この春、息子は小学2年生になった。親を介さず、子ども同士で遊ぶ約束を交わして出かけることが増えてきて、それ自体は大変喜ばしいのだけれど……。大人が「面白そうだからいっしょに出かけない?」と誘っても、「いや、ボクはいいよ」と返されるケースもしばしば。
今回の台峯(だいみね)緑地ハイキングも、最初は渋られた。梅雨入り前の、空気がカラッとしているこの時期に行かないのはもったいない! 山を抜けたら大きな公園に出るからそこで遊ぼうよ、と言うと、ようやくその気になった。
台峯緑地へは、JR北鎌倉駅を降りて住宅街の中を歩いていく。坂道をふうふういいながら進んでいると、あじさいの生け垣に出くわした。まだ咲き始めではあったが、季節を先取りした気分でちょっとうれしい。
あじさいの続く道を過ぎたあとも、容赦なく急勾配が続く。まだハイキングコースにたどり着く前の段階だ。実は、3年前にも台峯緑地を訪れたことがあるけれど、こんなに急な道だったっけ……!? 「斜めに登ると、楽かもしれないよ」と、さっそく実践し始めた息子。思ったほどの効果はなかったと見えて、あっさり今までと同じ歩き方に戻していた。
目の前に奥深い森が広がっている。やっと台峯の入口までやってきた。アスファルトから土の道に足を踏み入れた途端、一瞬にして涼しい空気に包まれた。
鎌倉三大緑地のひとつ、台峯緑地の面積はおよそ28.7ヘクタール。東京ドーム約6個分の広さに相当する。もともとは鎌倉を代表する里山のひとつで、人びとは薪や炭、堆肥として活用できる木を植え、伐採し、下刈りをするなど、暮らしのために利用しながら森と共存してきた。その後、里山に頼らなくても生活が成り立つようになり、次第に荒廃が進んでいった。
しかし、2008年から地域住民が保全活動を始め、本来の姿に戻すべく定期的に手入れを続けているという。
緑地入口から10分もせずに、展望台に到着した。正午をとっくに回っていたので、ここでお弁当休憩を。六国見山(ろっこくけんざん)の濃い緑と、手前の淡い黄緑色とを交互に眺めながら食べたら、あっという間に弁当箱が空っぽに。食休みののち、ふたたび歩き出す。
皮がはがれている木を見て、「これは生きているのかなあ?」
道中、気になるものを見つけたら立ち止まって観察する。もし何かわからなくても、推測してみる。正解を知るのも大切だけれど、いま持っている知識を最大限活用して考えるのは、大人にとっても頭の体操になるから面白い。
平坦な道が多く、とても歩きやすい台峯。ハイカーが通り過ぎた跡をたどれば、ほぼ危険な箇所はないといえよう。それでも、慎重派の息子は二股に分かれた道で、より安全そうなほうを選んでいた。