参加店のひとつ、中島酒造店の女将は「映画の完成を楽しみにしていた」という杜氏だった店主を亡くし、その息子が継いだばかり。「純米吟醸『おやじの手造り』は主人が蔵元杜氏として初めて作ったお酒で、今日持ってきた純米酒『遼』は息子が初めて作ったお酒です。主人は”伝統を守るというのは、古き良き伝統を守りながら新しいものに挑戦していくことだ”と子どもたちに日頃から伝えていました。
その言葉通り、息子は主人のお酒とは真逆の、若者や女性にも日本酒のおいしさを知ってもらうお酒を造りました。どうぞ召し上がってみて下さい」。石井監督も「毎年味が変わり、興味深い蔵になるかもしれません。それを飲んで確かめ、味わいとして応援していただければ」と続ける。
映画『一献の系譜』には、そんな杜氏たちの戦いが映し出される。美しい能登の雪景色を背景に、酒造りの期間を家族と離れ、ただひたすらに酒と向き合っていく杜氏たち。
トークショーで映画の出来について篠井から質問された石井監督は「自分の産んだ子はねえ……よその人がなんと言ってもかわいいんですよ」と笑った後で、「映画としては4作目ですが、最難関にして最高の出来だと思ってます」と胸を張る。
「日本酒は、日本が誇る文化。私は石川県出身ではありませんが、そこは外国人が日本酒を見たような感覚で。日本酒を作ってきた先人たち、いまつくっている方々へ敬意を表し、ラブレターとして作った映画です」と結んだ。
構成/浅見祥子
『一献の系譜』
9月26日~新宿武蔵野館ほか全国順次公開
http://ikkon-movie.com/