井浦 新さん&監督にインタビュー! 映画『東京カウボーイ』で感じる馬と人と自然のリズム
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    2024.06.18

    井浦 新さん&監督にインタビュー! 映画『東京カウボーイ』で感じる馬と人と自然のリズム

    井浦 新さん&監督にインタビュー! 映画『東京カウボーイ』で感じる馬と人と自然のリズム
    牧場再建を託された男が、モンタナで人生を見つめ直す──。映画で主演を務めた井浦 新さんとマーク・マリオット監督に聞きました。

    東京のサラリーマンが、モンタナでカウボーイに!?

    主演と監督

    マーク・マリオット監督(右)

    山田洋次監督『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(1989年)に参加。ドキュメンタリーやリアリティ番組のプロデューサー・演出を経て、本作が初長編劇映画。

    井浦 新さん(左)

    1974年生まれ、東京都出身。1998年映画『ワンダフルライフ』に初主演。『アンメット ある脳外科医の日記』(フジテレビ系)出演中。映画『ラストマイル』が8月23日公開。

    『東京カウボーイ』

    (配給:マジックアワー)
    ●監督/マーク・マリオット 
    ●脚本/デイヴ・ボイル、藤谷文子 
    ●出演/井浦 新、ゴヤ・ロブレス、藤谷文子、ロビン・ワイガート、國村 隼 
    ●YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開中

    場面カット

    日本で外国人として暮らした経験がもと

    「私は元々ありがちなアメリカ人というのか、わ~っとしゃべるタイプだったんです。でも19歳から2年ほど日本に住み、異国で外国人として暮らしたことで、話すより聞くことの大切さを知りました。その経験から人に対して心を開き、学ぼうとする人間に変わったのです。コミュニケーションの難しさ、それはまさに本作とつながっています」
     
    そういうのは『東京カウボーイ』のマーク・マリオット監督。主人公の坂井英輝を演じた井浦 新さんは「これはチャレンジができる!」とすぐに出演を決める。異国に渡り、ひとりで米国映画デビュー作に挑んだ。

    「オフの日は自転車でスーパーに行き、みっちりカレーをつくっちゃおう! とか。そうして生活するとモンタナの人と出会えます。すると台本に書かれたセリフに広がりが生まれ、英輝の心と僕とがひとつになるようでした」
     
    作品で、英輝は和牛で利益率を上げようと牧場へ乗り込む。スーツからカウボーイスタイルに着替え、現地の人と交流して自然に触れて。効率至上主義だった英輝の心が動いていく。

    「マークは俳優に指示するのでなく、考えさせてくれて。それでお芝居をすると、〝今のはちゃんと心に届いたよ〟などと必ずひと声かけてくれました。優しさと強さと思いやりにあふれた演出でしたね」
     
    その言葉にドヤ顔でおどける監督と、それを見て楽しそうに笑う井浦さん。ふたりの確かな絆が伝わる。

    「僕も英輝のように、遠くに見える大きなものに惹かれた時期がありました。人の数だけ幸せはあるし、何に価値を見出すのか。身近にある小さな幸せを大事にして、それに目を向けられる人間でありたい。目に見えないものや豊かな自然、近くにいる家族や仲間に。そうしたことを表現するのに、英輝は最高のキャラクターでした」
     
    完成した作品を持って映画祭に参加した監督は、「日本人監督の作品かと思った、という最高の賛辞をいただいた」とうれしそうに話す。そして、弟子入りしていた山田洋次監督の言葉を引き合いに出し、映画監督としてのこれからを見つめる。

    「山田監督は『映画はお蕎麦屋さんのような仕事だ』とおっしゃっていました。自分もただ甘ったるい作品ではなく、滋養の高い作品をお客様に味わっていただきたい。そんなことを思っています」

    アウトドア派だとわかるふたりの素顔

     
    ロケ地はイエローストーン国立公園の近く。「パラダイスバレーと呼ばれる場所で、そこでしか撮れない光がある」と監督。井浦さんは、向こうで野生のバッファローやムース(ヘラジカ)にしばしば遭遇した。

    「ロッキー山脈を左手に見ながら広~いステップ(平原)が続き、まっすぐな道をえんえん走ると、突然雨になって雷が鳴ったり雪が降ったり。現場に向かう道からもう、圧倒的な自然を感じられます」
     
    井浦さん同様、監督もじつはアウトドア派。ユタ州の国立公園近くに住み、よくトレッキングを楽しむそう。

    「自然に身を置くと、最初はシティモードが抜けずにスマホをチェックしちゃったりするけど、だんだん体が自然のリズムに慣れていく。ゆっくりしよう、という気分になります。この映画の英輝みたいにね」
     
    モンタナで購入し、「撮影期間中はず〜っと被っていました」というカウボーイハットがお似合いな監督に、井浦さんはうんうんと頷く。

    「自然のなかって、流れる時間が違います。時計が刻む時間でなく、太陽が昇って沈む、それで行動が決まる。この映画で、そんな時間を楽しんでいただければ。モンタナの大自然も楽しめますし、アウトドア好き、集まれ! と読者のみなさんに伝えたいです(笑)」

    ポスター

    海外版ポスター。井浦さんにとって初の米国映画で初主演。「監督は僕のこれまでの仕事を観てくれ、お芝居だけでなく、パーソナルな部分を知ろうとしてくれた」と話す。

     

    COLUMN 1

    ここでしかいえない撮影こぼれ話

    撮影初日に冠雪!

    春夏設定のため、プロデューサーらも総出で雪かきからスタート。「天候も馬も、人間の思いどおりにはなりません」(井浦さん)。

    うますぎてNG!?

    英輝が、カウボーイのように投げ縄を練習するも失敗するシーン。「あれ難しいんですけど、本番で成功してしまって」(井浦さん)、「下手にやって!と撮り直ししました(笑)」(監督)。

     

    COLUMN 2

    現代的、カウボーイのつくり方

    大手食品商社勤務の坂井英輝は、如何にしてモンタナのカウボーイに? 映画のストーリーをさらっと紹介。

    1  出発は効率至上主義のサラリーマン

    場面カット

    英輝は、上司でもあるけい子(藤谷文子)と婚約中。「マークや撮影監督の目に映る東京が日本の観客にどう受け止められるか? 楽しみです」と井浦さんは話す。

    2  東京の常識を押し通そうと四苦八苦

    場面カット

    英輝は牧場再建のためモンタナへ、元ロデオ選手のハビエルらと出会う。実際に井浦さんは現地で民泊し、ひとり暮らしをしながら撮影に参加した。

    3 〝郷に入っては郷に従え〟を実践

    場面カット

    英語が流暢でなく、下戸でもあって英輝は周囲になじめない。アメリカでも"飲み二ケーション"は不可欠!?

    4  馬と人と大自然と。頑なな心が動く

    場面カット

    投げ縄や乗馬を学び、牧場の仕事を積極的に手伝うようになる英輝。井浦さん自身も乗馬経験はなく、「馬の気分で、どうしても右に行って困ったことも(笑)」。

    ※構成/浅見祥子 撮影/横田紋子

    (BE-PAL 2024年7月号より)

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