ゴールを前に、片づけるべき問題【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.29】 - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.05.20

    ゴールを前に、片づけるべき問題【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.29】

    ゴールを前に、片づけるべき問題【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.29】
    トレイルの本場であるアメリカには、連邦政府によって認定されたトレイル(ルート)がいくつかあります。そのうち「シーニックトレイル」と呼ばれるものが全11ルートあり、総距離は約17,800マイル(約28,646km)におよびます。

    日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんは、そんなシーニックトレイル全11ルートの踏破に挑戦中です。2024年9月から10月にかけては、アメリカ東部の「ポトマックヘリテージトレイル」と「ニューイングランドトレイル」に挑みました。斉藤さんによるアメリカのトレイルの最新レポート第29回をお届けします。

    水を求めてトレイルを右往左往し、予定の倍も歩く…【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.27】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

    [New England Trail Day 4-5]

    街に着いてものんびりできません

    この日は、夜明けとともに起床。緊急避難的にテントを張るステルスキャンプだったので、キレイに周辺を掃除して自分が宿泊した痕跡を片付けてから出発します。しばらくは相変わらず激しいアップダウンが続きましたが、いつしか緩やかな森の中の道のりに変わり、住宅街へと入っていきました。

    テント泊した場所から5マイル(約8km)ほどの距離をスムーズに進み、午前10時ごろにホテルに到着。さすがに早すぎましたが、部屋が空いているからとチェックインさせてくれました。

    ここは、コネチカット州のちょうど真ん中に位置している、バーリン(BERLIN)という街です。もともと食料補給も兼ねてバーリンの街で1泊する予定でした。

    当初は安いモーテルに泊まろうと思ったのですが、ニューイングランド・トレイルのコミュニティでDays Innsを勧められました。トレイルのルートから1.2マイル(約1.9km)ほど離れますが、確かに界隈で一番安い宿泊料なのでDays Innsに泊まることにしたのです。

    Days Innsの部屋。多くのハイカーが勧めるだけあって、快適でした。

    ニューイングランド・トレイルを歩き始めて以降、いろいろとうまくいかないことが続いていました。特に苦慮したのが水の調達と宿泊場所探しですが、他にも対処・解決しなければいけない問題を抱えていました。

    問題1:山火事

    現在地のバーリンから少し進んだエリア一帯で山火事が発生している模様でした。スムーズに消火が行われても、完全に鎮火するまでには時間を要します。まだ鎮火していないエリアを通り抜けるわけにはいきません。

    ニューイングランド・トレイルのコミュニティーでは、具体的にどこからどこまでが立ち入り禁止になっているかという情報が明記されていました。その上で、いくつかの迂回ルートの情報もあったし、中には「連絡をくれれば山火事エリアの区間をスキップできるように車で送るよ」と親切な提案をしている人もいました。

    僕としても、どれがベストな選択肢なのか、少し悩みました。そして、なるべくもともとのトレイルに近い道のりを歩きたいと考え、少しの迂回で済みそうなルートを行こうと決めました。

    山火事エリア近くの街、バーリン。

    問題2:クレジットカード

    ポトマックヘリテージ・トレイルを歩き終えるころ、途中のペンシルベニア州ロックウッドで1泊したホステルから、クレジットカードの決済ができなかったと連絡がありました。

    そのホステルでは、チェックインの時点でクレジットカードが使える、使えないでモメたのです。でも、持ち合わせの現金に余裕がなかったこともあり、半ば押し切るようにしてクレジットカードで支払うことで了承を得たのでした。

    ただ、クレジットカード会社のシステムで何か問題があったのか、うまく決済できなかったようです。とはいえ、ロックウッド以降も現金の補充はしていないので相変わらず余裕はないのですが、そのまま無視するわけにもいきません。結局、日本の郵便為替のようなものを利用してホステルへの支払いを済ませました。

    ニューイングランド・トレイルを表す青い長方形のマーク。バーリンの街中でも、あちこちで目にしました。

    ところで、今さらいうまでもなく、アメリアは車社会です。僕の泊まったホテルも、ハイウェイ沿いにありました。いろいろなお店などが集まる中心部まで2マイル(約3.6km)あり、車移動を前提に街が形成されているのです。

    クレジットカード決済でモメたホステルへの支払いのために足を運ぶ必要がある郵便局も、街の中心部にありました。時間に余裕があったので、歩いて郵便局に向かいます。

    アメリカの郵便為替のシステムのことなどを局員に尋ねたついでに、「僕も日本の郵便局で働いていたことがあるんだよ」と伝えると、とてもフレンドリーに対応してくださいました。その後は、食料の買い出しなどのためにスーパーマーケットに足を伸ばすなどして、ホテルに戻りました。

    片付けるべきことを済ませ、あらためて先々の計画を再検討しました。山火事で少し迂回する必要があるとはいえ、このまま問題なく進めば、あと3日でニューイングランド・トレイルを歩き終えます。

    3日のうち1日は、今いるホテルに宿泊。もう1日は、すでにキャンプサイトに予約済みです。残り1日が、緊急避難的にテントを張るステルスキャンプになる見通しです。この連載で前回、ニューイングランド・トレイルではテントを張る場所が見つからないと散々グチりましたが、そうした悩みとも残り1回でさよならできるのです。

    翌日、空はあいにくの雨模様。朝食を取ってから迂回路へ向けて出発しました。山火事のある方向を見ますが、まるで山火事なんて発生していないかのように、何もない住宅街が広がっています。

    トレイルヘッド(入り口)に着くと、特に迂回路の案内もなく、そのままトレイルを歩けそうな様子です。しかし、山火事のことを知りながらそのまま進むのは許されません。迂回路をまわって、合流ポイントのアトキンズ通りに着きました。

    ここもまた、山火事があるなんて全然思えない雰囲気でした。そこから一気にピグミー山へ上ると、山頂からは今朝まで泊まっていたDays Innsと、その目の前を通っているハイウェイが眼下に見えました。

    ピグミー山からの眺め。
    迂回路の途中にあった運送会社、Fedexの配送センター。広大!

    ピグミー山を下りて少し歩くと、「ニューグイダズ」というハンバーガーショップがありました。おそらく、今日水を入手できる唯一の場所です。入店しなくても店外からトイレを利用できるようになっていて、ハイカーも自由に使っているようです。

    ホットドックが人気らしいですが、こちらの支払いは現金のみです。僕は前述の理由から現金の余裕がないので、残念ながらホットドッグは断念。普段、なるべくハイカーフレンドリーなお店では、お礼かたがた飲食や買い物をするように心がけているのですが…。

    ハイカーフレンドリーな「ニューグイダズ」。

    結局、この日はパウダー・リッジ・マウンテン・パーク&リゾートのゲレンデ近くの場所でステルスキャンプ。なるべく人目につかない場所を選んでテントを張りましたが、たとえ森の奥深くでも人に出会うことはあります。誰も来ませんように、とビクビクしながら夜を明かしたのでした。

    翌朝は夜明けと同時に起床し、早々に出発の準備を開始。予想通り、テントが朝露で濡れていました。一瞬、その場で乾かそうかとも思ったのですが、今夜泊まるテントサイトに早めに到着して干した方が手っ取り早いと考え、濡れまましまい込んで出発します。

    日本で日々の雑事に追われていると「早くトレイルを歩きたい!」と思います。でも、いざトレイルを歩いていると大変なことも多く、「早くトレイルを終わりたい!」と思います。ワガママというかゼイタクというか、いい加減なもんですね…。

    あと1日キャンプすれば、ニューイングランド・トレイルもゴールです。こっそりテントを張っておびえたり、濡れたテントをわずらわされたりすることも、もう終わりです。そう思うと、なんだか気持ちが軽くなりました。

    |歩き始めて5日目
    |残り30.3マイル(約48.4km)

    ニューイングランド・トレイル公式サイト

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    斉藤正史さん

    プロハイカー

    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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