1981年ネバダ州リノ。ケニー・ウェルス(マシュー・マコノヒー)は祖父の代から続く鉱山採掘会社「ワショー社」を引き継ぐも経営は悪化の一途。酒浸りになり、恋人ケイ(ブライス・ダラス・ハワード)のヒモ同然な生活を送っている。
ある日、酔いつぶれて見た、インドネシアで金(きん)を採取する夢。インドネシアだ!――直感を信じて地質学者のマイク・アコスタ(エドガー・ラミレス)と手を組み、金を求めてジャングルの奥深くへ。そして、まさかの巨大金鉱の発見で、ワショー社の株価は急上昇。ケニーは成功への階段を駆け上るも、莫大な利益を生み出す金鉱を巡る争奪戦に放り込まれる。やがて金鉱にまつわる衝撃の事実が発覚する……。
この映画は、1990年代にカナダの企業家が巨大金鉱を発見したと世間を信じ込ませ、安値だった株価を何十億ドルにまで膨れ上がらせたという金鉱スキャンダル事件がもとになっている。この実話もビックリ! なストーリーに、架空のキャラクターを融合させ、ゴージャスなエンタメ作に仕立てた。
なにがゴージャスか?
まずこの映画には〝ゴールド”に夢を託し、自分の全存在を賭けて勝負に出て、常人の想像には及ばない高みと地獄の極みを味わう男の姿が描かれる。実在の株式ブローカーをディカプリオが怪演した『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を思い出す人もいるかもしれない。とにかく成功を目指して目がイっちゃってる男の、激しすぎる栄光と挫折。ふつうなら美しく響く〝夢”に食いつくされる男の悲劇。
でも、この映画はそこで終わらない。アマゾンでの金鉱探しは冒険映画のようなドキドキがあり、友情のようなものも描かれる。でもじつはこの〝友情”が癖ものでのちに、騙したのは誰か? という謎を一層奥深いものにする。金鉱の主導権を握ろうとする投資家らとの駆け引きはビジネスものとしてもスリリングだ。
そしていつもは知的でクールなブライス・ダラス・ハワード演じるおつむの軽そうな金髪女、でも本当はケニーを心から愛する恋人ケイとのラブストーリーも、ちょっとしたシーンにグッとくるほど繊細だったりする。
スティーヴン・ギャガン監督は、これまで脚本家や監督として『トラフィック』や『シリアナ』を生んだ骨太な実力者。いくつもの物語が複雑に絡み合う重厚な人間ドラマを得意としてきたが、この映画もまたいくつもの魅力が複雑に絡み合い、ゴージャスな輝きを放っている。
『ゴールド/黄金の行方』
(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)
●監督:スティーヴン・ギャガン ●出演:マシュー・マコノヒー、エドガー・ラミレス、ブライス・ダラス・ハワードほか
●6月1日~ TOHOシネマズシャンテほか
◎Photo by Lewis Jacobs 文/浅見祥子