草食は未来食 「草弁当」という草世界

2020.06.23

私が書きました!
草・馬文明探求
矢谷左知子
草・馬文明探求者 身の回りに居る野生の草たちとさまざまなコラボする中で植物の叡知を授かってきました。草工藝の作家を長年したあと、近年は草講座というワークショップを展開しながら、草文明の考察をしています。宮古島の在来馬のサポートもしながら、今は馬文明へ移行中。

早春の草弁当 庭のフキノトウ、菜の花、ツユクサ。近くの海から汲んだ海水でつくったお豆腐。揚げ物も含めてすべてが植物

身の廻りの草をいただく

この時季、山道沿いの我が家の庭や周辺には、草々がふんだんに出揃い、下を向けば地面に、上を向けば枝々にと、世界は新しい緑で覆われていきます。そこここでピチピチと芽出しの弾ける音が聴こえてきそうです。

暮らしの買い物には歩いて山を下りなければならない立地に住んでいることもあって、庭では小さな畑もしていますが、この時季には自生の食べられる草もたくさん。

なかなか買い物に出れない時などにも、草が生えてくれているというありがたさは格別です。

ふだんから草食の私ですが、とくに春から初夏は食べられる草が次々と芽吹き、毎日力強いおいしさを味わう日々です。

草を求めて遠くに取りにいくということはありません。あくまでも足下の草、自分の周りのものだけで済ませるスタイルです。

この春は庭にフキノトウが大量に出ました。天ぷらのおいしいことといったら!

その時季には毎日のように食べ続けました。フキ味噌や、フキノトウスコーン、蕗の薹パスタも好評でした。

ツワブキ、ノブキやヨモギ、ツユクサ、野ミツバなどは定番のおかずとなって食卓を彩ってくれます。栽培したものにはない、香り高く潔い味がします。

ぐるっと庭を一巡りで食べられる草たちをいただく

草食のお弁当

アトリエでは時々「草講座」というワークショップを主宰しています。

野生の草の手仕事講座で、草から糸をつくったり、紐を撚ったり、カゴを作ったり、草染めをしたり、と暮らしの道具を周囲の草からつくってみるという時間ですが、その時にお昼には「草弁当」なるものを出しています。

草とは実は多様な味わいを持つ、大変魅力ある食材である、ということを知ってもらいたくて、庭の草で作っています。

草主体の完全菜食のお弁当ですが、初めての方や男性陣も満足いただけるような味付けやボリューム、そしてその時の草たちが活き活きと輝けるような盛りつけを考えてつくります。

野生の草たちはアク抜きが大事で、それも味の決め手になります。

でも香りや勢いをなくすほどにはアクをとらないこと、その加減も大切です。

ひとつひとつの草たちが個性的で深い味わいを持っている、すべての草がこれほどまでの自己を確立させ、毎年毎年地上に現れ出てくるということ、それは当り前のようで、なんとまあ素晴らしい現象でしょうか。

日々のごはん時にも庭をぐるっとして、なにかしら草を摘んでおかずに取り入れます。

これから夏に向けては、野菜がなくてもなんとかできるほど、佃煮など保存食にしておけば、夏以降も楽しめます。

おかずにもなり、お茶にもなり、私たちを支えてくれる草たち、すぐそばにいつも居てくれる存在です。

草食(くさしょく)は未来の食

スギナ塩のおむすび

土筆の押し寿司

戦後の食糧難の時にはあらゆる草を食べたことでしょう。

食べ物が溢れてくると、皆そうした地味で滋味のものをまたたく間に忘れてしまいましたが、時代が飽和に至った今、あらためて足下に居てくれたものへの回帰、再発見も始まっているように感じています。

栽培ではない、採集文化。

なによりも生えたい場所を自ら選んで出てきた自生の草は、力を持っていて本当に美味しい、何千年も続いてきたひそかな食文化であり、可能性に満ちた未来食でもあります。

草たちは大地から人の暮らしを支え助けてくれる存在です。が、それを人は気づきません。食も含めて薬に道具に、ますます植物たちとフェアにやりとりしながら洗練された共生を営んでいく、その方向性に豊かな未来が開けていくのではないでしょうか。

草のひとつひとつの存在が見えてくれば、問答無用の草刈りや除草剤の前に草からの智慧を授かるはずです。

草たちはその智慧を披露したくて、うずうずしながら出番待ちしているに違いありません。

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