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BOOK 01 サケの未来は一体どうなる? 熱い専門家の切なる訴え
『サケマス物語── 魚の放流を問いなおす』
森田健太郎著 筑摩書房 ¥1,012

サケは川で生まれて海へと下り、数年後に再び生まれた川へ戻ってくる──。
サケの生活史は誰もが知りうるところ。では、はるばる戻ってきたサケはどうなるのか。生まれた川に遡上した多くのサケは自然産卵するのではなく、梁(やな)などで捕獲され人の手によって腹が裂かれて人工授精が行なわれる。
日本に遡上するサケのほとんどは、人工孵化放流事業により産まれた子孫のいわば半人工放流魚。長年行なわれてきたこの事業が食卓に並ぶ日本のサケの背景にはある。
そうした放流魚が人の手を介しない野生魚と混ざるとどんな影響があるのか。本書はサケ科魚類の国内外における状
況や事例を示し表題のとおり、放流の意義を問うものだ。放流といえば、子供たちが稚魚を放流する様子が微笑ましいニュースとしてしばしば流される。
しかし、科学的に見てもこうした放流は生物多様性の保全には役立っておらず、有害なことも少なくない「。放流=魚
が増える、善いこと」が人々の精神に深く根付いていると著者は分析する。著者は魚類生態学の専門家だ。サケ科魚類が置かれている現状と世間とのギャップに苛まれつつも、最適解を模索する姿勢に心を掴まれた。
サケ愛あふれるひとりの川好きの切実な訴えでもある。
BOOK 02 ゲテモノは昔話、旨い昆虫を探すグルメ旅
『世界の虫を食べてみたい 幻の「ミツツボアリ」と「素数ゼミ」を追い求めて』
吉田 誠著 緑書房 ¥2,970

大学の農学部で学んでいた著者が卒業論文のテーマに選んだのは昆虫食。論文のために向かったタイでコオロギ養殖農家にたどり着く。カンボジアではタランチュラ(昆虫ではないが)など現地の食文化を探求しながら徐々に昆虫食の沼にハマっていく著者。
卒業後もオーストラリアで甘いミツツボアリ、そして、221年振りに大発生する素数ゼミ(年周期と 年周期のセミが邂逅した)を求めてアメリカへ。会社員として勤務し休日を全て昆虫食に捧げる著者の旅は痛快だ。中でもペルーのサゴワーム(大型ゾウムシの幼虫)は、ジューシーで旨そうだった。
味わいだけでなく、昆虫の栄養価や薬効といった観点や輸入量の考察も興味深い。
BOOK 03 使えば問題解決にも 清々しい活用術
『畑で使える有機資材 とことん活用術 竹、草、籾殻、米ぬか、 落ち葉ほか』
和田義弥著 山と溪谷社 ¥2,420

竹や籾殻(もみがら)などはかつてさまざまな用途に活用されてきた。成長が速く時にやっかいな竹林は有効に使える材料でもあり、籾殻はイネを脱穀したときに生じる副産物。うまく入手できればリーズナブルで便利な代物だ。
本書はそうした有機資材の活用術を細かに紹介する。土作りや炭作りまで、話題の中心は畑作業になってくるが、資材の特徴や活用方法が詳細に示されているので応用できそうなアイデアが満載だ。適宜新調でき、いずれ土に還すことができる点も清々しく感じられる。
BOOK 04 簡単に諦めるなッ 生き抜く強いチカラ!
『植物のすごい繁殖戦略 花のしくみはこんなに違う!』
保谷彰彦著 河出書房新社 ¥2,090

花には雄しべ、雌しべ、花弁がある、という仕組みは遠い昔に学校の授業で習った記憶がある。自ら動けない花たちは、虫や鳥、風など介して子孫を残す。だが、外部を頼れなければ自己完結(自殖)さらには受精すら必要としないクローンで次世代を と、あの手この手で子孫を残そうとしていることが本書で詳らかになる。
蜜がないのにあるように見せ虫を誘う種も。植物たちの華麗なる戦略、したた強かさに頭を垂れる。物事を簡単に諦めてはいけないなぁ〜などと自らを省みた。
BOOK 05 キャンプ場造成実録! 失敗しても取り戻せる
『2000坪の荒れ地をひとりで開拓してキャンプ場をつくったオーナー七転八倒DIY奮闘記』
中山茂大著 山と溪谷社 ¥1,540

実母が所有していた荒れた土地をキャンプ場にしようと思いついた著者。鬱蒼とした手強い竹林の開拓に始まり、ウッドデッキやトイレ棟などを徐々に構築していく。基本的にひとりでやる! その一部始終を記録した本書は、なににどれくらいの金額がかかったかのかも明瞭にし、キャンプ場作りの指南書ともいえる。
2022年の開業後も水道管凍結や汚水問題……さまざまな問題にぶち当たる。だが、「失敗の9割はリカバリーできる」と七転八起。いや、七転八倒? 愉快な記録だ。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2026年3月号より、一部加筆)







