クマとの遭遇に備えて覚えておきたい行動パターンは?専門家に聞いた!(後編) | BE-PAL

クマとの遭遇に備えて覚えておきたい行動パターンは?専門家に聞いた!(後編)

2021.02.28

私が書きました!
山岳ライター
吉澤英晃
群馬県生まれ。登山用品を扱う会社の営業マンを経てフリーランスとして独立。幼少のころ家族で楽しんだキャンプでアウトドアが好きになり、大学で探検サークルに入ってから山に登り始めました。現在は山岳会に所属して、春から秋は沢登りとテンカラ釣り、冬は主にラッセル山行とアイスクライミングを楽しんでいます。

登山中、もしもクマに遭遇したら…

前編では、クマに遭遇する確率を下げる方法、について学びました。しかし、たとえ万全を期したとしても、100%山中でクマに出会わない確証はどこにもないのが悲しい現実。では、万が一山中でクマと鉢合わせしてしまったら、どうしたらいいのでしょう?

前編に続き、フリーのクマ研究科である米田一彦先生に、クマに遭遇したときに取るべき行動パターンについても教えてもらいました!

※特別な記述がない場合、「クマ」は「ツキノワグマ」をさします

クマとの遭遇に備えて覚えておきたい行動パターン

距離が20m:クマが襲ってくることはまずない

まず、クマと遭遇したときの距離が20mほど離れている場合は、襲われることはまずないと言います。静かにその場から立ち去りましょう。

距離が10m:「オイッ」と声をかける

しかし、万が一距離が10mくらいまで近づいてしまったら、こちらの存在を知らせるために「オイッ」と声をかけます。クマが気付いて立ち去ってくれることもあるそうです。

距離が5m以下:熊よけスプレーを使う

それでもクマが立ち去らず、こちらに向かってきて万が一襲われそうになったら、熊よけスプレーがもっとも確実性の高い対処法。攻撃しようとこちらに向かってくるクマに吹きかければ、進路をそらせることができるといいます。

「いままで業務で9回くらいクマに襲われたことがあって、そのうち5回くらい使いました。クマの寝床と思われる穴を見に行ったとき(※専門家以外は絶対に真似しないでください)、覗いた瞬間にクマが出てきて、咄嗟に使用して急死に一生を得ました」

ただし、効果は高いですが、使用後は凄まじいヒリヒリ感に襲われるそう。そのため、使用方法には「風上から噴射する」と書かれているものが多いですが、いつもクマが風下からやって来るとは限りません。

しかも、クマを一度退散させても、諦めずに人間を追跡してくることがあるのだとか。過去には2時間も付け回されたという例も。熊よけスプレー1本では足りないこともあるようです。

首をガードして地面に伏せる

地面に伏せるときは背中を丸めるといいい。

熊よけスプレーを持っていない状況で襲われたら、首を手やバックパックなどで覆い、身をかがめて地面に伏せます。あとは運を天に任せるしかありません。

試す価値はあるかも。過去事例から学ぶ対処法

遭遇したときの対処法も、遭遇率を下げる方法と同様に実に少ないのが実情です。確証は得られませんが、過去の事例から有効と思われる方法もいくつか教えてもらいました。

何かを振り回す

過去には、82歳のおばあさんが竹の熊手を振り回しただけでクマが逃げ出した例があります。

「手元にあるバックパックを振り回したり、ブルーシートを広げたりして人間を大きく見せると、通常ではない形の動物に見えて、クマはそれを非常に恐れて逃げるようです。傘を広げたらクマが逃げたという例も」

木に抱きついて全身が見えないようにする

木に抱きついて体を隠した状態。

「おそらくクマは人間のことを、頭、手足、胴の5つの部分で認識しているように考えられます。だから木に抱きついて体を隠すと、一生懸命こちらを見てるけど、なんだろう? とクマが気付かないこともありました」。

クマが近づいてきたら試した方が良さそうです。

眼を見ながらゆっくり後退すると言われているけど…

クマがこちらに近づいてくるとき、クマの眼を見ながらゆっくり後退するという話もよく聞きます。

「でも、これを実践すると、だいたいの人が転ぶんだ」

確かに、山道はだいたいが坂道で、石や木の根といった障害物があります。それを見ずに後退りするのは至難の業。転んだら、その途端に襲われる可能性も否定できません。これは理想ですが、後頭部に第三の目でもないと、実際は難しいのかもしれません。

背中を向けて逃げるは絶対にやっちゃダメ!

最後に、クマと対峙したとき、絶対にやってはいけないことを聞きました。

「繰り返しになりますが、臭いの出る食べ物を持って歩くことはやめた方が良いです。そして、クマと遭遇したときは、背中を向けて逃げてはいけない。クマは自分より弱いと思った動物を襲うため、逃げるとクマは追いかけてきます。それと、左右に動くと認識されやすくなるから、遠ざかるときは、できるだけ真っ直ぐ後退してください」

やはり「出会わないこと」がいちばん大切!

クマ対策に対して知れば知るほど、100%確実と言える方法がないことに落胆します。しかし、そもそも全国の登山者数に対して、クマに襲われた登山者の数は極わずか。死亡事故ともなれば天文学的な数字になると米田先生は言います。

まったく恐れないのは問題ですが、正しく恐れて、出没情報が頻出している山域は避ける、山道ではできるだけ高い音が出るクマ鈴を鳴らす、食べ物の匂いを気をつける。これらの対策を講じていれば、よほどのことがない限りクマに出会うことはなさそうです。

クマと適度な距離感を持って、これからも登山を楽しみましょう。

教えてくれた人

日本ツキノワグマ研究所 米田一彦先生

1948年生まれ。青森県出身。秋田県町生活環境部自然保護課を1986年に退職した後、フリーのクマ研究家として活躍。島根県、山口県、鳥取県からの委託や、環境省のもとでツキノワグマの調査を行ってきた。著書に『山でクマに会う方法』(山と溪谷社)、『熊が人を襲うとき』(つり人社)などがある。

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