
「北の国から」ロケ地をめぐってご当地グルメを堪能
行ってきた人

夏の北海道は初訪問。『北の国から』の登場人物では凉子先生が好き。原始ヶ原登山口の標識を見つけたときは、胸がざわめきました。
道産子大学生 タム(写真左)
父から譲り受けたMTBを乗り回す、札幌生まれ札幌育ちのアウトドア派。イチオシの北海道グルメは「らーめん信玄」の味噌ラーメン。
北海道へ行くというと、みな口々に「純と螢!」「ルールルルルだよ」と語りだす。北海道=『北の国から』の図式が、とある世代には猛烈に刷り込まれているみたい。先輩方の熱弁に押されて、Z世代の私も観ましたよ、TVシリーズ全24話。
すると、驚くほどにハマっちゃったのだ。雄大かつ厳しい自然、何より主人公・五郎とその子供・純と螢の実直な生活があまりに眩しくて。ということで、拝啓、恵子ちゃん。ボクはいま、富良野に着きました──。
「んー、観たことないですね。道民でも、僕らの世代はあんまり知らないんじゃない?」と、つれない返事のタムを連れてペダルを踏む。五郎の生きた街を肌で感じたくて、今回は自転車旅なのだ。アップダウンのある麓郷も、電動自転車なら無理なく回れる。この日の最高気温は23度C。シャツの中を通る風が爽快で心地好い。さすが北海道!
急坂を登り切ると、標高500mの麓郷展望台に到着。日本農村百景にも選ばれた景勝地だ。山脈に囲まれた素朴な農村風景は、入植者が拓いてきたという土地の歴史を感じさせる。
聖地巡礼の目玉は、劇中に登場する家々。畑の石を積んで、丸太の隙間には苔を詰めて……。五郎のつくった家は、どれもがエコロジカルなつくりなのだ。
私たちの心をひときわ躍らせたのは、拾って来た家。まるで生きもののような斬新な外観だが、中に入るといっそう独創的な空間が広がる。
「ちょっと! この窓、もしや車のサイドガラスなんじゃない?」
「廊下の棚も、冷蔵庫のドアを壁にくっつけたみたいですよ」
「天井はぜんぶ卵パックだ!」
見れば見るほど、“拾って来たもの”だらけ。ちょっとしたクイズ感覚だ。欲しいものは自分でつくる五郎の生活信条と、拓かれてきた麓郷の歴史。ふたつが結びついたように感じた。
「こんな家にいつか住んでみたいなぁ。それも、自分で建てて。ドラマ、ちょっと観てみようかなぁ……」
いつの間にやら、タムもすっかり興味津々で五郎の暮らしぶりに魅せられている。梁を見上げるその仕草が不意に純に重なって見えて、思わず目をこすったのだった。
DAY1 DRAMA
電動自転車で『北の国から』聖地巡礼!in 富良野
『北の国から』ロケ地回遊地図

JR富良野駅の東に広がる、自然豊かな麓郷エリア。脚本家・倉本聰の「ふらの三部作」のロケ地として知られる。ふらのジャム園や富良野オルゴール堂など、観光スポットも点在。
10:40
純と螢の通った小学校分校跡地へ

分校跡地は現在公民館として活用されている。隣には通学シーンを撮影した砂利道、さらに奥には通称「春よ来いの木」と絶景が続く。
12:00
麓郷展望台で富良野の街を眺む

丘陵地帯を眼下にあの名台詞を叫び、気分はすっかり純と螢! 周辺の花畑では、ラベンダーの次はクレオメが見ごろを迎える。

「大麓山のふもとの村」が由来の麓郷は坂が多い。電動自転車は必須。
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13:00
五郎の建てた"五つの家々"を巡る
石の家(’95秘密~2002遺言)

富良野岳の火山活動により、畑から大量に出た石を積み上げてつくられた。五郎が最後に暮らした家で、中には小道具が飾られている。中二階に石風呂がある構造もユニーク。


最初の家(’81TVシリーズ1話~最終話)


石の家から少し歩くと、東京から越してきた五郎たちが最初に住んだ廃屋の復元が。土間の中央にある階段で、純と螢の寝室に上がることもできる。
丸太小屋(シリーズ最終話~’84夏)

石の家から約3㎞離れた麓郷の森に位置する。「気持ち良いログハウスですね。日当たりもいいし、住むならここかな!」(タム)

3番目の家(’84夏~’89帰郷)

丸太小屋の奥にひっそりと佇むブリキ小屋。屋根の上の風車は、劇中で純が五郎に贈ったもの。離れには五右衛門風呂もある。
拾って来た家(2002遺言)

さらに3㎞ほど移動し、最終地点へ。その名のとおり、電話ボックスやゴンドラなどの廃材でつくられている。ぱっと目を惹く不思議な外観。
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18:00
旅の〆は「くまげら」で

富良野駅まで戻り、くまげらでご褒美ディナー。背後の石壁は、石の家建設前のテストとして美術チームがつくったのだそう。
和牛ローストビーフ丼
¥2,500

くまげら
住所:富良野市日の出町3-22
電話:0167-39-2345
Special thanks
ラベンダーショップもりや
住所:富良野市日の出町2-1
電話:0167-22-2273
営業時間:9時~17時(10~4月)、18時(5~9月)
定休日:木曜(5~9月は無休)※レンタサイクルは冬季休業
料金/電動アシスト自転車1日3,000円、普通自転車1日1,500円。
DAY2 GOURMET
「日本一長い直線道路」で食い倒れ in 国道12号 美唄~砂川

北海道といえば、忘れてはならないものがもうひとつ。そう、ご当地グルメ、ですよね。
そこで、国道12号の一部区間にある日本一長い直線道路で食い倒れする企画を思いついた。その距離なんと29・2㎞!
「飛行機から見たことがあるんだけど、どこまでもまっすぐ。
ドライブしても爽快ですよ~!」
「かなり遠くまで目視できるのも楽しいよね。自転車なら小回りも利くし、目に留まったお店にどんどん入ってみようよ!」
「え、もしやアポなし?」
……まぁまぁ、アクシデントこそ旅の醍醐味ってことで。
美唄は鶏肉を使ったソウルフードが人気で、砂川には菓子店が密集したスイートロードがある。美唄から砂川へ向かって突き進めば、ちょうどご飯のあとにおやつを食べられる算段だ。
結果、今回我々がいただいたのは5品。どれも本当に美味しかった! 心残りは、時間切れで食べられなかった砂川ポークチャップ。また北海道へ来るための理由ができました。

こんなにまっすぐ!
Start!

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3.4km
日本七大焼き鳥のひとつ「もつ串」

キンカンや砂肝など、鶏のあらゆる部位が1本に! 塩コショウのシンプルな味付けが、汗をかいた体に沁みる。

元祖美唄やきとり 福よし 美唄本店
住所:美唄市西1条南3丁目2-16
電話:0126-63-3451
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2.7km
美唄産の米粉を使った「お米のシフォンケーキ」

美唄産のおぼろづきを使った米粉を85%も配合。しっとり食感と素朴な甘さで、あっという間にペロリ。全11種類から選ぶのも楽しい。

「休憩大事♪」
すぎうらベーカリー
住所:美唄市字美唄1192-5
電話:0126-64-2089
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4.4km
優しい味つけの「とりめし」で満腹!

鶏の風味と玉ねぎの甘みが効いた郷土料理。人気の定食とオムライスをチョイス。ここでもう腹9.5分目に。まだまだいくぞ~。


しらかば茶屋
住所:美唄市茶志内町日東入口
電話:0126-65-2768
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5.3km
グラスに注目!「ずどーんソーダ」

直線道路にちなんだ「ずどーんでカンパイ。」のデザインがキュート!
喫茶みみずく
住所:空知郡奈井江町奈井江28-1
電話:090(2813)1686
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5.3km
スイートロードの名店で「アップルパイ」

テラス席で焼きたてをガブリ。さくさくのパイ生地と果実感たっぷりのリンゴは、疲れが吹き飛ぶ美味しさ。

ナカヤ菓子店
住所:砂川市東1条南10丁目2-13
電話:0125-52-2575
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10.1km
Goal!

食べては漕ぎ、漕いでは食べてようやく辿り着いた終着地。「お腹はもちろん、達成感で胸もいっぱい!」(タム)
Special thanks
青の洞窟温泉 ピパの湯 ゆ~りん館
住所:美唄市東明町3区
営業時間:10時~17時 ※レンタサイクル
定休日:11月下旬~4月上旬
料金/クロスバイク・ファットバイクともに1日2,000円。(宿泊者は1,000円。)
電話:0126-64-3800
※紹介した家の営業時間や住所は、ふらの観光協会HP(https://www.furanotourism.com/jp/)で確認を!
※構成/梶原舞佑子(編集部) 撮影/二木亜矢子 地図/MORISON
(BE-PAL 2025年9月号より)