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    2025.09.14

    今なら都市公園でも会える!食欲の秋まっさかりの渡り鳥、ツツドリとエゾビタキを探そう

    今なら都市公園でも会える!食欲の秋まっさかりの渡り鳥、ツツドリとエゾビタキを探そう
    まだまだ残暑が続いていますが、鳥たちの中には渡りを始めた種もいます。実りの季節、私たち人間はといえば買い物に行くたびに味覚の秋を意識してしまいますが、移動を始めた鳥たちもスタミナ補給に余念がありません。彼らが渡りの途中で身近な公園に立ち寄ってくれる秋は、出会いのチャンス。今回はそんな鳥たちの中からツツドリとエゾビタキを紹介しましょう。

    9月の桜の葉にはツツドリのごちそう、毛虫がいっぱい

    まず、この時期の桜並木に注目してみましょう。この時期のソメイヨシノは「葉桜」ですが、川沿いの桜並木や比較的大きな公園、緑地の成長したソメイヨシノに目を凝らしてみてください。

    葉が毛虫に喰われている部分があれば、そこにはモンクロシャチホコという蛾の幼虫がたくさん見つかるはず。毛虫を象徴するような外見ですが、このやや大きな毛虫をそれはうまそうにひと飲みしてしまうのがカッコウの仲間のツツドリです。渡りの区分では「夏鳥」に該当します。

    ツツドリの第一印象はキジバトや猛禽類のツミに似ているが、枝に止まったとき身体が少し長めに見えるので比較的容易に区別できる。キジバトと違い、警戒心が強い鳥だ。

    ソメイヨシノやヤマザクラなどの桜の木を双眼鏡で見ると、赤黒い毛虫がいるのがすぐに分かります。8月~9月に大量に発生するモンクロシャチホコの幼虫の特徴はこの「毛」です。

    実はこの毛があることでモンクロシャチホコはヒヨドリやムクドリなどに捕食されにくいとされています。が、ツツドリはむしろ好んで食べているようです。うまく「食べ分け」ができているのですね。

    ツツドリは大きな毛虫でもあっという間に飲み込んでしまう。いっぽうで、小型の鳥はこの長い「毛」を苦手としている。
    ヤマザクラの葉に群がるモンクロシャチホコの幼虫。長い毛が特徴。このように集まっているとなかなかインパクトのある見た目だが、幼虫、成虫とも毒は持たず害虫ではない。

    ツツドリは托卵で知られる杜鵑(とけん)類の仲間

    ツツドリはカッコウやホトトギスの仲間で杜鵑(とけん)類とも呼ばれます。「鵑」はホトトギスを指す漢字。この杜鵑類は托卵をする鳥として知られています。

    托卵とは文字通り自分の卵や孵化した雛の世話の一切を別の鳥に託すこと。春に東南アジアなどから渡来し他の鳥の巣に卵を産み落として子育てを任せ、さっさと飛び去ってしまうのです。なので、この時期に見られるツツドリは幼鳥が多いことが分かっています。ちなみにツツドリが托卵する相手は主にセンダイムシクイです。

    ツツドリが托卵相手とするセンダイムシクイ。同じ杜鵑類でもカッコウはノビタキなど、ホトトギスはウグイスなどを托卵の相手に選ぶことが分かっている。

    この杜鵑3種の外見はとても似ています。見分けるのはウグイスの仲間のムシクイ類などと並んで多くの野鳥ファンにとってかなりの難題ですが、繁殖期であればそのさえずりの声で簡単に識別できます。

    ツツドリのさえずりは、夏に林道を歩いていると聞こえる「ポポッ、ポポッ、ポポッ……」と、紙筒や竹筒の口を手で叩いた時の音に似た声。これが名前の由来になっています。

    ホトトギスは「テッペンカケタカ、テッペンカケタカ」。よく「トッキョキョカキョク……」とする図鑑もありますが、私にはそんな風に聞こえたことはありません。そしてカッコウ、これは説明不要ですね。

    この2点の写真もツツドリだが、茶褐色が特徴的な「赤色型」と呼ばれるメスである。

    話は逸れますが、この杜鵑3種でいちばん知られているのはホトトギスでしょう。東京西部の多摩ニュータウンでも初夏の晩はその特徴的なさえずりがよく聞こえます。約1200年前に編まれた『万葉集』にはホトトギスが登場する和歌が150首以上あります。古くから日本人に親しまれた野鳥と言えます。

    キジバトのサイズ感を「物差し」にツツドリを探そう

    でも残念なことに、この季節はほとんどの野鳥はさえずらないのです。多くの鳥は上記のような特徴的な鳴き声で識別ができますが、それが叶わない時期は身体の大きさや外見、目撃した場所で判断するしかありません。ツツドリの体長は約32cm。これはキジバトとほぼ同じです。よく似ているホトトギスの体長は、ひと回り小さい約27cmです。

    野鳥を見分けるために最も基本的なポイントは体長とか身体全体のボリュームや印象。それを把握するためまず、双眼鏡や目視でよく観察すること。ツツドリの場合は基準となるキジバトの大きさを普段から把握できているかどうかが重要になってきます。

    物差し鳥という言葉を聞いたことがあると思います。鳥の図鑑の冒頭にキジバトやスズメ、トビなどのシルエットが、「物差し」として掲載されています。この「物差し」の大きさを頭の中に固定できていると、種の同定(特定)がしやすくなるのです。

    キジバトとツツドリの違いは明らかなのだが、佇まいや身体のサイズ感は似ている気がする。

    この杜鵑類3種はそれぞれ微細な特徴があるにはあるのですが、それ(写真)を撮っておいて後で図鑑などで確認する方法に頼ると判断に迷うことになります。野鳥に限らず、生き物の観察は出会った時の印象をいかに鮮明、かつ客観的に記憶に留めておくかが肝だと思います。

    そういう話をしておきながらお恥ずかしいのですが、筆者はまだホトトギスとカッコウをしっかり撮影できていません。この2種については回をあらためて紹介することにしましょう。

    エゾビタキが教えてくれる公園の秋の実り

    黒く熟したミズキの実を見つめるエゾビタキ。実は全て上向きに付き、野鳥が食べやすい状態だ。これも植物としての生存戦略の形と考えられる。

    次に紹介するのは、毎年9月~10月中旬にかけて出会えるエゾビタキという目のクリっとした小さな野鳥です。ロシアの千島列島からカムチャツカ半島などで繁殖し、越冬地の東南アジアなどに向かう途中に日本各地の公園などに立ち寄る可愛い野鳥です。

    名前に「エゾ(蝦夷)」とあるのは、繁殖地のサハリンや千島列島の一部がかつて蝦夷地と呼ばれていたためなのか、あるいは本州以南から見て蝦夷の方から渡来するヒタキ、そんな意味が込められているのか、はっきりしたことは分かりません。

    現在、国内での繁殖は確認されておらず渡りの区分では「旅鳥」に該当します。なお、東南アジアから繁殖地のロシアへ渡る時期(春)に観察されることはほとんどありません。

    ミズキに長くとどまることなく、安全な場所とミズキを頻繁に往復して採餌するエゾビタキ。実は渡り鳥だけでなく、ヒヨドリやメジロなどの留鳥も大好物。

    野鳥のレストラン、ミズキは赤い珊瑚のような果柄(かへい)が目印

    9月から10月にかけてエゾビタキがやってくるのは、主に公園のミズキの木。ミズキは公園や緑地に幅広く植栽されている樹木で、秋になると枝先にたわわに実をつけます。目印は実をつけている特徴的な赤い果柄(かへい・実を枝に繋いでいる部分)。遠目にはちょうど赤い珊瑚の花が咲いているように見えるのですぐに分かります。

    赤い珊瑚のように見えるミズキの果柄(かへい)。鳥たちにとって目印になっている。

    公園でミズキを見つけたら、野鳥が訪れるのを待ってみましょう。数で多いのはメジロですが、そのメジロよりやや大きく、飛翔しながら巧みにミズキの枝先を飛び回る鳥が現れたら、おそらくそれはエゾビタキです。

    黒い実をついばむエゾビタキ。ミズキにとって野鳥たちは種子を遠くに運んでくれる共生者でもある。

    まだ青い(緑色)実ではなく黒く熟した実を狙い、エゾビタキが近くの木からサッと飛んできて一粒ついばみ、飛び去ります。中にはじっと止まってあたりを窺いながら採餌するものもいます。エゾビタキは群れでいることが多いので、複数羽が同時にワーっと飛来することもあり、そのひとときは途端に賑やかになります。

    飛翔するアキアカネを捕らえたエゾビタキ。ヒタキの仲間の餌は本来は昆虫が主体である。

    キビタキにも会えるかも

    秋のミズキのバードウォッチングではお楽しみがまだあります。ミズキの実にはエゾビタキ以外の渡り鳥もやって来るのです。期待できるのはキビタキやオオルリなど。

    特にキビタキのオスは目立つのですが、それを知ってか知らずかエゾビタキのようによく見えるところにはなかなか止まってくれません。でも、あの黄色と黒が見えた瞬間は興奮してしまいます。

    ミズキの葉の裏側からひょっこり現れたキビタキのオス。
    こちらはキビタキのメス。ミズキの実は渡り途中の野鳥たちの重要な栄養源になっている。

    いかがだったでしょうか。ソメイヨシノやミズキなど、渡り途中の野鳥と遭遇する可能性のある場所が身近にあることがお分かりいただけたと思います。ミズキ以外にもカラスザンショウやイヌザンショウの実にも野鳥が集まります。

    渡り途中の野鳥たちは同じ個体がずっと滞在するのではなく、日々入れ替わっていることも想像できます。つまり「出遭い」のチャンスは何度かあると言えるのです。そんな場所を見つけたら、しばらく通ってみましょう。そこは毎年のあなたのお楽しみスポットにもなるかもしれません。

    中村雅和さん

    野鳥好き編集者

    幼少期から生き物や鉄道に親しむ。プロラボ、住宅地図会社の営業マン、編集プロダクション、バス運転士、自然保護団体職員などを経てフリーの編集者に。現在はライターの仕事をしながら、バードウォッチング専門店 店長として勤務。

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