松本明子のアポなし軽キャン日記 第1回
まつもと・あきこ
1966年生まれ。香川県出身。’83年に歌手デビューし、『DAISUKI!』や『進め!電波少年』などで元祖バラドルとしての地位を確立。2021年から軽キャンのレンタカー事業(オフィスアムズ)を始める。
アポなし突撃で始めたレンタカー
私が、軽キャンパーのレンタカーをはじめたきっかけ、きっかけ、きっかけ……。じつは、いまから12年前、40代半ばに舞台をやりましてね。飛んだり跳ねたりしてたらヒザをやられちゃって。なんでも、ヒザ関節炎とかいうやつで、軟骨が削られて水が溜まっちゃうんです。ひどいときは、方向チェンジするだけで痛いのなんのって。
で、動きたくもないんだけど、痛くても、動かさないことには良くならない。厄介なことに、適度な運動は必要なわけです。運動不足解消のために何かしないと、って周りに相談して、
「松本さんケチだからお金かけるのイヤでしょ」と勧められたのが、低山ハイキングだったんです。
なぜかハマった低山
実際に登山をはじめたのは、2019年の冬。初めて登ったのが、神奈川県の大山です。毎週水曜日、『ゴゴスマ』という生放送番組のため名古屋に向かう途中、新幹線に乗るたびに眺めていた山でして。どうせなら、親近感のある山がいいかと。
まず伊勢原まで電車で行って、登山口までバスで移動して、早朝だったんで地面(麓)から登りました。中腹に阿夫利神社があって、そこから先が地獄の石段が続くんです。もう、苦しくて苦しくて。山頂についても曇っていて富士山は見えないし、人気の山だから混んでるし、ヒザが痛いから下りるのはもっと大変で……。なんで初めてなのにこんな山選んだかな、って思いました。
でも、80代のおじいちゃんとか小学生がスタスタ下りていくのを見たら、こりゃ、負けちゃいられん、ってなぜかポジティブ方向に舵切れちゃって。それから定期的に低山に行くようになったんです。
10か月で20座。1か月に2回は登山に出かけてましたかね。だんだん筋肉がついてきたのか、不思議とヒザの痛みもなくなったんです。それもあってすっかりハマっちゃって。
で、運命の山行が2020年9月に登った唐松岳。富山県と長野県の境にある、北アルプスにそびえる標高約2700mの山です。霧雨の中、合羽着て、早朝5時ぐらいからえっちらおっちら登ったわけですよ。
晴れてれば八方池に映る白馬岳なんかも見えたんでしょうけど、生憎の天気で。でも、上に行けば行くほど石だらけで植物は全然生えてないし、今までに見たことのない景色が逆に新鮮でした。しかも、雨雲を抜けたら、太陽燦々の快晴! 無茶苦茶暑いんだけど雪渓が残っていたりして。頂上からは劔岳とか槍ヶ岳、穂高連峰が望め、迫ってくるような大迫力の景色に、そりゃもう、感激しました。
でもね、それ以上に思うところがあったわけですよ。登って下りて7時間半。その日の夜寝るときに、今日1日でどのくらいの人とすれ違ったかなと。ざっと数えて、1000人の人とすれ違ったな〜って。
大きなテントを詰め込んだナップサックを背負った山ガールとか、九合目付近でテントを立てて泊まり、翌朝山頂を目指す人たちをたくさん見て、もっと気軽に行けたらいいのに、と思
ったんです。
私だって、前乗りで新幹線で松本まで行って宿泊し、早朝だから現地でレンタカーを借りて夜明け前に出発しました。登山するまでにケチな私が何万もかけてるんです。宿泊と移動を一緒にできたらもっと節約できるのに、って思いました。
バグトラとの出会い
思い立ったら即実行。山から戻ってね、早速探しました。女性でも運転しやすい、小型のキャンピングカーを。だって、大型の車なんて怖くて運転できませんから。
私が20代で初めて買った車が、中古のフィアット・パンダでした。外国車に憧れて、安い中古を探したんです。うれしくて、当時松村邦洋さんを助手席に乗せて、『電波少年』の収録に行きましたね〜。中野から四谷の日テレまで3時間かかり(普通なら30分ぐらい)、松村さんがとても嫌がってました。そのあとは、BMWやセルシオ、プリウスαなんかも乗りましたけど、フィアット・パンダがやはり思い出深いですね。
思い立ったら即実行。あ、もちろんアポなしです!
脱線しましたが、見つけたんですよ、私の車遍歴の中にはない、コンパクトなキャンピングカーを。それが、青森の「カーファクトリーターボー」が制作・販売している“バグトラ(Bug-truck)〟という車だったんです。軽トラの後ろにヨットの帆みたいなテントが立っていて。「これだ!」って思いました。
で、翌日早速電話。「タレントの松本明子ですけど」って。バグトラについて聞いてみたら、業務用ミシンで職人さんが縫製したテントを使った独自のカスタムカーだとわかりました。
それで、関東で仲介販売している神奈川県の「ブロー」というお店を教えていただき、すぐそのお店に行きました。あ、もちろんアポなしです!
さらにもう一台追加
実際にバグトラ見たらね、もう、「これ乗って山登り行きたい!」って思いが募って、すぐに購入を決めました。
ところが、そのお店が新車をカスタムするのを得意としていて、「スズキ・エブリイ」をアメリカのスクールバス風に架装や塗装した「ブギーライダー」っていうカスタムカーを売っていたんです。
こっちは後部座席を収納するとフルフラットになって、ゆったり車中泊できるタイプ。こんなの見ちゃったら、あぁ、どっちも欲しい、ってなりました! 結局のところ、これをみんなにも広めたい=レンタカー屋やりたい、と心に決め、双方2台ずつ購入するに至りました。
(第2回に続く)
※構成/大石裕美
(BE-PAL 2024年7月号より)