【モリヤーマン日記02】「湯治場」(とうじば)へ行ってみませんかー?

1200年続いてきた
自炊DE温泉トリップ術

みなさん、『b*p』 vol.10、いかがでしたか?

夏休みスイカ丸かじり号 (勝手に命名) ということで、

特集はb*pの原点に立ち返り、旅!

「今しかできない旅」 

これって、われわれb*p的人間にとって、

つかんでも、つかんでも次々と沸いてくる

ジンセイのゾンビ的永久目標であります。

 

わたくしモリヤーマン(森山伸也)は、

これまで夏はひたすら海外の山をめざしてきました。

旅の舞台はおもに北欧の北極圏。

衣食住を背負って何百キロと歩くバックパッキング旅です。

まさに「今しかできないぞ」という強い気持ちが、

海の向こうの荒野へ背中を押していったのだと思います。

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2013年8月、ノルウェーのロフォーテン諸島を1か月歩いたときの写真。 撮影=大森千歳

ところが、ここ2年くらい、国内の海や川、

山で遊ぶことが多くなりました。

手つかずの源流部でイワナ釣り、

SUPでぐるっと離島一周、

北海道の大河を犬と下る

(絶賛発売中の『BE-PAL』9月号をチェック!)、

などなど海外へいく時間がないほど

日本の夏にどっぷりハマちゃってます。

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今年の6月にSUPで旅した日本海の笹川流れ。「ここはホントに日本海か?!」と目を疑うほどに透明度が高く、白砂が大粒できもちいいー!

 

なんでいまさら国内? 

いやいや、若い頃は気づかなかった歳を重ねたからこそわかる

『ハハなる豊穣の自然回帰』という

キヅキがそこにはあるような気がします。

 

そして、この国内アウトドア旅もまた

「今しかできない旅」なのです。

バラマキ公共事業によって、いまだに日本の自然は

どんどん破壊され続けています。

ダム建設の愚行に気づいたアメリカは

ダムを壊しはじめたというのに、

日本は半世紀以上も前に計画されたダム建設を、

膨大な予算をかけて、いまだに行なっています。

沢に登れば、土砂が埋まり用をなさない堰だらけ、

海にでかければ、白浜に横たわるテトラポット、

山に入れば、どこまでも続く林道。

これらの行き過ぎた公共事業による自然破壊が

なければ文句なしで、日本は世界一の

野遊び大国であります。

『b*p』vol.10の巻末で作家の野田知佑さんも

言っているではありませんか。

「日本の海がいちばんだ」と。

美しい自然が残っているうちに遊ばねば! 

アウトドアの視点から日本の国土をみると、

そんな哀しい「今しかできない旅」が

あふれているのです。

 

そんなわけで(どんなわけだ!?)、

記念すべき『b*p』vol.10は、

日本のルーツを巡る旅特集になっております。

ぼくは山形県の肘折(ひじおり)温泉に行ってきました。

いやー、よかった!

日本のあらゆる温泉街は、

大手旅行代理店のツアーや

ネット宿泊予約サービスに寄りかかりながら、

景観も建物も似たり寄ったりで特色のない

金儲け観光路線に突き進んでいるような気がします。

地方都市に見られる

車社会が生んだショッピングモールのように。

 

ところが、ここ肘折温泉は

「肩肘張らず、だれでも気軽に寄ってけや」

というオープンな感じで、

謙虚でガマン強い東北人によって営まれる

親しみ深い昔ながらの湯治場でした。

繁忙期を終えたお百姓さんや

体を病めた患者さんたちをずっと受け入れてきた

「湯治場」(とうじば)としての包容力が

いたるところに感じられるのであります。

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毎朝、朝市が開かれる肘折温泉のメインストリート。左奥に見えるのが、われわれが今回宿泊した「三浦屋旅館」だ。

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到着早々、三浦屋旅館の客室でゴロン。東北を代表する霊山・月山から下りてくる風が心地いい。下駄の音がカランコロン。

ほとんどの宿が湯治プラン、自炊プランを用意し、

誰もが長期間滞在できる日本的ホスピタリティーを

持ち続ける温泉街です。

なかにはお金をかけた鉄筋ピカピカホテルもありますが、

明治時代に建てられたすきま風びゅーびゅーの木造旅館が、

まだまだ元気に温泉街の中心に堂々と鎮座しておりました。

その宿の畳にゴロンとなれば、

なんだか田舎のおばあちゃんちに帰ってきたような

懐かしさに包まれます。

 

素泊まりなら1泊3,500円ほど。

基本のおかず2〜3品の2食付きで、

自炊で追加のおかずを作ることもできる湯治プランなら

1泊5,500円くらい。

でもって、源泉掛け流し風呂24時間入り放題。

さらに、部屋は襖で仕切られただけのオープンエアー。

隣客がいたら物音が少々気になりますが、

滞在した3日間の湯治客はぼくらだけ。

5人で4部屋を贅沢に使わせてもらいました。

素晴らしすぎる。

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温泉街にあった商店にて。いたるところに昭和な匂いがぷんぷんする。「変わらない」って心地がいいものなのですね。

いやいや、お金が惜しいわけじゃないんです。

お金を払えばほぼほぼ願いが叶うこの時代に

アンチテーゼ投げかける、

いやそもそも同じ時代ではなく、タイムスリップしたような

「旅人のことを想う」湯治システムが心地良いのであります。

お金をかけなくたって、

ネットでセコセコ情報を集めなくたって、

ただただ1200年続く湯治場に

仲間とともに身を委ねる。

それだけですべてが満たされました。

 

僕らが宿泊した「三浦屋旅館」の女将さんいわく、

もう自炊するお客さんはほとんどいないとのこと。

もう5年もすれば、各旅館から

自炊場が消えてしまうかもしれません。

となると、1200年続いてきた湯治場の

雰囲気を感じられるのは、今しかない。

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雪が降る11月いっぱいまで毎朝開催される朝市。とれたての野菜、下処理された山菜など、旬の地物がずらりと道路を埋める。雨天決行!

肘折温泉で、今しかできない自炊泊! 

料理好きの人でなければ、

きっと「メシ作るのめんどくせー」ってなるでしょう。

 

だけどね、朝市で買い出ししたり、

女将さんに山菜の処理方法を教えてもらったり、

旅するように生活した思い出は、

1200年のあいだずっと湧き出る温泉のごとく

体の奥へすーっと染み込んでいくのであります。

 

次回は、僕らが泊まった

“ほんとは誰にも教えたくない宿”「三浦屋旅館」

についてレポートします!

 

◎文=森山伸也 写真=矢島慎一 (肘折温泉)

 

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