いよいよ3つ目にして最後のLHHトレイルへ【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.23】 - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.05.03

    いよいよ3つ目にして最後のLHHトレイルへ【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.23】

    いよいよ3つ目にして最後のLHHトレイルへ【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.23】
    トレイルの本場であるアメリカには、連邦政府によって認定されたトレイル(ルート)がいくつかあります。そのうち「シーニックトレイル」と呼ばれるものが全11ルートあり、総距離は約17,800マイル(約28,646km)におよびます。

    日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんは、そんなシーニックトレイル全11ルートの踏破に挑戦中です。2024年9月から10月にかけては、アメリカ東部の「ポトマックヘリテージトレイル」と「ニューイングランドトレイル」に挑みました。斉藤さんによるアメリカのトレイルの最新レポート第23回をお届けします。

    [ポトマックヘリテージトレイル編 その23]

    GAPトレイルに別れを告げ、いよいよ「ハイライト」に

    アウトフローキャンプ場そのものは快適だったものの、2日間とも朝は寒さで目覚めました。キャンプ場の目の前にユーギオゲニー川があったので、より寒かったのかもしれません。それでなくても、秋から冬へと向かう時期で、1日ごとに寒さがキツくなっていきます。上下雨具、フリースのインナー、手袋と、今ある装備で完全防寒してスタートしました。

    雨で視界不良ですが、キャンプ場の目の前にあるユーギオゲニー川。

    小一時間ほど歩くと、オハイオパイル州立公園の敷地に入ります。トレイルのすぐ脇で、フライフィッシングを楽しむ人が増え始めてきました。

    これまでのトレイルはバイカーとすれ違うことが多かったのですが、あまり装備を持たないデイハイカー(1日だけハイキングを楽しむ人)の姿も目立つようになりました。そろそろオハイオパイルの街が近いようです。

    アウトフローキャンプ場から、わずか10マイルほど(約16km)。この日は、お昼前に歩き終えたのでした。

    The Potomac Heritage Trail : MILE256.4 | OHIOPYLE

    オハイオパイルは、ユーギオゲニー川の急流の真ん中に位置しています。かつてジョージ・ワシントンがアレゲニー高原を通る運河を建設しようとしましたが、ユーギオゲニー川の急流に阻まれて計画を断念しました。

    その運河建設を阻んだ急流を楽しむラフティングが盛んになり、GAPトレイルのルートが通り、オハイオパイル州立公園でハイキングを楽しむルートができるなどして、オハイオパイルは、アウトドア・アクティビティのメッカとなっていったそうです。

    事前にコンフルエンスの自転車屋さんに教えてもらった通り、オハイオパイル州立公園のビジターセンターを訪ねました。ここでは、これから向かうLAUREL HIGHLAND HIKINGトレイル(LHHトレイル)の全ルートのマップが無料(!)でもらえます。オハイオパイル州立公園は人気の観光地だけあって、多くの人で賑わっていました。

    オハイオパイル州立公園ビジターセンター。

    GAPトレイルは、グレート・アレゲニー・パッセージ・ブリッジを渡り、ピッツバーグまで行くのですが、ポトマックヘリテージトレイルは、この橋を渡らず道路を歩いていきます。

    左手にグレート・アレゲニー・パッセージ・ブリッジを見ながら、いつかオハイオパイルからピッツバーグまでの残り70マイル(約112km)も歩きたいなと思いつつ、ここでGAPトレイルとお別れ。引き続き、LHHトレイルのトレイルヘッド(起点)を目指します。

    橋の上がGAPトレイル。

    C&O運河トレイル、GAPトレイルと歩き、ついに3つ目であるロ-レルハイランドハイキングトレイル(LHHトレイル)に向かいます。今回の僕のポトマックヘリテージトレイルは、LHHトレイルが最後です。なお、この連載のvol.2で説明したように、ポトマックヘリテージトレイルは復数のトレイルで構成され、何通りもの歩き方ができます。

    LHHトレイルは、オハイオパイル州立公園のユーギオゲニー川からジョンズタウン近くのコネモー渓谷まで、ローレル山に沿って整備されている70マイル(約112km)のハイキング・コースです。このルートは、ペンシルバニア州で一番美しい紅葉が見られるといわれ、オハイオパイル州立公園、ローレルリッジ州立公園の目玉のひとつとなっています。

    このルートは、州立公園、州立森林、州立狩猟地、その他の公有地、私有地を横断します。LHHトレイルは、ポトマックヘリテージトレイル全線の中でもハイライトといわれています。

    LHHトレイルのトレイルヘッド。ここからは徒歩のみのルートになります。

    LHHトレイル沿線は自由にテントが張れないエリアなので、事前にシェルター・キャンプ場の予約が必要になります。オハイオパイル州立公園、ローレルリッジ州立公園には、トレイル沿いに 6 マイルから 12 マイルごとに 1 カ所ずつ、計8 カ所のキャンプ場・シェルターがあります。

    各エリアには、暖炉のある 5 つのシェルターをはじめ、男女別のトイレ、テントサイト、ゴミ箱、給水施設(ポンプ式)があります。キャンプはシェルター・エリアでのみ許可されており、宿泊は1 泊に制限されています。

    また、雨天時にテントサイトで排水用の溝を掘った場合などは、出発前に元の状態に埋め戻しておく必要があります。自然の中で楽しむトレイルだからこそ、自然を守るためのさまざまなルールが設けられているのです。

    LHHトレイルのトレイルヘッド(起点)までの道のりには、アウトドアショップのほか、バーやレストランがありました。そして、広い芝生の広場にテントや機材をセッティングしている人がいました。今日は土曜だし、イベントでもあるのかなと思いながら通過します。

    最初のシェルターまでは約6.3マイル(約10km)なので、通常のペースでいけば3時間ぐらいで着くかなと気楽な気持ちでいました。しかし、地図の標高を確認すると大きなアップダウンが記されています。

    上の方からかなりのスピードで下ってくるランナーが来ました。最初はトレーニングかと思っていたのですが、ゼッケンを付けて走っています。しばらくは駆け抜けるスピードのランナーとすれ違っていたのですが、後半になると歩いているランナーも多くいました。どうやら先ほど見かけた何かの準備で忙しくしていた人たちは、トレラン(トレイルランニング)大会の運営スタッフだったようです。

    今日予約したシェルターは、オハイオパイルシェルター・キャンプ場です。トレイルの最初の登りの中腹にあり、翌日も朝からかなりの登りになります。バックパックに5日分の食料も荷物に入っているので、いっそう足取りが重くなります。

    最初のキツイ登りを上がっていきます。写真は眼下に見えるユーギオゲニー川。

    地図を確認すると、キャンプ場まで30分ほどの場所まできました。そろそろかなと思っていると、重低音が響いきます。

    キャンプ場の近くで音楽をかけているのか、夜まで騒がしかったら困るなと、不安げにトレイルを進むと、音楽だけでなく大きな掛け声も聞こえてきました。見ると、トレランの大会のエイドステーションでした。

    僕は手を挙げて軽く挨拶して先に進もうとしましたが、「何か食べて休んでいかない?」とスタッフから声をかけられました。ラッキーだと思い、いそいそと誘いに応じます。思いがけないトレイル・マジック(トレイルを歩くハイカーへの施し)でした。

    LHHトレイルは、歩行者のみのルートなので、今までのようにバイカーに会えません。あまり街を抜けず、ほぼ自然の中を歩く道のりで、キャンプ場も指定されています。

    しかも、秋から冬に向かうオフシーズンなので、ほとんどハイカー(人)に会わないだろうと思っていました。それなのに、LHHトレイル初日に賑わっている場所(トレラン大会)に行き合ったばかりか、トレイルマジックまで受けられるなんて!

    次々にやってくるランナーと話しながら、ありがたくジュースやピザなどをいただきました。あー幸せ。

    でも、長居はしません。満足したところでお礼をいって早々を再スタートしようとすると、スタッフから「お菓子も持っていきなさい」と、さらなるトレイルマジックが。

    でも、すでにバックパックは食料でパンパンだったので断ると、「ポケットに入るだけ持って行きなさい」と半ば強引にお菓子を渡されました。結局、ありがたくズボンのポケットまで食料でパンパンにして歩き始めたのでした。

    ありがた過ぎるトレランの大会のエイドステーション。

    今夜のシェルターに向かうトレイルの分岐を過ぎると、下り坂が延びていました。明日の朝は、この下っている道を登るのかと思うと、先取りしてため息がこぼれそうになるほどの急な下りでした。

    しばらく降りるとオハイオパイルシェルター・キャンプ場が見えてきました。立派なシェルターで、トイレも清潔。薪を置く小屋などもあり、ポンプの水も良好です。頑丈なロック式の鉄製ゴミ箱までありました。さすが州立公園とはいえ、有料のキャンプ場です。

    僕は予約したシェルター3に入って荷物を下ろすと、翌日の計画を確認。携帯電話の電波が入らないことが判明したので、日が落ちるまでの2時間ほどは、シェルターから外の景色をぼーっと眺めていました。

    ずっとを歩いていたのに、ひさびさにポトマックヘリテージトレイルのマークを目にしました!

    ポトマックヘリテージトレイル公式サイト

    ナショナルシーニックトレイル踏破レポのバックナンバーはこちら

    斉藤正史さん

    プロハイカー

    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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