ソト遊びの相棒を考える!「ハッピーな気持ちになれるエコカーに乗るには」座談会 | クルマの旅・ドライブ 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2023.01.21

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    アウトドアズマンにとってクルマは単なる移動手段ではなく、行動を共にしてきた思い出深いパートナーだ。
    今クルマ業界は"環境にいい"というEVにシフトしている。クルマに乗るなら地球に優しく在りたい。ならば長年連れ添った相棒に別れを告げなければならないのか?
    まずはモータージャーナリスト岡崎五朗さんと本誌「RV GARAGE」でお馴染みのふたりで、「エコなクルマ」について考えてみたいと思います。

    私たちが語り合いました!

    モータージャーナリスト・岡崎五朗さん(中)、記者・櫻井 香(右)、編集・早坂英之(左)

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    岡崎五朗さん(中央)/日本自動車ジャーナリスト協会理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。青山学院大学理工学部機械工学科在学中から執筆活動を開始。ハードウェア評価に加え、マーケティング、ブランディング、コンセプトメイキングなどの見地からクルマを見つめ、クルマを通して人や社会を見るのがライフワーク。

    電動車にも種類がある

    早坂:個人的な話で恐縮ですが、いまクルマを買い替えようか迷っているところなんです。エコなクルマに乗りたいけれど、EV(正確にはBEV=バッテリーEV)、PHEV(プラグインハイブリッド。PHVとも表記)、ハイブリッドなどの中からどれを選べばいいのか、あるいはほかに選択肢があるのか、頭の中がもやもやしちゃって……。

    岡崎:ではまず早坂さんのために(笑)、電気モーターを使ったクルマの違いをおさらいしましょう。EVは、大きなバッテリーに外部から充電して、その電気でモーターを回して走るクルマです。PHEVは、中型のバッテリーとモーター、エンジンのふたつの動力を積んでいるクルマで、モーターとエンジンを切り替えたり組み合わせたりして走ります。そしてバッテリーは外部から充電ができます。ハイブリッドはPHEVと同じようにバッテリー・モーターとエンジンの両方を積んでいますが、バッテリー容量が小さく、外部からの充電もできません。バッテリー容量をざっくり比較すると、EVが60~100kWh、PHEVが10~20kWh、ハイブリッドが1kWhぐらいになります。

    櫻井:さらに燃料電池車(FCEV)もあります。水素と酸素の化学反応で発電し、モーターを回して走るクルマです。

    早坂:僕のイメージする理想のエコカーは、太陽光だけで走るクルマなんですが。

    岡崎:屋根につけた太陽光パネルだけで走るクルマを実用化するのは、おそらく難しいと思います。現実的なのは、家で太陽光発電して、それをEVとつなげることでしょうね。

    櫻井:一方で、化石燃料に代わる代替燃料の研究開発も進んでいるそうですね。

    岡崎:水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を合成して作る合成燃料(e-fuel)やバイオ燃料を全部ひっくるめてカーボンニュートラル燃料というのですが、2026年からF1とWRC(世界ラリー選手権)はe-fuelを使う予定です。ガソリン車・ディーゼル車のエンジン技術を活かしたエコなカーボンニュートラル車が期待できるというわけです。

    早坂:ひとくちにエコカーというけれど、さまざまな技術・可能性があるんですね。

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    東京電気自動車が、1947年に発売した電気自動車「たま」。石油不足に対応するため電気が使われた。

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    ニッケル水素電池を搭載した1996年発売の「トヨタ/RAV4 L EV」。当時の価格は495万円。

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    EV用に専用設計された4人乗りのボディーで、1997年にリース販売された「ホンダ/EV Plus」。

    エコを広くとらえるとエコカーの選択肢も広がる

    早坂:これだけさまざまなエコカーがあるのに、いまの社会の雰囲気は、「エコカー=EV」になっていますよね。どうしてなんですか?

    岡崎:要因のひとつは、2015年のディーゼルゲート事件。フォルクスワーゲンがディーゼルエンジンの排出ガス検査時に不正を行なっていたことが明らかになり、ヨーロッパでディーゼル車への信用が一気になくなってしまいました。ハイブリッドに対抗してディーゼルに注力してきたヨーロッパのメーカーは、ディーゼルを諦め、ハイブリッドへの対抗上急激にEVへと舵を切ったんです。

    早坂:EVにあらずばエコカーにあらずとヨーロッパがゲームチェンジをしたわけですね。

    櫻井:EUもそれを支援していて、2035年までにすべての新車をゼロエミッション化することが決まりました。ハイブリッドやPHEVまでをも含めてエンジンを載せているクルマは2035年以降生産できないという決定です。

    岡崎:一応、進捗状況を踏まえて2026年に見直しを行なうとされていますけどね。

    早坂:「EV以外は認めん」ってちょっと極端すぎませんか?

    岡崎:それについてはさまざまな議論があるのですが、ひとついえるのは、EVはカーボンニュートラルをイメージしやすいクルマだということです。「走っているときにいっさいCO2が出ないよ」とひとことで説明できますから。

    櫻井:でも、EVの電気を自然エネルギーで発電しているなら問題ありませんが、火力発電の電気だったら、クルマからは出ていなくても全体を見ればCO2を出していることになりますよね。

    岡崎:そこでキーワードになるのがLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)。クルマの製造時、走行時、廃棄時を発電方法までも全部ひっくるめて、どれぐらいの環境負荷があるのか評価する手法のことです。このLCAで見ると、じつはEVはバッテリーを作るときにエンジン車に比べてはるかに多くのCO2を出してしまうんです。たとえるなら、赤ちゃんが生まれながらに借金を抱えているようなものです。

    早坂:EVの電気が火力発電由来だと、その借金をなかなか返済できませんね。

    岡崎:ボルボの試算によると、CO2の総排出量でEVがガソリン車を逆転するのは、100%風力発電だと約5万㎞走ったとき、世界平均の電源構成(火力発電約6割、自然エネルギー3割弱)だと約11万㎞となっています。日本の場合は、火力発電の割合が約7割、自然エネルギーが2割強なので、14~15万㎞走らないとEVはガソリン車を逆転できません。

    櫻井:EVを生かすも殺すも電源構成ということですね。

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    急速充電器の普及がEVの喫緊の課題

    早坂:アウトドアユースで考えると、EVを選ぶのは正直まだちょっと勇気がいります。荷物がたくさん積めるEVが少ないし、輸入車のEVのほとんどに給電機能がついていません。

    櫻井:せっかくEVを買ってキャンプに行くなら、コンセントがついていたほうが便利でいいですよね。

    岡崎:災害時の利用を考えても、おすすめは給電機能のある日本車ですね。

    早坂:それと、EVの最大の不安要素は航続距離です。バッテリーが大型化して航続距離が伸びてきたとはいえ、遠方のキャンプ場の周辺に急速充電器がなかったら厳しいですよね。

    岡崎:急速充電器の普及は喫緊の課題です。

    櫻井:じつは古い充電器がそろそろ更新の時期にきていますけど、コストがかかるから更新しない施設があるんです。この間EVで箱根に行ったとき、以前利用した施設が廃業していてエラい目に遭いました。

    岡崎:根本的な問題は、急速充電器を設置しても儲からないことにあります。ビジネスにならないから、いまは市役所や道の駅や自動車ディーラーなどがサービスの一環でやっているのがほとんど。でも、裏返せばこれは民業圧迫です。EVユーザーの負担は増えますが、充電が持続的なビジネスとして成立するような価格にするべきだと思います。そうすれば急速充電器がどんどん普及し、安心してEVに乗れるようになるはずです。

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    2022年11月に世界同時発表された新型「プリウス」。美しい外観と、スポーティーな走りを実現。

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    ホンダ初の量販ハイブリッド車「インサイト」は、当時世界最高の35㎞/Lという燃費性能を樹立。

    ライフスタイルで異なる最適なエコカー

    岡崎:カーボンニュートラルを目指すときの基本セオリーは、需要の電化と発電の脱炭素化。ガソリン車・ディーゼル車をEVに置き換え、火力発電を減らすことでCO2排出を減らそうというものです。ですから、EVがエコカーの大きな柱であることは間違いありません。ただし、絶対にEVでなければならない、100%EVにしなければならないとは私は思いません。

    たとえば集合住宅に住んでいて自宅で充電できない人にとっては、EVやPHEVは使い勝手が悪いのが現状です。なにもがまんしてまでEVやPHEVに乗らなくてもいいでしょう。逆に、いまガソリンスタンドがどんどん廃業している中、家から一番近いガソリンスタンドが片道20㎞といった地方では、家に充電器を設置すればEVで便利になるでしょう。要は、EVの価値は人それぞれで違うということです。

    櫻井:私は、エコカー=EVではなく、もっとエコを広くとらえたほうがいいと思うんです。たとえば燃費の良さだったり、極端にいえばワクワクするかどうかだったり。ワクワクするクルマを長く乗り続ければ、資源を大切に使っていることになるじゃないですか。

    早坂:じゃあ、僕のようにロングドライブするキャンパーが燃費のいいクルマを選ぶのもアリってこと?

    岡崎:もちろん。燃費はエコに直結します。

    櫻井:じつは日本の技術力でガソリンエンジンもディーゼルエンジンも、以前とは比べものにならないほどエコになっているんですよね。

    岡崎:日本のEV率はまだ低いですが、軽自動車率やハイブリッド率は非常に高くなっています。軽自動車に関しては価格や税制といった経済的な側面もありますが、もともとエコなクルマ選びをしているんですよ。

    早坂:燃費もエコ。エコという言葉を考えさせられますね。

    櫻井:資源を大切に使うという観点では、長く乗り続ける以外に、カーシェアリングもエコだといえるでしょう。メンテナンスが難しくなった古いクルマなら、ガワはそのままでエンジンを充電池とモーターに載せ替えてコンバートEVにするのもアリだと思います。

    早坂:エコを広くとらえると選択肢も広がるわけですね。

    櫻井:そういったさまざまな選択肢がある中で、それぞれのライフスタイルに合った1台、予算も含めて自分の理想のエコカーを選べばいいのではないでしょうか。

    岡崎:そうそう。「これが自分に最適なエコカーです」となればいいんですよ。大事なのはエコを意識すること。そして、エコカーに乗ってハッピーな気持ちになること。

    櫻井:早坂さんの場合は、ファミリーでキャンプ道具をいっぱい積んで遠くのキャンプ場までロングドライブするというスタイルに合ったエコカー。ワンボックスやミニバンもひとりで乗ればエコではないけれど、ファミリーユースなら候補のひとつに入れていいと思いますよ。

    早坂:なるほど。なんかもやもやが晴れてきました!

    じつは大昔から研究されていた!「エコなクルマ」の歴史

    1830年ごろ ロバート・アンダーソンが世界初の電気自動車を発明。
    1885年 カール・ベンツが世界で初めてガソリンエンジン車を造る。
    1900年 日本で初めてEVが走る。皇太子(大正天皇)ご成婚記念にアメリカから贈られた「ビクトリア号」。
    1900年代初め トーマス・エジソンが蓄電池を開発し、それを搭載したEVを試作。
    1934年 日本電気自動車製作所が小型電気自動車「デンカ号」の製造を開始。
    1947年 東京電気自動車(後の日産)が電気自動車「たま」の生産、販売を開始。
    1950年 メルセデス・ベンツが内装に初めてリサイクル材を使用。
    1970年 アメリカで大気汚染防止のための「マスキー法」が成立。
    1972年 ホンダが世界で初めてマスキー法をクリアした低公害エンジン「CVCC」を発表(下の写真)。

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    1990年 米・カリフォルニア州で一定比率以上のZEV(ゼロエミッションビークル)販売を義務付ける規制を施行
    1991年 ボルボが世界初の脱フロン車を開発。
    1996年 三菱が低燃費・高出力を実現した「GDI筒気内直噴ガソリンエンジン」を世界で初めて市販車に搭載。
    1997年 トヨタが世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」を発売(下の写真)。

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    日産が、世界初のリチウムイオン電池搭載の電気自動車「プレーリージョイEV」を発売。
    ホンダが世界で初めてニッケル水素電池を搭載したEV「EV PLUS」リース販売開始。
    1999年 ホンダがハイブリッド車「インサイト」を市販。当時、ガソリン車として世界最高燃費を記録。
    2002年 ホンダの燃料電池車「FCX」のリース販売を開始。
    2003年 東京都がディーゼル車規制を開始。
    2009年 三菱が量産型EV「i-MiEV」を法人向けに販売開始。
    2010年 日産が量産型EV「リーフ」を一般向け発売。
    2012年 マツダは、世界で初めて高価なNOx後処理装置を使用しないクリーンディーゼルエンジンを搭載した「CX-5」を発売。
    2013年 三菱が、世界初のPHEV×4WD「アウトランダーPHEV」を発売。
    2014年 トヨタが世界初の一般向け燃料電池車「MIRAI」発売。
    日産は商用車(バン)のEV「e-NV200」を日本・欧州に向けて発売。
    2020年 ホンダ初の量産型EV「Honda e」を発売。
    メルセデス・ベンツが当時、世界で唯一の市販プラグインハイブリッド燃料電池車「GLC F-CELL」を日本でリース販売開
    始。

    ※構成/鍋田吉郎 表/山本修二 撮影/高柳 健、黒石あみ

    (BE-PAL 2023年1月号より)

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