憧れの茅葺き屋根の家に泊まる。日本の原風景で時を忘れる旅へ | 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2021.05.29

    憧れの茅葺き屋根の家に泊まる。日本の原風景で時を忘れる旅へ

    自然に囲まれた田園風景を目にすると、ノスタルジックな感情に包まれ、心が安らぐものです。ゆったりとした時間が流れる風景に溶け込む古民家には、茅葺き(かやぶき)の屋根が似合います。日本の原風景ともいえる、茅葺き屋根を持つ家の魅力に触れてみましょう。

    茅葺き屋根の特徴と魅力

    地方での暮らしを経験したことがない現代人でも、古民家を目にすると、どこか懐かしい気持ちが湧くものです。

    そして、山間部にたたずむ木造家屋から多くの人がまずイメージするものが、茅葺きの屋根でしょう。

    かつての日本の暮らしを支えた茅葺き屋根には、どのような特徴があるのでしょうか。その魅力を探ります。

    現代ではほとんど見られなくなった

    古い歴史を持つ茅葺き屋根ですが、その起源は縄文時代にまでさかのぼります。この時期の竪穴式(たてあなしき)住居に、茅葺き屋根が使われていたのです。

    時代が変わり、江戸時代になると、朝鮮半島を経由してさまざまな文化が伝えられるようになりました。その中の一つに、瓦屋根があります。城や寺院の屋根には、次第に瓦が用いられるようになっていきます。

    一方で、一般の農家は、瓦屋根を葺くことが禁止されていました。そのため、明治時代に瓦が解禁されるまで、茅葺き屋根が主流だったのです。

    茅葺き屋根を維持するには、非常に手間がかかります。江戸時代は、村人たちが持ち回りで補修をしていました。

    ところが明治時代になり、地域住民の関係性に変化が生じたことにより、相互協力による家屋の補修が難しくなりました。その結果、耐久性も利便性も高い瓦が急速に普及し、茅葺き屋根は衰退の道をたどることとなったのです。

    職人技と自然の力が感じられる

    茅葺き屋根には、長い歴史に裏打ちされた、快適な住環境につながるとても優れた特性があります。その主な利点は、次の通りです。

    ● 吸音性
    ● 断熱性
    ● 保温性
    ● 通気性

    茅葺き屋根の家に足を踏み入れると、室内がとても静かであることに気づくでしょう。茅の有する吸音性によって雑音が遮られ、静寂さを生むのです。

    高い断熱性も魅力です。豪雪に見舞われる東北地方でも、厳しい寒さから住民を守ってきました。

    さらに、優れた通気性も備えているため、夏の暑さの中でも快適に過ごせます。冬は暖かく夏は涼しい環境をもたらしてくれるのです。

    現代のように、進化した科学技術に頼ることなく、素晴らしい家造りが実践されてきました。自然の力と、それを生かした職人の高度な技術には脱帽するばかりです。

    材料や構造は?

    『茅』とは、イネ科の多年草を用いた屋根材の総称です。主に、ススキ・ヨシ・シマガヤ・カルカヤ・カリヤス・チガヤといった植物を材料としています。

    『葺(ふ)く』という言葉は、ものを覆うときに使われます。つまり、茅葺き屋根とは、「茅で天井を覆って屋根にした」ということを指しているのです。

    茅を葺くにあたり、まず丸太で小屋組をします。屋中(やなか)と称する横木を、竹で設置していくのです。

    できた小屋組に、瓦のように、軒先から茅を葺いていきます。押鉾(おしほこ)と呼ばれる竹を使って、隙間なく並べる軒付けという作業を行います。

    その後、並べた茅を竹で押さえる平葺きをします。そして、屋根の天辺まで茅を葺いたら、防水のために杉皮で蓋をして、茅葺き屋根の完成です。

    美しい風景に癒されよう

    農村地帯や山間部で生まれ育った人はもちろん、都市部で生活してきた人にとっても、茅葺き屋根の家が並ぶ風景を眺めると、どこか懐かしい気持ちになるでしょう。

    美しい景色は、人々の心を癒す力を備えています。心安らぐ景観を望める、おすすめスポットを厳選して紹介します。

    大内宿

    『大内宿』は、福島県南会津郡下郷町に位置するエリアです。現在は大内宿という地名はなく、江戸時代に会津西街道の宿場として栄えた地域の呼称が、今に伝わっています。

    人里離れた山間部に、今もなお30軒を超える茅葺き屋根の古民家が並んでいます。時代を越え、江戸時代の暮らしを思わせる貴重な景観は、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。

    奥に位置する丘には展望台があり、ここから見下ろす景色は絶景です。まるで江戸時代の人々が息づいているかのような風景が広がっています。

    白川郷

    岐阜県飛騨地方にある『白川郷』は、昔ながらの合掌造り家屋が数多く残る地域です。1995年12月、日本では6件目となるユネスコの世界遺産に登録されました。

    飛騨は、とても雪深い地域として知られています。厳しい寒さと、それによってもたらされる豪雪に耐える茅葺き屋根の家が並ぶ景色からは、そこに暮らす人々の生活の息吹が感じられるようです。

    しかし、春になれば桜が美しく咲き誇り、秋には紅葉が広がります。四季それぞれの美しい姿を見せてくれことも、白川郷の魅力です。

    美山茅葺きの里

    京都府のほぼ中央にあり、京都市の北部に位置する美山町も、茅葺き屋根の家が建ち並ぶ美しい景色が堪能できる地域です。

    同町の知井地区には、現在も39軒もの茅葺き民家が残っていて、『美山茅葺きの里』として整備・保存されています。

    茅葺き屋根に守られた古民家は、それぞれ築150~200年という歴史を誇る建物です。貴重な古民家が並ぶ集落は、1993年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。

    五箇山

    富山県の南端にあり、岐阜県に隣接する『五箇山』は、40にも及ぶ小集落の総称です。その内、相倉と菅沼の二つの村が、岐阜の白川郷とともにユネスコの世界遺産として登録されました。

    中でも相倉には、23棟もの茅葺き屋根を持った合掌造りの家屋が現存しています。穏やかさをたたえつつ、幻想的な雰囲気が感じられる景観は必見です。

    かつてののどかな暮らしを思い起こさせる山間の集落を訪れることで、古(いにしえ)の時代を訪れたかのような感覚を抱くことでしょう。

    古民家ステイでタイムスリップ

     

    茅葺き屋根の効果を実感したいなら、実際に足を運び、一定の時間を過ごしてみると良いでしょう。

    そこで、古民家ステイができる、おすすめの施設をピックアップしました。古くからの知恵が詰まった、茅葺き屋根の魅力を体感しましょう。

    美山FUTON&Breakfast

    『美山FUTON&Breakfast』は、1日1組限定で、茅葺き屋根の古民家を借り切れる施設です。夏季には自然の涼風を、冬には独特の温もりを感じながら過ごせます。

    宿泊するのは、20畳の広さを有する、趣のある屋根裏部屋です。茅葺きの裏側を直に見ながら、古民家特有の雰囲気に包まれて生活できます。

    居間には、大きな囲炉裏も設置されています。魚を焼いたり、吊るした鍋料理を皆でつついたり、あるいは暖をとりながら会話を楽しんだりと、楽しみ方の幅も広がるでしょう。

    ● 施設名:美山FUTON&Breakfast
    ● 住所:京都府南丹市美山町島狐岩52
    ● 電話番号:0771-75-5125
    ● 定休日:無休
    公式HP

    蔵の民宿 本家扇屋

    『蔵の民宿 本家扇屋』は、国の重要文化財に認定されている、大内宿にある施設です。江戸時代から今に伝わる、貴重な茅葺き屋根の古民家に宿泊ができることで人気を集めています。

    床板には、栗木が使用されています。黒光りした様子が、重厚でありながらどこか懐かしさを感じさせる雰囲気です。

    食事処には、梁から自在鉤(じざいかぎ)が吊るされた囲炉裏が設けられています。囲炉裏を囲みながら、人気女将『きいこおばや』の料理に舌鼓を打ってみてはいかがでしょうか。

    ● 施設名:蔵の民宿 本家扇屋
    ● 住所:福島県南会津郡下郷町大字大内宿字山本36
    ● 電話番号:0241-68-2945
    ● 定休日:無休
    公式HP

    雅叙苑

    鹿児島県霧島市にある『雅叙苑』は、茅葺き屋根を持つ貴重な古民家を移築した宿泊施設です。自然あふれる天降川沿いに、一つの集落のような空間が作られており、喧騒から離れたくつろぎのひと時を過ごせます。

    自慢の温泉風呂は、巨大な一枚岩をくり抜いたもので、心身の疲れを癒してくれるでしょう。地元で収穫された野菜や、直営農場で育った地鶏を使った郷土料理も絶品です。

    客室は、露天風呂が付いたタイプやリビングを備えたタイプなど、それぞれに趣向を凝らした5部屋が用意されています。

    ● 施設名:雅叙苑
    ● 住所:鹿児島県霧島市牧園町宿窪田4230
    ● 電話番号:0995-77-2114
    ● 定休日:無休
    公式HP

    茅葺きの世界に飛び込む

    より深くその魅力を確かめたいなら、茅葺きの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

    茅葺きの効果や意義を体感できる、二つの方法について紹介します。

    ワークショップに参加

    ワークショップに参加することを通して、自分自身の手で茅を葺く作業を体験できます。実際に取り組んでみることで、茅葺き屋根が人々の暮らしにもたらす効果などについて、さらなる理解につながるでしょう。

    開催されるワークショップの内容には、いろいろなタイプが揃っています。茅を刈ることから始めるものもあれば、茅を葺く作業だけを行うものもあります。

    開催地も選べるため、参加しやすい場所・内容のワークショップを探してみることをおすすめします。

    古民家に暮らす

    思い切って、茅葺き屋根のある古民家に暮らすという選択もあります。日常生活を茅葺き屋根の下で送ることで、高い遮音性や断熱性・保温性・通気性による快適さを確かめられるでしょう。

    現在も、茅葺き作業を行う業者は存在しています。家屋の屋根に新たに茅を葺くこともできますし、あるいは既存の茅葺き屋根のメンテナンスを依頼することも可能です。

    茅葺き屋根は、設置や維持に、コストも手間もかかることは確かです。しかし、茅葺きに魅了された人にとっては、価値あるチャレンジだといえます。

    まとめ

    自然豊かな山間部に茅葺き屋根の家が並ぶ集落の風景は、多くの人に郷愁の念を抱かせるものです。日本人にとっての原風景といって良いでしょう。

    自然の力と、時代を越えて伝えられた技術によって支えられてきた茅葺き屋根には、人々の暮らしを守る知恵と、快適さにつながる魅力が詰まっています。

    ※地域の新型コロナウイルスの感染状況をお確かめの上、三密回避、マスク着用、検温対応など感染拡大防止を心がけるようお願いします。

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