
一年でもっとも1等星を多くもつのが冬の星座たち。おおいぬ座のシリウスは全天で一番明るい星として知られていますが、星がもともと持っている明るさで見るとそうではありません。今回は「絶対等級で見る冬の星空」をご紹介しましょう。
絶対等級で見ると冬の大三角はどうなる?
私たちが夜空で見ている星の明るさは、星の大きさや表面温度、地球からの距離などによって決まります。たとえば同じ明るさを持った星が2つあった場合、地球からの距離が近い星の方が明るく見えるわけです。
全天で一番明るい星は、おおいぬ座のシリウスで、マイナス1.5等級です。一方、もっとも暗い1等星は、しし座のレグルスで1.4等級です。1等星は明るさが1.5等級未満の星なのでレグルスはギリギリです。
しかし、これはあくまで「見かけの明るさ」に過ぎません。すべての1等星を地球から同じ距離において比べてみましょう。およそ32.6光年離れた場所に置いたときの明るさを「絶対等級」と言います。ちなみに1光年とは光が1年間に進む距離で、約9兆4600億キロメートルです。
この絶対等級で見ると、おおいぬ座のシリウス、オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオンを結んでできる冬の大三角はどうなるでしょう。
シリウスは距離8.6光年と比較的近くにある星です。見かけの明るさはマイナス1.5等級の堂々ナンバー1ですが、絶対等級では1.5等級 。1等星になれるかどうかの瀬戸際です。
注)光年数、等級数の数字はすべて「およそ」の数です。以下同。
こいぬ座のプロキオンは見かけの明るさ0.37等級と、1等星としては中くらいの明るさ。距離は11光年なので、絶対等級では2.6等級になってもう1等星の仲間に入れません。
一方、オリオン座のベテルギウスは500〜600光年と、かなり遠くにあります。赤く見えるのは寿命が近い老星であることを示しています。見かけの明るさは0.42等級で、1等星としては中くらいの明るさですが、絶対等級になるとマイナス5.5等級と、明けの明星/宵の明星の金星もしのぐ明るさに。ケタ外れに大きな星なのです。
このように絶対等級で見る冬の大三角は、赤いベテルギウスが圧倒的な明るさでランランと燃えるように輝き、シリウスは平凡な1等星に見え、プロキオンは2等級なので街明かりによっては見えず……大三角の一角が欠けてしまうかもしれません。
他の冬の1等星も見てみましょう。
ふたご座のポルックスは34光年。見かけの明るさ1.1等級で、絶対等級は1.06等級とさほど変わりません。ぎょしゃ座のカペラは約40光年で見かけの明るさは0.0等級、絶対等級はマイナス0.5等級と少し明るくなります。
おうし座のアルデバランは約50光年の位置にありますが、0.8等級からマイナス0.7等級と若干明るくなります。
冬の空でいちばん目立つのはオリオンのベルト
オリオン座の他の星も絶対等級で見てみましょう。

まず、もう一つの1等星リゲル。見かけの明るさは0.3等級と、全天で7番目の明るさですが、距離は約700光年。かなり遠くにあり、絶対等級にするとマイナス7等級! ベテルギウスをはるかに越える圧倒的な明るさを誇ります。
次に三ツ星。オリオンの要というべきベルトの位置に、ほぼ同じ色、同じ明るさの2等星が3つ、ほぼ一直線に並びます。その見事さに、同時期に生まれた星のように思われるかもしれませんが、3つの星はたまたま同じ方向にあるだけでバラバラに位置しています。
注目は真ん中の星アルニラムです。青白く光る見かけの明るさは1.6等級ですが、距離はなんと2,000光年の遙か彼方。絶対等級はリゲルを越えるマイナス7.2等級です。
距離についてはデータのよって多少のバラツキがありますが、アルニラムやリゲルは全天すべての星の中でも有数の明るさをもつ星だと考えられています。
次に三ツ星の下、オリオンのベルトからぶら下がる剣の位置にあるのが小三ツ星です。肉眼ではボヤボヤッとして見えますが、その正体はオリオン大星雲です。新しい星が次々と生まれている「星のゆりかご」のような星雲です。大きな望遠鏡で見ると、青白い若い星がガスに包まれているのがわかります。距離は約1,500光年ですから、絶対等級にすると、おそらく1等級になるでしょう。
というわけで、絶対等級でオリオン座を見ると、マイナス5等級のベテルギウス、マイナス7等級のリゲル、ベルトではマイナス7.2等級のアルニラム、その直下で1等級のオリオン大星雲が輝きます。ちょっと想像が追いつかないくらい豪華絢爛。ただし現在の鼓型の均整の取れた姿は、ちょっと崩れてしまうかもしれません。

最後に、太陽は絶対等級で見ると何等級? 32.6光年離れた場所から太陽を見ると4.8等級で5等星になります。街明かりのない暗い夜空で初めて見られる程度の明るさです。天の川銀河の中では絶対等級が1等より明るい星はごく少数派で、大部分の恒星は太陽と同程度か、さらに暗い絶対等級でしかありません。遠く離れたどこかの星から見る太陽が何等星に見えるのか、想像してみるのも楽しそうです。
構成/佐藤恵菜








