「都会のど真ん中でキャンプする!」という魅惑的なフレーズに誘われ、とあるキャンプイベントに参加してきました。その名も「アーバン キャンプ トーキョー」。
街のど真ん中にテントを張り、「泊まる」ことで、まちの魅力を再発見しよう!そんなコンセプトで開催されたこのイベントの会場となったのは、千代田区の注目スポット「アーツ千代田 3331」。元中学校舎を改装してできたこのアート施設の屋上がキャンプサイトになるとのことで、「普段はやっちゃイケないことを堂々とできる特別感」が胸を高鳴らせます。
受付開始時間になると、続々と参加者の方々が屋上に上がってきました。話を聞くと、このイベントのために関西から来た方や、「ラジオで聴いて、面白そうだから来ちゃった。」と話すご近所のマダムも。聞くとこのマダム、なんと人生初テント。説明書を片手に、四苦八苦しながらも笑顔でテントを建てていました。
今回のイベントは東日本大震災をテーマにした「3.11映画祭」との同時開催ということで、「防災」もひとつのテーマに。受付には、ポリ袋とダンボールで作る簡易水タンクセットが用意されていました。
これは阪神淡路大震災の際に考えられ、3.11の際にも活用されたもので、被災時、このように水を運搬、確保したとのこと。コンクリートの地面にテントを建てる場合、ペグが打てないので重りがあると便利ですが、今回はこのタンクを即席の重りにしました。テントをきちんと張ることができ、水の確保もできる。このような知恵をひとつ知っているだけで、もしもの時、自分だけでなく人の為にも大いに役立ちそうですね。
こちらは男3人で参加された岩崎さん(右)と大野さん親子。テントを張ったあとは会場の外にくり出し、ふだんは息子を連れて行けないガード下の居酒屋で男同士の会話を楽しんできたそうです。アーバンキャンプでは、居酒屋で呑んでくるもよし、まちを観光してくるもよし。帰りのことを考えなくていので、街の楽しみ方の自由度が増すようです。
夜も更けてくると、会場の外に出かけていたみなさんが会場に戻ってきました。焚き火台の数に限りがあることが功を奏したのか、初対面同士が火を囲み、「私たちは湯島天満宮行ってきました〜」。「これ、アメ横で買ってきたスルメ、焼いてみんなで食べましょー」という具合に会話が弾んでいました。同じ場所で一夜を明かすということが不思議な連帯感を生むのか、会場はまるで居酒屋の常連同士のような、笑いの飛び交う飲みニケーションの場に。
朝、テントの外から聞こえてきたのは小鳥のさえずり、ではなくカラスの鳴き声でした。寝ぼけ眼でテントの天井を見上げながら、一瞬、自分がいまどこにいるのか分からなくなります。「カーカー」。東京のど真ん中でキャンプしたことを思い出し、テントから這い出ました。
するとみなさんすでに朝ごはんの準備中。会場の外に出ればすぐにコンビニや喫茶店もありますが、みなさんキャンプらしい朝時間を楽しんでいました。一方で、早朝から営業していることで有名な近くの銭湯に行こうと盛り上がるグループも。開催されたのは3月の上旬。昨夜はかなり冷えたので、朝風呂はきっと最高だったでしょう。
朝になって改めて名刺交換というのも、アーバンキャンプならではの光景でした。
「今回のアーバンキャンプは『防災』がテーマではあるけれど、普通の防災キャンプみたいにはしたくなかった。普通の防災キャンプでは火のつけ方とかを教えるのだと思います。でもぼくたちは防災のプロではないから、そうではなく、テントがあれば3月でも外で十分に寝れることとか、単純に焚き火を囲んでコミュニケーションとると居心地が良い場所が生まれることを体験してほしかったんです」とは、主催メンバーの一人の中島伸さん。
もしも大震災が起きて避難生活を余儀無くされたとき、あのマダムはきっと「テントがあれば、まぁなんとかなるでしょう」と思えるようになったのかもしれません。もしかしたら、率先してテントの建て方を人に教えているかも。テントで一夜を明かす自信を持つこと。それは被災した際に限らず、大きな心の支えになるに違いありません。
今回のイベントには35組、100人の方々が参加されました。
アーバンキャンプは今後、東京はもちろん地方での開催も計画中とのこと。興味のある方はぜひ下記URLをチェックしてください!
今回のイベントの様子は、現在発売中のBE-PAL5月号でもレポートしています。
【開催概要】
第3回アーバンキャンプトーキョー
日時:2016.3/12〜13
場所:アーツ千代田 3331
【facebookページ】
https://www.facebook.com/urbancamp2015/?fref=nf
【アーバンキャンプトーキョー HP】
http://www.mosaki.com/uc/
※写真・文/加茂 光 写真(1,7,8枚目)/田中 舞