こんな生き方もあるのか…!ドキュメンタリー映画『Game Hawlker/鷹匠』トークイベントでわかった、鷹匠の日常 | 採集・ハンティング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

こんな生き方もあるのか…!ドキュメンタリー映画『Game Hawlker/鷹匠』トークイベントでわかった、鷹匠の日常

2022.05.18

鷹匠の松原英俊さん。(C) 2022 Patagonia, Inc. .jpg

ファルコナー(鷹匠)のショーン・ヘイズを追ったドキュメンタリー映画『Game Hawker/鷹匠』のプレミア上映&トークショーに登壇した鷹匠の松原英俊さんと、パタゴニア日本支社に勤務しながら25年以上をファルコナーとしても活動する石川和也さん。知られざる鷹匠の日常生活とは? 聞き手は、『鷹と生きる。鷹使い・松原英俊の半生』著者である谷山宏典さんです。

訓練中は、風呂や寝る以外の時間をクマタカと一緒に

――鷹匠になりたいと思ったきっかけは?

松原「幼いころからトリが好きで、小学生のときから野鳥の会に入ってトリや動物を観察していました。それで中1のときに師匠が出ていた『老人と鷹』というドキュメンタリーを観たのが最初のきっかけです。それで大学3年のとき、どういう生き方をしよう?と考え、生きものと関わる仕事がいいと思って。マタギも考えたのですが、私のように生きものが好きな人間は鉄砲より鷹で獲物をとる方がふさわしいなと。それで鷹匠と出会ったわけです。

いろいろな動物の本を読むなかで黒澤明監督の映画にもなった『デルス・ウザーラ』という本に出合いました。狩人のデルスは段々と年をとり、目が悪くなり、友人から〝狩りなどしないで街に住んだらいい”と住宅を世話してもらって。それで街に住んで経済的には豊かになりますが、自然の中でなければ自分が望む生き方ができないとまた山奥に戻っていきます。最後は山賊のような人間に殺されてしまうんですけど、そのデルスの生き方、決して経済的なものは求めず、自分が住む場所はここだという自然に生きる者として確かな思い。それは憧れです。私も彼のように、最後はタカと共に死ぬのが理想ですね」

――映画の中でショーンが、「鷹狩は子育てと一緒、全力でやらないとダメ」だと。ご自身はタカと共にどんな生活を?

松原「クマタカの訓練は秋、10月ごろに始まります。タカを手にとめるのを〝据える”といいますが、最初はバタバタ暴れてうまく乗らない。タカは暗闇の中だと大人しくなるので、部屋を真っ暗にして腕に据えます。そうして暗闇の中で10日~半月訓練し、大人しく手にとまるようになったらこんどはロウソクをつけ、少し明るくて鷹匠が近くにいることを教えていくんです。そのロウソクの本数をだんだん増やしたり、夜明けの光に慣らしたりして、明るいなかでも鷹匠の手にとまっていられるようにします。その訓練と並行し、タカの絶食を繰り返します。ハヤブサもオオタカも、腹いっぱいの状態ではいくら人間に慣れても獲物には向かいません」

石川「私はハヤブサを使います。クマタカは腕に据えるのが狩りのときのスタンバイの状態ですが、ハヤブサは空中を飛んでいる状態がスタンバイ。なので必ずしもクマタカのように、腕に据えるために時間をかけてトレーニングする必要がありません」

――狩りを成功させるにはタカの体調管理が大切とか。気を付けていることは?

松原「絶食を繰り返すことでタカの体力は落ちますが、獲物に向かう気持はどんどん高まっていくんですね。胸を触って肉付きを確かめたり、糞や口の中の色などでタカの体調をみます。飛び方が遅いときもあるし、呼んでも鷹匠のもとに戻らないこともあります。そうしたことを総合的に判断してタカの体調をみますが、それが鷹匠にとっていちばん大事でいちばん難しいことです。失敗や事故を経験しながらいままでやってきましたから、ショーンの〝タカの病気や事故はすべて鷹匠に責任がある”という言葉は私にとって辛く苦しいものとして受け止めました」

「タカの体調をみるのが鷹匠にとっていちばん大事で、いちばん難しいこと」と松原さん。(C) 2022 Patagonia, Inc. .jpg

野ウサギの毛皮は1枚50円!?

――どれくらい獲物がとれるのですか?

松原「私の師匠の時代は一冬にウサギが100羽とか150羽とれていたそうですが、私が弟子になったころにはどんどん減ってしまって。朝から夕方まで雪山を歩いても、3羽とれるのが限界で。それでも、昔はウサギやサルやテンの毛皮が非常に高価に売れたので、冬場の仕事として成り立っていました。でもいまは、毛皮の需要がまったくない。今はウサギの毛皮が一枚いくらで売れると思いますか(会場を見渡す)?一日雪山を歩き回って捕まえたウサギの毛皮は1枚50円にしかならないんです。まったく収入にはなりません」

――ウサギの毛皮を売ることでは生活できないとのことですが、どのように暮らしを立てていらっしゃるのですか?

松原「山小屋に住み、冬はクマタカを訓練し、狩りをします。当時土木工事のアルバイトは日給がだいたい4000円で、1か月働けば8万円くらいになります。3か月やると24~25万円になり、それを一年の生活費にあてていました。山で生活するにはそんなにお金はかかりません」

石川「鷹狩のシーズンは11月15日から2月15日の3か月間で、だいたい10月くらいからトレーニングに入ります。僕の場合はそれに合わせて、休みをだいたい週に4~5日はとります。職場の理解と協力をいただきながら。またこの映画に、アメリカではファルコナーの活躍によって、ハヤブサを絶滅の危機から救ったというエピソードが語られます。自分もなにかできないか? とずっと考え、鷹狩の技術を利用して取り組んでいるところです」

華やかさはないものの、重要な活動のひとつ。自宅で取りの糞を調べ、鳥が健康であることを確認。(映画『Game Hawker/鷹匠』より。Ken Etzel © 2022 Patagonia, Inc.)

――鷹匠であること、鷹狩はご自身にとってどんな意味がありますか?

松原「いま71歳ですが、75歳になり80歳になり、どれだけ老いぼれてもタカと雪山を歩いていきたい。それが私の願いです。これまでの人生は喜びより悲しみの方が多かったけれど、それでもなにがあっても、どんなことがあっても、タカと生きたい。その思いを貫いてこれたことは、私にとっていい人生じゃないかと思います。そういう私がもし若者になにか伝えることがあるとすれば、自分自身の夢を追い続けてほしい。若者が追い求めるのは夢、むさぼるのは自由、それだけだと思うんです。そういう若者に、私が死ぬまでに会えるかどうかはわかりませんが、私が死んだあとでも、私以上にタカが好きで生きものが好きな人間が現れたら、クマタカを使う鷹狩の技術は復活できると思います。新しい若者に期待したいところがありますね」


映画『Game Hawker/鷹匠』

40年もの間、ハヤブサと狩りをするファルコナーのショーン・ヘイズ。カリフォルニア州リバーサイドからオーウェンズ・バレーの平原、猛禽類保護と強く結びつくアメリカの鷹狩を代表する存在へと導かれたショーンの旅路をたどるドキュメンタリー。

https://www.patagonia.jp/gamehawkerにて公開
Ken Etzel (c) 2022 Patagonia, Inc.

取材・文/浅見祥子

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