

    そしてその州の東の端にある街がゲルリッツ(Gorlitz。ドイツ語表記だとoの上に点々がつくのですが文字化けの可能性があるので英語のアルファベットで記しています)。人口約5万7000人の小都市ですが、観光地として有名で街中にトラム(路面電車)も走っています。

    この街はポーランドの国境であるナイセ川に面していて、川の向こう側はズゴジェレツ(Zgorzelec)という人口約3万人の街です。

    なぜ2つの街が川沿いに向き合ってあるのか。答えは簡単でじつはもともとゲルリッツとズゴジェレツは川を挟んだ1つの街だったんです。ところが第二次世界大戦終結後にそれまではずっと東側(つまりポーランド側)にあった国境が今のナイセ川に移されたのです。

    そんなゲルリッツの旧市街からウォーキングをスタートしましょう。

    街の中心地にある広場なのですが…人がいない。

    じつはこの日は日曜日。スーパーマーケットも含めほぼすべての商店が閉まるので繁華街に人はいないのです(飲食店は開いています)。

    石畳が素敵な街並み。

    早朝ウォークでなく真っ昼間で人の映り込みがこんなにないのも珍しいです。一瞬映画のセットかと思うほど。

    ちなみにこのゲルリッツ、映画のロケ地としても有名。2015年のアカデミー賞で4部門を受賞した「グランド・ブタペスト・ホテル」など、様々な映画の撮影が行われています。いわゆる「聖地巡礼」の観光客もいそうですね。

    突然始まった「舞台裏探検」

    そんなふうに街歩きをしながら、観光名所の一つ「聖ペーター&パウル教会」に到着。

    1425年から1497年に建てられたという荘厳な教会です。

    入場料無料ですが、写真撮影は2.5ユーロ必要です。

    白亜の内装もシンプルで凛々しさが漂います。

    一通り見終わってからふと気になることが。受付のお兄さんというかちょっと「ヤンチャなあんちゃん」風の人に「塔には上がれないんですか?」と聞いてみたところ英語が通じない。それでも身振り手振りを交えて伝えたところ、「テン・ミニッツ」と英語での返事。

    「10分待て」ということだと理解して、ブラブラと写真撮影していたのですが、本当に約10分後に目が合った瞬間、「あっちに行くぞ」と目配せ。

    教会の端の目立たないところに階段が隠されていました。

    で、のこのことついていこうとしたのですが…このお兄さんがマジで健脚。階段を飛ぶようにしてガンガン上がっていきます。私のほうはその階段の様子も撮影したいのでついていくのに必死です。

    ローブを外してさらにその先へ。

    いったいどこに連れていかれるのでしょうか。そういえばこのあたりは鉄のカーテンの向こう側の旧東ドイツだしな。この「秘密の通路」に私が入ったこと、他の観光客は誰も知らないしな。

    頭の中にふと「身柄拘束」という言葉が浮かびます。いや、塔だから「幽閉」?。…なんてちょっとビビり始めたころ。

    「ここだ!」とお兄さんが再び目配せ。その先に重厚なドアがありました。そしてお兄さんがカギを差してそのドアを開けると…。

    なにやらバルコニーらしきものが見えました。

    待っていたのはなんとも絶景!

    「こっちだ」と身振りで示すお兄さんに招かれるままに進んでみると…。

    街を上から見渡す絶景が!
    下を見ると一気にかなりのぼってきたことがわかります。

    「ワオ!」「グレート!」。…そんな言葉をつぶやいたら照れくさそうにはにかむお兄さん。意外とかわいい。笑

    とにかく必死でついてきた甲斐がありました。そこでこの景色を堪能し、撮影をすること約3分。教会のボランティアらしきお兄さんにあまり時間を取らせるのも申し訳ないので「ありがとう。堪能した」と伝えました。

    それで降りるのかと思ったら、「いやいや、別のところに行くぞ」という雰囲気。

    同じ階にある別のドアを開けるとそこは巨大で薄暗い屋根裏部屋でした。

    相変わらずスタスタと行くお兄さん。

    この先、右側にあるハシゴを登って行き…。

    木の板を引っ張ると光が入ってきました。

    ガラスのない古い窓です。「暗い部屋を明るくするためかな」と思っていたら、下りてきたお兄さんが「おまえものぼってみろ」というジェスチャー。

    そして梯子を登って見えたのがこの景色です。

    木枠を残してちょっと絵画ふうに撮影してみました。もちろん窓から顔を出すこともできます。

    木の窓から左側を眺めたところ。川向こうがポーランドです。

    鐘の部屋に到着・・?

    本当に大満足の舞台裏探検。笑顔で「ありがとう」と伝えたら「まだまだだ」という表情。

    で、連れてきてくれたのが時計台の鐘の部屋。

    高さも幅も2メートルくらいだったでしょうか。無茶苦茶デカくて、「ああ、これなら街中に響き渡るな」と納得。これ以外にも鐘がいくつかあってメロディーを奏でられる「カリヨン」の部屋も見せてくれました。

    一通り撮影を終えてお兄さんを見ると、ようやく「下りるぞ」のジェスチャー。下りるのもこちらのほうは見向きもせずに超特急です。のんびりしていて私の存在を忘れられてここに閉じ込められてしまったら大変なので、必死についていきます。

    こんなに案内してくれるなんて、とてもサービス精神旺盛なお兄さんでした。そしてこんなに中身が濃い15分もそうはないと思いました。

    1階まで降りたら手をあげただけで教会の建物から出ていこうとするおにいさん。「日本のメディアに載せるために写真撮ってもいい?」と聞いたらなんとか通じたようで、たぶん「えっ? オレ撮るの? いやいやいや照れるなあ」みたいなことをドイツ語でつぶやきながらも…。

    しっかりポーズを決めてくれました。ちょっとはにかんで。

    普通に塔に登るのも楽しいですが、こっそりと「舞台裏」を見せてもらったような「冒険感」満載の時間でした。

    ちなみに教会の横から裏手に入るところがあります。
    そこからも見たらナイセ川とその向こうのポーランドの街並みを眺められます。

    緊張のポーランド入国…かと思いきや

    というわけですでに「ゲルリッツに来て良かった~」と大満足状態なのですが、この日はもう1つやりたいことがあります。それは隣国ポーランドへの潜入、いや入国です。…さっきの「秘密の探検」でのスパイ気分が抜けません。笑

    教会から坂道を下っていきます。
    そしてたどりついたのが国境を渡る「旧市街橋」。どうやら車は通れない模様。
    橋のたもとにはオービス(速度違反自動取締装置)のようなカメラが見張っています。

    カメラは様々なほうを向いていて「橋を通る者はネズミ一匹見逃さない」という鉄の意志が伝わってきます。こちらにも緊張が走ります。そのとき!

    シアトル系のカフェのアイスコーヒーか何かを持って橋を渡り始める若い女性2人組。

    えっ? そんなんでいいの? 周囲を見回してみると…。

    パトカー1台と警官2人がいました! が…。

    明らかに「暑いんで日陰に避難してます~」というユル~い雰囲気。空港の保安検査場にあるX線検査機とまではいかなくても、校門前の守衛室のような「詰所」はあるんじゃないか。そこで虎の威を借る役人から「パスポート!」とぶっきらぼうかつ高圧的に求められるくらいのことはあるんじゃないか。

    そんなふうに身構えながらも、ある種期待していたのですが完全な肩透かしです。ドイツもポーランドも国境の行き来を自由にするという「シェンゲン協定」締結国なので一度域内に入ればパスポートの提示は要らないんですね。

    ちなみに空港のX線検査機でポーズを取るたびに「クリスチャーノ・ロナウドのゴールパフォーマンスみたいだな」と思うのは私だけでしょうか?

    橋の上には「こっちがドイツで、こっちがポーランド」という標識も路上の線も見当たりません。

    「国境線」が書かれていなかったのでとりあえず橋の真ん中で写真を撮りました。

    そんなこんなであっさりとポーランドに入国。川沿いに北に向かって散策を開始します。

    無骨とかわいさを合わせた持ったビル群があったかと思ったら…。
    廃墟も。中を覗いても「ザ・廃墟」でした。

    通貨単位も「ユーロ」ではなく、ポーランドの「ズウォティ」に変わりました。

    途中から遊歩道に。
    緑の屋根が先ほど探検した「聖ペーター&パウル教会」です。

    遊歩道を途中で引き返して南下します。

    石畳の坂は風情がありますね。

    途中から川沿いの遊歩道を歩きます。先ほど渡った「旧市街橋」から1キロほど南下したところに車も通れる橋もあります。

    橋の下に描かれたアート。
    そのまま川沿いの遊歩道は続きます。

    ただ対岸も森っぽくなっていて景色はあまり変わりそうになく、この日は猛暑日だったこともあり、左側のゆるやかな坂道を上がってみることにしました。

    するとすぐに素敵な屋根の建物が見えてきました。

    「コミュニティーセンター」だそうで中にも入れます。奇遇にも私が住むオーストラリアの先住民アボリジナルピープルのドットペインティングという技法を用いた絵画の展覧会をしていました。

    再び橋を渡ってドイツへ。ここでも国境を記す路上の線とか標識はありません。

    でも車道には「詰所」みたいなものがありました。

    「秘密の塔」に潜入させてもらったり、逆に隣国には意外にもあっさり入れたり。小さな街の旅は予想外の出来事だらけで本当におもしろいです。

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

    ドイツ観光局
    https://www.germany.travel/en/campaign/german-local-culture-jp/home.html

    ザクセン州観光局(英語サイト)
    https://visitsaxony.com/

    ザクセン州観光局(ゲルリッツの紹介ページ)
    https://visitsaxony.com/poi/goerlitz

    柳沢有紀夫さん

    オーストラリア在住ライター (海外書き人クラブ)

    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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