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松本明子のアポなし軽キャン日記|第16回
キャンピングカーのレンタルをはじめて5年目になりますが、毎年夏は、アムズ恒例、新潟で開催されるフジロック目当てのお客さんがいらっしゃいます。駐車場で車中泊もできるということで、今年も3件。早い人は半年前から予約されるんですが、計ったように同じ日の同じ時間に出発されるんです。
私と廣田さんはもちろん、相談役青倉さんまで会社の有休をとって来てもらい、各々が担当する車を見送りました。出発前に車の説明をしなきゃならないので、暑いなか、車高が高いから立体駐車場で気をつけてくださいとか、テントの開閉の仕方とか説明するわけです。
お客さんは若い20代か30ジャストな人たちなので、“もう、早く出発したい”っていうんです。
“もう、説明わかりましたから”って。もう、みんな早く行きたくてしょうがない。すごいですね、フジロック恐るべし。
それにしても、おじさん、おばさんが滝のような汗流して説明しているんですけど、若い人って涼しい顔して聞いてるんですよ。で、とうとう業を煮やしたのか、“出発しますんでもう、結構です。ビデオも見てるし”(アムズレンタカーでは事前に説明用の動画を送っています)って。
決済もね、いまはスマートフォンでできるんですけど、“領収書いりますか?”“あ、お願いします。ちょっとそのスマホ貸してください”ピッピッピって、いとも簡単にメールアドレスとか入れて自分でやってくれちゃったりするわけです。
あ、うちの業務部長・廣田さんはいまだ手書きの領収書です。
お客さんも百花繚乱
こちらも“一緒に記念撮影撮りましょう!”と、はじめて会うお客さんにいうんですから、若い人たちから見ると、よっぽどアムズレンタカーの従業員のほうが変わっているのかもしれません。(松本明子って誰? って人も多いんですよ!)5年ともなるとね、結構、個性的なお客さんに出会ったりするんですよ。
オープンしたての1年目は、それこそ、キャンピングカー以外の目的で使う人も多かったですね。クラフトビール店さんが駅前でのイベント出店のために借りに来たり、冬に都内で大雪が降ったときは、スタッドレスの車が必要だからと、2回ばかし、生花店さんが配達するのに使ってくれました。
全国の空き家物件を調査する不動産会社のサラリーマンの方が出張に利用されたこともありました。
東京タワー近くのホテルに来てくれ、と依頼があり、行ったところ待ち受けていたのは、革靴にスーツを着こなした長身でダンディなデンマーク人。モデルさんみたいな出で立ちでしてね。霞ヶ関まで引っ越しの荷物を運ぶレンタカーとしてのご用命でした。大きなトランクを7、8個積んで運ばれていました。
2年目になると、ようやくキャンピングカーとして利用する人が増えてきました。そんなころ、アムズで二大おじさんとして、私と廣田さんを楽しませてくれた(?)ひとりが、若いころから、日本全国を旅するのが夢だった79歳のおじいさん。ほかのレンタカー店さんには軽自動車タイプのキャンピングカーがなかったとかで、うちを見つけて“これだ、俺の求めてたのは!”と、見学に来てくれました。“追加料金払うから、中野の自宅まで持ってきてくれ”といわれて、廣田さんが2回ぐらい運びましたかね。
もうひとりが(以前もちょっと書きましたが)謎にアムズの事務所に来たがるおじさん。
基本、車の貸し出しも返却も駐車場で行なっているんです。だって事務所といっても、6畳一間で常にレンタル品であふれかえっているから、お客さんを呼べるようなところじゃないんです。でも、あまりに“事務所行こう、事務所行こう”って自称、元警察官のおじさんが食い下がるので、廣田さんが事務所に案内したんですけど(残念ながら、松本不在でした〜)、入ったところで、何をするわけでもなく、“暑いなぁエアコン、エアコン”って。
「実は、私のファンだったんじゃない?」
「いや、あれは、松本さんのファンでもなんでもないですね。ただの興味本位です」
廣田さん一刀両断。
世界に広がる軽キャンの輪
私と廣田さんで“泣き虫ローズ”って名付けたのは、ニュージーランドからきたひとり旅の20代女性。車を受け渡すための待ち合わせからうまくいかず、電話で話しても英語オンリーなので、なかなか意思の疎通もとれない。廣田さんが困り果てていたところに、たまたま車を返却にきた外国人のお客さんが電話を代わってくれて、場所を説明してくれました。
そんなこんなでようやく待ち合わせ場所に現われたと思ったら、不安で泣きベソをかいているじゃありませんか。ひとりで旅して大丈夫かな、と心配になりましたよ。そしたら案の定、1週間の予定で旅に出たはずなのにいきなり電話があって、返却日まで2日残して、“いまから帰りたい”と。
夜中の2時に車を返却したいっていうんです。さすがに仏の廣田さんも、それは無理ですって断ったら、じゃあ夜中に着いたら、駐車場で寝て待ってますっていうんですよ。気が小さいのか大きいのか。よくひとり旅しようと思ったなぁ。
韓国からいらしたキムさんは、バグトラのテント内は火気厳禁なのに、絶対焼肉やったでしょ! ってにおいを車内中に充満させて返却。だって、テントの入口を開けたまま帰ってくるあたり、自分でも気づいていたはずですよね。におい消しスプレーを車とテントにシュッシュして、24時間テントを開放して風を通しました。それ以来、目立つところに大きめの“火気厳禁”を貼るようになりました。
直近では、“ヤギと一緒にレンタカー乗りたいんですけど”という連絡が。秋にヤギのイベントがあるらしいんです。3人で家畜料金作ろうか、とか会議しつつWEBでいろいろ調べたら“ヤギはくさい”って。でも、うちはちゃんとシャンプーしてるし、家のなかで飼ってるから大丈夫、とお客さん。いまからドキドキして待ってます。
アムズレンタカー、ワールドワイドなレンタカー屋を目指します!
類は友を呼ぶ、とはこのこと
アムズ相談役から見た松本明子

「僕、青倉と松本さんは小中の同級生でして。僕は小3のときに転校してきましたが、ピアノも弾けてチャキチャキしてて、本当、才女でしたね。卒業式のとき〝歌手になるんや〟〝がんばりまい!〟と別れましたが、まさか35年後にレンタカー店を手伝うことになるとは。
松本さんの困ったところは、とにかくルールを勝手に変えちゃうんですよ。大学生がテントの屋根を駐車場の天井にこすってバキバキにしたときも、『学生さんはお金がないからいいですよ』。犬料金は書いてあるけど猫はいいですか? 『いいですよ』。
ETC代金にしても、『100円単位は面倒だから切り捨てでいいですよ』。ビックリですよっっ。いいわけないでしょ、ビジネスなんだから。事務所にはメモ用紙があふれていていまだアナログ。ふたりでPC教室に行ったはずなのに、都度都度、〝ここ押すんやっけ?〟全然勉強してないやん! 才女は何処へ……、いつも怒ってばかりです」

筑波山(写真左、左が青倉さん)や八王子城跡(上)など一緒に登山も。

先月紹介した白駒池に行った際、縞枯山にも登ってきたときの様子。

ロープウェイで
行けるよ~。
松
●松本明子さんのレンタカー、オフィスアムズはこちら→https://officeams.com/
※構成/大石裕美 写真提供/オフィス アムズ
(BE-PAL 2025年10月号より)