佐賀・唐津のゲストハウスから届く「わくわく小包」。贈り物にも最適!

2020.07.29

私が書きました!
イラストエッセイスト
松鳥むう
離島とゲストハウスと滋賀県内の民俗行事をめぐる旅がライフワーク。訪れた日本の島は107島。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島かいてーばん』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島かいてーばん』(スタンダーズ)、『ちょこ旅瀬戸内』(アスペクト)、『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)、『あちこち島ごはん』(芳文社)、『おばあちゃんとわたし』(方丈社)、『島好き最後の聖地 トカラ列島 秘境さんぽ』(西日本出版社)等。最新刊は初監修本『初めてのひとり旅』(エイ出版社)。http://muu-m.com/

"唐津ゲストハウス鳩麦荘"のムギちゃんから松鳥に届いた松鳥用の"わくわく小包"の品々♪ 佐賀やお隣りは長崎などのご当地モノたくさん!ムギちゃん手作りのレモンシロップまで♪

"わくわく小包"のはじまりは往復葉書から

ポストに一枚の往復葉書が届いた。往復葉書をもらうなんて、何年ぶりだろう。送り主は、佐賀県唐津市にある"唐津ゲストハウス 鳩麦荘"の宿主、ムギちゃんだ。

今春のコロナ禍、各地のゲストハウスは営業自粛をするところが相次いだ。ドミトリーを主とする宿形態である鳩麦荘も例に漏れず。そんな中、ムギちゃんがやりはじめた取り組みがある。"わくわく小包"だ。

1500円、3000円、5000円、8000円、10000円の5種類がある。さらに、連絡の取り方にも2コース用意されている。うさぎコースと亀コース。うさぎはメールで、亀は往復葉書でやり取りをするという。「往復葉書を使うコースを作るあたりが、鳩麦荘さんらしいなぁ♪」と、私は迷わず亀コースをポチッとした。そうして送られて来たのが冒頭の往復葉書だ。

この"わくわく小包"。届くまで中身がわからず、その名の通り、待っている間ずっと、わくわくドキドキが続く。なぜなら、宿側がすでに用意した物が送られてくる形ではないからだ。

まず、メールや往復葉書で、注文した人のコトを知るために、ムギちゃんから個別の質問がいくつか届く。その答えを読んで、ムギちゃんがその人のためだけに選んだ品物たちが半月後くらいに届くという小包なのだ。

ムギちゃんからの質問が書かれた往復葉書

亀スピードでも、1対1のやり取りを大切にしたい

「もともとは、新型コロナウィルスの感染拡大と共に、宿泊キャンセルになったゲストさん向けにはじめたんですよ」。ほわわんっとした空気をまといながら、にっこり話しはじめるムギちゃん。

「ゲストハウス業界で、オンライン宿泊がはじまり出した頃"鳩麦荘もオンライン宿泊すればいいのに"って言われるコトもあったんです。でも、私は、スピード感を求められる世界とは違うトコロで鳩麦荘というゲストハウス をしているのに、オンラインの世界を宿に持ち込むのはどうなんだろうって感じて。それに、オンライン宿泊でよく使われているzoomは、宿主対大勢のお客さんになってしまいます。私は1対1のやり取りを、今までと同じく大事にしたいと思ったんです」

けれども、リアルで会うコトが憚られる中、お客さんとは繋がりたいという想いも常にあった。そんな時、常連さんと話している中で、ふと思い出したのが、北海道のとある書店だった。その書店がやっている"1万円であなたのための選書をする"という企画に申し込んだ際、お店の人とのやり取りが印象的でおもしろかったのだそう。

「書店の店主さんから注文者に対して、家族のコトとか質問が来るんです。それに答えてるうちに、改めて、自分自身のコトや家族のコトを知れて、とても新鮮だったんです」。それを、鳩麦荘バージョンでやってみたらどうだろうと常連さんたちと話が膨らんでいった。
「常連さんと一緒に育てた企画でもあるんです、この"わくわく小包"は♪」

宿の公式サイトに"わくわく小包"ページを作った当初は常連さんからの注文が多かったコトもあり、宿にあるお気に入りの食器や、自分のお勧めの本等を送っていた。とある東京在住のリピーターさんには蚊帳を送ったらしい(笑)。

そうこうしているうちに、"わくわく小包"の取り組みがメディアに取り上げられ、鳩麦荘に宿泊したコトがなく、会ったコトもない人たちからの注文が来るようになった。それからは、なるべく唐津や佐賀県の地元のモノを探して送るようになった。

「一人一人真摯に向かい合いたいから、選ぶのには、すごく時間がかかるんです。一度選んでも"これで、本当に良かったかな?"と、2〜3日間悩んで考え直すコトも多いんです」

なんと同じ唐津市内の人からも注文が来るという。中でも意外に需要があるのは、プレゼント用としての注文。その場合は、注文した人に、その人が贈りたいと思っている人についての質問する。

私からムギちゃんへ。質問のお返事

贈り物としての"わくわく小包"

一人の人のコトを一生懸命考えるコトの想像以上の大変さに、一時期、"わくわく小包"を辞めようかなと考えたコトもある。けれど、そんな折、こんな出来事があった。

お見合いで結婚した年配ご夫妻からの注文だ。聞けば、彼らの若かりし日の初デート地がここ唐津。デート中、当時の彼女(つまり、今の奥さん)が唐津焼きのお猪口を買い、当時の彼氏(今の旦那さん)に渡したそう。そのお猪口をもらったコトがきっかけで、旦那さんはプロポーズしようと決意したのだという。そのエピソードに感動したムギちゃんは、迷わず、彼らに唐津焼きの新しいお猪口を買って送った。

また、離婚経験のある男性は、今は離れて暮らす中学生の娘に"わくわく小包"を贈りたいと。娘さんは中学の時は不登校だったけれど、今は自分にあった高校に通っているらしい。でも、父親としては今も心配で…と、いう話になったりも。

プレゼントを注文した人が贈る人のコトを改めて考えるきっかけにもなっている"わくわく小包"。ムギちゃん予想を遥かに越えて、はたまた時間軸も優に越え、様々な繋がりをもたらしている。

質問に関したモノを選ぶ時もあれば、まったく関係ないモノを選ぶコトも。「その人自身を知りたくて質問してるんです。だからこそ、その人に対して誠実でなくてはって思うんです。ルーティン業務のように熟す感じにはなりたくないなと」。だから、1人に対してとても時間をかける。今は、注文から発送までに半月ほどかかるという。「"わくわく小包"は、急ぐモノじゃなくて、ゆっくりやるのがいいなって思うんです。私にとっても、お客さんにとっても」

たしかに、私も、質問のお返事を返信用葉書で送ってから、時折「あの質問の答えから何が届くんやろ? ムギちゃんは、私をどうとらえはるんやろ?」と、思い出しては、ふふふっと笑みが溢れる時間があった。その時間を経るからこそ、届いた"わくわく小包"を開けた瞬間は、まるで箱の中から打ち上げ花火が飛び出して来たかのよう!驚きと嬉しいで「うわー!」と、思わず叫んでしまった。何度眺めても楽しくて仕方ない私だけのために選ばれた品々。

「この品物は、どうして選んでくれはったんやろ?」と、今度はこちらがムギちゃんのコトを考える時間へと変わっていく。

レトロ銭湯・恵びす湯と共にある鳩麦荘

「近所の恵びす湯が廃業したら、うち(鳩麦荘)も辞めるんです。ゲストハウスをずっと続けようと思ってはじめたわけじゃないんですよ、実は(笑)」

相変わらず、ほわわんとした空気を纏いやわらかな笑顔で、意外な内容を話し出すムギちゃん。コロコロと飛び出す予想を斜め方向に良い意味で外した彼女の言葉は、まるで、小さな子どもが飛ばすシャボン玉のように、次から次へと溢れ出す。

「私、銭湯が大好きなんです。だから、佐賀で唯一残ってる銭湯"恵びす湯"のために何かできないかと考えた結果、ゲストハウスをやろうって決めたんです」

その想いで、けっこうな大手の会社を辞めたという。どこまでも深い恵びす湯愛!

©ムギ

自身も旅好きなムギちゃん。10代の頃は海外を旅するコトが多かった。けれど、就職とともに時間がなくなり国内旅をはじめる。毎回、宿を選ぶ際に大切にしているポイントは、近くに昔ながらの銭湯と赤提灯の居酒屋があるかどうかだ。地元の人たちとの距離が近く、その土地の様子を感じられる場所だから。

コロナ禍で宿を営業自粛したのも恵びす湯が休業したから。そして、宿の営業を再開させたのも「恵びす湯さんが再開したから!」。常に恵びす湯とともにある鳩麦荘。様々なできごとを経て、はじめた頃の気もちからどうしても遠のいてしまう経営者も多い中、清々しいほどに初心貫徹なムギちゃん。ちなみに、ムギちゃんは今回の営業自粛中に書店でも働きはじめた。なので、宿も週1日休みを設けるコトに。その休みも大好きな恵びす湯の休みと同じ日曜日だ。

恵びす湯はご近所の常連さんがほとんど。その数も減って来ているという。それでも入浴料は昔と変わらず大人280円のままという安さ(洗髪料は別途50円)。話を聞いている私ですら心配になる値段だ。各地の銭湯は年々値上がりし、東京の銭湯に至っては現在、大人470円という世の中なのに。

「鳩麦荘に泊まったお客さんが、恵びす湯を利用してくれたら、少しでも恵びす湯のお客さんを増やせるんじゃないかと思って」と、ムギちゃん。恵びす湯の番台の女将さんは齢70代。息子さんが後を継がれるかどうかはわからない。

JR唐津駅から徒歩約5分。住宅街の急坂の途中に立つ小さな古民家が"唐津ゲストハウス鳩麦荘"。「ゲストハウスだけで食べて行く!」ではなく「恵びす湯とともにありたい」という想いは、宿の空間にも染み渡っている。やる気に満ち満ちているわけでもなく、ほどよい"ゆるさ"が心地いい。ぐうたらとしてみたり、ムギちゃんやゲストの人たちと共有スペースでごはんを一緒したり呑んだり話したり。たまに、ムギちゃんのお母さんもやってくる。カエルの親はカエルである。お母さんもこれまた、ほわわんとした空気を纏って現れる。「娘にゲストハウスの楽しさを教えてもらって、本当に嬉しい♪」と。あまりにもゲストの中に溶け込みすぎてるので、初めて会った時はゲストさんかと間違ったほどだ。

鳩麦荘の共有スペース。夜も朝も、みんなでワイワイごろごろ。まるで家族のようはひとときを過ごせる場所

鳩麦荘の受付スペース。左手の棚には、ムギちゃんオススメの本やリトルプレス、民芸品等が並ぶ

十人十色の人生が詰まった小包と宿

「"わくわく小包"は、リアルに出会ってなくても様々な人生に出会えるんですよ」

今後も、要望がある限り、"わくわく小包"は続けていくというムギちゃん。

ゲストハウスは、老若男女関わらず、様々な人生や価値観に出会える場所。それは、リアルであろうと、オンラインや往復葉書であろうと、方法はなんであれ、変わるコトはないのかもしれない。

鳩麦荘に泊まったコトがないあなたも"わくわく小包"を頼んでみませんか? わくわくドキドキの数日間を、あなたのおうちでも、ぜひ!

ムギちゃんとムギちゃんママ。親子というより、ちょっと歳の離れた姉妹のよう

【データ】
唐津ゲストハウス鳩麦荘
住所:佐賀県唐津市5-11
TEL:0955-80-0597
宿泊料金:素泊まり:3000円~
わくわく小包:1500円~
アクセス:JR唐津駅から徒歩約5分
http://sagaguesthouse.com/index.html

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