羆猟師が極めた北の大地の焚き火

2020.11.21

羆猟師 久保俊治さん

北海道標津町在住。国内外で狩猟の修業を積み、ヒグマの単独猟の技術を確立。著書の『羆撃ち』は10万部を超える大ヒット作に。現在、狩猟学校の「アーブスクール」を立ち上げ後進も育成する。

「どんなに強い雨が降ったあとでも、森のどこかには濡れていない薪があるものです……」

雨上がりの知床の森で薪を集めるのは、羆猟師の久保俊治さんだ。久保さんは若い日にこの森にこもり、ひたすら獣を追った。町に下りるのはひと月に5,6日だけ。天候を問わない山中での野営によって、久保さんは焚き火の技術を磨き上げた。

野営地に向かいながら、久保さんは立ち枯れた木の小枝をポキリ、ポキリと折り取っていく。
「雨上がりにはこんな枝から先に乾く。この湿り具合なら、ふたつかみもあれば十分でしょう」

川沿いの草薮を拓くと、久保さんはそこで火をおこした。新聞紙から小枝へ、さらに少し太い枝へと火を移していく。火が安定したと見るや、久保さんは手首ほどの太さの湿った薪を上に積んだ。途端に火は消え、煙が立ち上る。
「これでいいんです。火は薪の中心に残っていて、周りの薪を熱で乾かしている。薪が乾けば、自然に再び燃え上がります」

その言葉のとおり、やがて燻っていた薪の山に火が回り、大きな熾の山となった。久保さんは満足そうに微笑むと、道中で摘んだ山菜を焼き、飯盒をかけた。
「この地では、火をおこせるかどうかが生死を分けることもある。焚き火は北海道の猟において欠かせない技術です」

久保式焚き火術

1.薪を整える

立ち枯れの小枝や岩陰の濡れていない草を集める。濡れている薪は木の股に挟んで折り、内部の乾いた繊維を露出させておく。

2.新聞紙に着火する

川沿いでは、日が暮れると上流から下流へ向かって風が吹く。川と平行に2本の枝を並べ、その間で新聞紙に火をつける。

3.焚き付けを載せる

密に握り固めた焚き付けを燃えた新聞紙の上に載せる。新聞紙の火力で水分を飛ばし、焚き付け全体を一気に燃え上がらせる。

4.薪をくべる

焚き付けの火に勢いがあるうちに、より太い枝に火を移していく。外側が濡れた枝は露出させた乾いた内部から燃やしていく。

5.太い薪を積む

火力が安定したら手首ほどの薪を積む。一度は火勢が衰えるが全体が覆われることで熱がこもり、やがて力強く燃えだす。

6.薪をならす

全体に火がまわって薪が炭化し始めたら、足で踏んで天面をならす。薪の高さがそろえば、ゴトクがなくても飯盒が安定する。

7.熾火で調理

飯盒での炊飯は火勢が落ち着いてから行なう。火力の安定した熾火で炊くと焦げつかない。熾火は肉や山菜も調理がしやすい。

アキタブキ活用術

沢沿いに生えるアキタブキは天然の焚き火道具。葉に食材を包んで火にかければ、食材を焦がさず蒸し焼きに。茎自体も食料になる。

強い雨中の焚き火では、アキタブキの大きな葉を薪に載せて雨除けにする。火勢が強まると、どかさなくても自然に燃え落ちる。

※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL  2020年11月号より)

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