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ギターとサーフボードは似ている
新年あけましておめでとうございます。 改めまして、日本各地、時には海外の海沿いを放浪しております、シンガーソングライター東田トモヒロです。
本年も、この取り留めのない我が拙文を、どうぞご愛顧賜りますようよろしくお願い申し上げます。
さて、新しい年を迎えるにあたり、昨年末に実施した、ある「整え」についてお話ししようと思います。
僕にとってね、ギターと同じくらい大切にすべき道具、それはずばり、サーフボードであります、はい。

ギターとサーフボード。この両者にはね、意外な共通点があるのです。
まず、ほとんどの場合、人の手によって丹念に作られているクラフトの製品であるということ。 僕が主にライブで使っておりますギターは、ギブソン社のアコースティックギター「J-45」というタイプのものなのですが、この形状のギター一つとっても、年代や細かなスペックの違いで、一本一本に個体差があり、音の響きも微妙に違ったりするものなのです。
そして手に入れた後もね、オーナーがどのように使っているか、あるいはほとんど使っていないか、はたまたどんな具合に保管されているかなど、さまざまな要因がその音に、ひいてはパフォーマンスに影響を与えたりするものなのです、うん。
やっぱり物って生きているんですね、きっと。特にこのように、細部に至るまで人の手で作られたものは、使われ方の履歴まで含めて、その個性が育っていくのかもしれません。そしてさらに言うと、同じギターでも、弾き手が変わると音も変わるから不思議です。
このような点において、サーフボードもやはり同様で、例えば同じテンプレート(洋服でいう型紙のようなもの)で作られたものでも、一本一本に個性があると言いますか、ハンドシェイプのボードであれば、全く同じものというのはあり得ないのではないでしょうか。
作り手のコンディションや感覚も、作業を行う日によって微妙に違うでしょうからね。そしてやはり、同じサーフボードでも、乗り手によって描き出されるライディングのラインもそれぞれ違います。
大事な存在なのに気付いたら傷だらけ
僕の旅では、ギターと変わらないくらい大事な存在のサーフボードですが、過酷な環境に持ち出すことも少なくありません。 使い込んでいるうちに、いつの間にか傷が入ってしまうこともあります。例えばリーフのポイントなどで、海底の硬い岩礁にクラッシュしたりすることもありますし、腕に抱えて運んでいる時に、知らないうちに何かにぶつけていたりもします。
あと、よくあるのが海外トリップなどでね、フライトの際にボードを預けるのですが、日本の空港の職員の方々と違って、外国の方々はフラジャイルの札があまり意味をなさないような、なかなかにラフな扱いをしてくださる場合が多く、現地に到着してケースから取り出すと、新しいクラックが出来ていたりして、とほほなことも……。

まあ兎に角、人間と同じでね、ボードにも時間の経過とともに、なんらかの年輪が刻まれるものです。まるで道具が静かに歳を重ねていくかのように。
前置きが長くなってしまいましたが、久しぶりにやってみたんです、サーフボードの「リペア」ってやつを。
いや、これ20年ぶりくらいではないでしょうか、リペアなんて。だいたいいつも専門の方、いわゆる「リペアマン」にお願いしてきたのですが、なぜかこの冬、自分でやったろう、って気になったのです、はい。
自分でやってみよう! サーフボードリペア
まずはリペアに不可欠な、「ソーラーレズ」という、ある意味サーフ業界では伝統的な補修剤を購入します。かつてはサーフショップまで出向いて買い求めていたものですが、今やネットで簡単に手に入れることができます。
ソーラーレズは、紫外線で硬化する特徴を持つ、ガラス繊維が配合されたポリエステル樹脂です。

これを使ったリペアの手順は至ってシンプル。サーフボードの傷口に、表面がなるべく平らになるようにソーラーレズを塗り、硬化したのちにサンドペーパーなどを使って平らにするという、極めて単純な作業なのです。しかしながら、あまり手先が器用ではない僕にとっては、これが難しい。
いや、ほんと。そこでやはりここでも、ネットの力を臆することなく借りましたよ。 YouTubeにね、やっぱりいくつも掲載されていました、ソーラーレズを使ったリペアのHOW TOが。いくつかの動画を散見して頭に叩き込んだら、いよいよ作業開始です。
今回は、愛用している2本のサーフボードを修理することにしました。深さ1cmくらいの傷であれば、ソーラーレズでのリペアが可能ということですが、幸いなことに、この2本のボードのありとあらゆる傷口は、すべて比較的浅いものが多かったので、セルフ修復で全快できるはず。
もう一方のベージュ色のボードはね、サーフィンによってついた傷ではなく、なんとライブの時にできた傷なんです。ライブ会場に海を連想させる雰囲気を加えようと、よせばいいのに自分のボードをステージに飾ったのですが、ピアノからギターに移る時にね、うっかり僕が足を引っ掛けてしまって、バターンとボードが倒れてしまった時に出来た傷だったのです。う〜ん、なんたる不注意でしょう。
セルフリペアの1・2・3
1.さてさてはじめに痛々しい傷口の周り(しっかり乾燥させておく)を、マスキングテープで囲みます。傷口から1cmほど離れた四方を囲むのが理想的だそうです。
2.まずは目の荒いサンドペーパーを用いて、表面の凹凸が滑らかになるまで削ります。この時、樹脂の粉などの飛散が気になる方は、マスクをされた方が良いかもしれません。
3.滑らかになったら、いよいよソーラーレズ、樹脂を塗ります。割り箸のようなものを使って、なるべく平らにね、マスキングのキワの辺りまで。樹脂を塗ったらラップで覆い滑らかな表面にします。この繊細さを必要とする作業が、意外と難儀なのです、僕にとっては。あまり多く盛ると、後から平らにするのが大変なので、いい塩梅の厚みに塗らなければなりません。

4.そしてね、ソーラーレズ、意外と硬化し始めるのが早いんですよ。僕は屋外の日陰で行ったのですが、もしかしたら樹脂を塗る作業は、紫外線の影響の少ない室内の方が適しているかもしれません。硬化を促す工程と、サンディング作業は屋外の方がやりやすいとは思いますが。
5.樹脂を塗り終わり、10〜15分ほど陽が当たる場所に放置しておけば、すっかり表面は固まっています。硬化したら、ここからいよいよサンディングです。

6.ラップを剥がし、まずは荒目のペーパーで、ある程度磨きます。この時、マスキングテープは貼ったままがいいでしょう。

7.ある程度、樹脂の表面がフラットに、そして滑らかになってきたら、さらに細かい目のペーパーで仕上げていきます。マスキングテープにサンドペーパーが引っ掛かり始めたら、塗った樹脂の部分と、元々のラインがフラットになってきた証となります。

どこまで攻める(削るか)か……その塩梅が難しい
ここがプロと我々アマチュアのテクニックの境界線です、おそらくね。あまり攻めすぎると、元々の傷口があらわになる可能性がありますし、攻めきれないと、サーフボード本来のラインと、新しく塗った樹脂との間にギャップが残り、微妙な段差のようなものが生まれてしまいます。
結果から申し上げますと、思い切り残りました、段差がね。臆病な僕は、攻めきれませんでした、このギャップを。僕のサーフボードをシェイプしてくれた職人の皆様がこれを見たら、果たしてどう思うでしょう。水と接する部分のラインは、サーフボードの命です。しかし僕のリペア技術では、その美しいラインを、残念ながらキープすることはできませんでした。

できませんでしたが、リペアにおける第一の目的である、サーフボード本体への水の侵入は、これによって防ぐことができます。そう、傷口からの水の侵入は、ボードの寿命を縮める最たる要因ですからね、うん。「自分、ナイスプレー!」ってことにしておきましょう。
道具が整い、自分の心も整った
こうして2本のボードの、ありとあらゆるクラックは塞がれました。しかし同時に、ボードのアウトラインには、よく見ると新しいたくさんの”段差”が生まれたのは言うまでもありません。
ちなみに、フィンの部分なんかもリペアにチャレンジしましたが、実に楽しかったです。プロの仕上がりには程遠いとは思いますが、このように自分で自分の道具を修理するって、とても清々しい作業でした。 おかげで、長年僕と歩みを共にしてくれたサーフボードたちに、さらに愛着が湧きました。この一連の作業を進めていくうちに、自分の精神にとっても大事なことを成しているような、そんな気さえしましたもの。

ものを大事にする心は、日本人のDNAに深く刻まれている、という話を聞いたことがあります。生き物や自然ばかりでなく、静止しているモノや、空間などにも神が宿ると考えてきたのが、日本文化の重要な柱の一つなのでしょうね。大袈裟かもしれませんが、サーフボードのリペアを通して、そんなことを改めて感じた一日でした。
さてさて、無事に仕上がったボードをケースに収めます。専用のケースがあるあたりも、なんとなくギターと似ていますね。

今や成熟したサーフカルチャー、さまざまな愛らしいボードケースをチョイスすることができます。特にソフトケースと呼ばれる布地のものは多種多様ですし、手作りの物も少なくありません。使われなくなった生地や、履き古されたジーンズの生地などで、僕のサーフボードのために、わざわざ手作業で拵えてプレゼントしてくださった作家の方もいらっしゃいます。どれもとても気に入っています。
サーフボードだけでなく、このような素晴らしいケース、そしてリーシュコード、ウエットスーツなどなどね、これからも大切に扱って、できるだけ長く使いたいと思います。
皆様も、ご自分の道具のお手入れやリセット、チャレンジするにはいい季節かもしれませんね。
今回のおすすめの曲
The Velvet Underground & Nico 「Sunday Morning」
休日の道具のお手入れは、この曲を聴きながらスタート。最高ですよ。
東田トモヒロNEWS

今年も雪の北海道を旅します。
2026 雪旅 スケジュール
2月21日(土) 紋別
和風スナック ほるすたいん
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前売り2500 当日3000
チケット問合せ:Instagram @holstein625 @takuya_kakehashi
2月22日(日) ニセコ
“雪旅” 東田トモヒロ with pandemic snow 328
shabu-shabu SHO
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前売り2000 当日3000
チケット問合せ:Instagram @shabushabusho
2月23日(月) 当麻
ココペリ
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前売り2500 当日3000 1 drink order
チケット問合せ: ココペリ TEL:0166-84-5938
2月24日(火) 中富良野
北星庵
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door ¥2500
チケット問合せ: 北星:080-1888-5025
2月25日(水) 十勝
“TAC” とかちアドベンチャークラブ
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前売り2500 当日3000
チケット問合せ:Instagram @tac_hokkaido
2月27日(金) 興部
CLC
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前売り2500 当日3000
チケット問合せ:Instagram @city_lights_coop_okp
2月28日(土) 稚内
the catswhiskers
open18:00 start19:00
前売り2500 当日3000
チケット問合せ: Instagram @soya.films







