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WIND from ONTARIO~森の海、水の島~
#16 遙かトナカイの森へ
by Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。

オンタリオ州だけでも、日本の約2.8倍あり、とてつもなく広い。西の州境にWoodland Caribou州立公園という、森林トナカイの名を冠した自然保護区がある。東側のトロントからの距離、なんと2000㎞超!カリブーの亜種、森暮らしのトナカイに逢いたくて、愛車に機材と道具を詰め込んで走破した。
最寄りの町Red Lakeで情報収集。アウトフィッターのスタッフに森林トナカイに逢いに来たと告げると、彼もまだ見たことがなく、「ゴーストと呼ばれる存在で、遭遇するのは難しいよ」といわれ、4日しかない焦りとワクワクが入り混じる。
借りられたのは積載スペースの少ないカヤックで、最小限の道具や食料を積んで、湖上へ。
オンタリオ州南東部の植生とは違う、まったくの手つかずの原野は針葉樹で構成され、極北の入り口といった雰囲気が漂う。
雨に降られ、倒木が朽ち苔むす開けた場所を見つけて夜営。翌朝、雨雲は過ぎ、贈り物のような光景が眼前に広がっていた。
3日目の午後、荷物満載のカヤックで移動中……。後方で、バシャッと水の音。カヤックを反転させると、湖を泳いで渡ろうとしている森林トナカイだっ‼
心を震わせる瞬間はいつも唐突にやってくる。カヤックの上で感嘆の声を発しながら、夢中でシャッターを切っていた……。

鋭い歯を持つノーザン・パイクがよく釣れた。イカついけれど上質なタンパク質は確保。

誰にも出会わなかった4日間、旅を締めくくるのはトワイライトの中で揺れる焚き火。
動画で見られます!

(BE-PAL 2025年10月号より)