

気象学者 坪木和久さん
北海道大学理学部卒。名古屋大学宇宙地球環境研究所教授。2021年より横浜国立大学台風科学技術研究センター副センター長も務める。台風のメカニズム解明のために航空機で実際に台風へ飛び込む直接観測を行なっている。
今、気候大変動の時代に突入している!?
本書にも出てくる大気の河とは、大気中にある水蒸気の路のこと。なんとアマゾン川2〜3本分に相当する水蒸気が川のように流れており、日単位で形成され消滅する。大気の河の上陸地点には、しばしば線状降水帯が発生するという。直接観測などで台風についてはどの程度のことがわかってきたのだろう?
「台風は多様であるということ。そして、台風のことがわかっていないんだということがわかりました。台風は小宇宙だと思う研究者は多く、台風学と呼べるくらいあらゆる側面があります。構造、メカニズム、時間発展、温暖化との関わり、付随的な現象。台風を研究することで台風以外の気象研究にも応用できます。大気の河の直接観測はその一例ですね。台風はその生涯のほとんどを海上で過ごすので、大部分は観測できていないんです」
未だ謎の多い台風だが温暖化で発生数は減少すると予測されている。一方で暖かい海のエネルギーで巨大化する恐れもある。これは人間がもたらした変化。
「宇宙から見ると地球は何も変わっていないんです。太陽が照らすエネルギー、地球から出ていくエネルギー、ほぼ同じ。ただ地球の表面近くにエネルギーが集中しやすくなっている。温暖化とはそういうことなんです」
これが台風の眼だ!!

2017年10月に発生した超大型の台風21号(ラン)を直接観測。高度43,000ftでジェット機のキャビンから見たスーパー台風*の眼内部だ。"台風の眼"がはっきりとわかる。
『天気のからくり』
坪木和久著
新潮社
¥1,815

気象の仕掛けを解く55篇のエッセイ。台風、集中豪雨、竜巻など様々な気象現象を取り上げる。古典や浮世絵の天気も解き明す。
*米国の合同台風警報センターが使用している台風の強度階級のうちの最強クラスで、最大地上風速が毎秒67m以上の台風を指す。
※構成・撮影/須藤ナオミ
(BE-PAL 2025年10月号より)