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    2018.07.02

    『マイナス21℃』『クレイジー・フォー・マウンテン』まもなく公開! 凍える雪山、絶壁ダイブ、映画で納涼はいかが

     この夏、注目の山岳系映画が2作品公開になる。ひとつは、実話をもとにした遭難生還劇の『マイナス21℃』。もうひとつは、人はなぜ山に挑戦するのか……そんな素朴な疑問を追いかけたドキュメンタリー作品『クレイジー・フォー・マウンテン』だ。いずれも7月21日、同じ日に劇場公開!うだる暑さを避けて、涼しい映画館で映像のアウトドア疑似体験なんていかがだろう。

    『マイナス21℃』

     元プロアイスホッケー選手のエリック・ルマルクの体験をもとに映像化された本作品は、極寒の雪山シエラネバダ山脈が舞台。雪山といっても、バックカントリーや高所登山が目的だったわけではなく、スキー場からのコース外滑走で起きた遭難事故が題材だ。近年日本でもコース外滑走による事故が多発し、ニュースでもたびたび取り上げられている。

     スキー場の滑走エリアから山奥に迷い込み、発見されるまでの8日間のストーリー。予想もしない嵐が突然襲ってきたとか、不可抗力の話しではない。そもそも立入を禁止されているエリアと分かって踏み込むところからこの悲惨な物語はじまる。なんだ、自業自得じゃないか! と、正直、ジョシュ・ハートネット演じるエリックには同情はできない……。が、しかし、どうして、どうして。映像の強さというか、身近に起こりそうなリアリティ感というか、最後まで飽きさせないのだ。

     とにもかくにも、山岳用装備を一切持たず、8日間も生き抜いた精神力と生命力には感服!のひと言。寒さ、飢え、乾き、孤独、とにかく痛くて苦しい。マイナス21℃の環境下で着の身着のまま、食べる物もなにも無いなんて想像を絶するが、やはり最後の砦は「生きて帰りたい」という強い気持ちなのか? とも思わされた。また、エリックはオリンピックにも出場しプロの道を進んだ一流スポーツ選手だっただけあって、基本的な身体能力は高い。生還できた要因でもあると思う。

     マイナス21℃という過酷な環境での苦しみと並行して、エリック自身が抱える心の闇や苦悩もストーリーで徐々にあきらかになっていく。自ら立入禁止エリアに入るという行為にしても、ドラッグに溺れていることも、まったく感情移入はできない。それでも、(助かるとは分かっていても……)終盤に差し掛かると、「もう少しだぞ、諦めるな」と、不思議と応援したくなる。そして、人は経験でしか本当に変わることはできないのかもしれないと、そんなことも見終わった後には思わされた。

     本国アメリカでは、この雪山での遭難体験は書籍化されていて、本人も生還しているだけに、大げさな脚色はなく作品の映像とストーリー展開は忠実に再現されているという。日を追うごとに衰弱していく姿は、主演のジョシュ・ハートネットが減量して撮影にのぞんだだけのことはある。

     そして、この映画はCGが一切使われていない。それが観る者により強いリアリティを与えているのではないかと思う。監督は、スコット・ウォーで元スタントマンという珍しい経歴。スタントマンを引退し、監督や編集といった制作側に転向、監督デビュー作は、アメリカ軍の特殊部隊を題材にした「ネイビー・シールズ」(2012年)。スポーツカーレースを描いた「ニード・フォー・スピード」(2014年)などアクション系を得意としている。

    ちなみに、彼の父フレッド・ウォーもスタントマンで、スパイダーマンの初代スタントを担当した人だそう。

     俳優に代わってリアルな危険シーンに挑むのが、スタントマンのイメージだ。そんな現場を踏んできたからなのか、映像技術でフェイクしない本物へのこだわりが監督にはある。劇中では「これは合成?」と、一瞬思うシーンも多々登場するものの、すべて本物。

     生還してああ良かったね、それだけに留まらない、さまざまな感情を与える作品だ。スキーヤーやスノーボーダーには教訓とも智恵ともなる要素が散りばめられている。

     そして、『マイナス21℃』とは対照的に映像美と極上の音楽で迫るのが『クレイジー・フォー・マウンテン』。

    『クレイジー・フォー・マウンテン』

    ©2017 Stranger Than Fiction Films Pty Ltd and Australian Chamber Orchestra Pty Ltd

     高山のデスゾーンに挑むクライミング、雪崩に追われる急斜面の大滑走、目の眩むような高さの綱渡り。なんでそんな危ない場所にわざわざ向かうの?もし一歩間違えたら……。そんなシーンが満載、まさに『クレイジー・フォー・マウンテン』。

     「死の空気が漂うと、強烈に生を感じるようになる」と、誰だったかそんなことをいっている登山家がいた。安易にスリルだけを求めて、命の危険を冒し山に向かう者はひとりもいないだろう。ヒマラヤの高山は気軽に行けるようなところではないが、感覚的には共感できる部分は多々ある。

    ©2017 Stranger Than Fiction Films Pty Ltd and Australian Chamber Orchestra Pty Ltd

     ヒマラヤでなく近所の日帰りハイキングだったとしても、さして時間もかからずたいして苦労もせずだったら「なんだか物足りないな〜」なんて思うのではないだろうか。ちょっと辛い思いをして汗をかき、ようやく山頂を踏んでこその爽快感がある。大なり小なり、何かを乗り越えた先にある高揚感。それこそがクレイジー・フォー・マウンテンの一歩なのではないかと思う。

    ©2017 Stranger Than Fiction Films Pty Ltd and Australian Chamber Orchestra Pty Ltd

     クライミングだけでなく、劇中ではさまざまなエクストリームスポーツも登場する。山肌を沿うように高速で飛んだり、あるいは高山の雪面を浮遊したり、少し前ではまったく想像もできなかった方法で山に挑んでいる猛者がうじゃうじゃ。思わず身を乗り出してしまう映像が続く。

    ©2017 Stranger Than Fiction Films Pty Ltd and Australian Chamber Orchestra Pty Ltd

     今作品の壮大な映像をさらに盛り上げるのは、なんといっても音楽。耳慣れたクラシックの名曲が美しい映像をより引き立てる。そして、撮影監督には『MERU/メルー』(2015年)に出演し自ら撮影もしていたレナン・オズタークも名を連ねている。世界22カ国の自然美、なかなかお目にかかれない景色や光景を堪能できるだろう。

     この2本の作品で冷や冷や、ヒンヤリ? きっと納涼できるはず。

    ☆☆☆

    『マイナス21℃』

    配給:松竹メディア事業部
    監督:スコット・ウォー
    出演:ジョシュ・ハートネット、ミラ・ソルヴィノほか
    7月21日〜 新宿シネマカリテ他にて全国順次公開

     

    『クレイジー・フォー・マウンテン』

    配給:アンプラグド
    監督:ジェニファー・ピードン
    ナレーション:ウィレム・デフォー
    7月21日〜 新宿武蔵野館・シネクイント他にて全国順次公開

     

    ◎文/須藤ナオミ

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