京大のオオサンショウウオ博士が登場! 中間的な生物〝両生類〞で自然環境の異変をキャッチ! | ナチュラルライフ 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.12.08

    京大のオオサンショウウオ博士が登場! 中間的な生物〝両生類〞で自然環境の異変をキャッチ!

    京大のオオサンショウウオ博士が登場! 中間的な生物〝両生類〞で自然環境の異変をキャッチ!
    ノーベル賞の受賞者もたくさん出ている東大と京大。大学を歩いてみると、未来のアウトドアライフをより豊かにするのでは? と思わせるオモシロネイチャー研究者たちが隠れていた! 今回は自然環境の異変に敏感な両生類を研究する博士が登場。
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    東大&京大 未来を変える! 注目のオモシロ自然研究  研究者ファイリング 02 オオサンショウウオ博士

    京都大学大学院 人間・環境学研究科教授 西川完途さん

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    両生類は
    カワイイ?

    にしかわ・かんと 1975年福岡県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科後期博士課程退学。人間・環境学博士。両生類の系統分類学を専門にアジア各地を忙しく飛び回っている。著書には『爬虫類・両生類』(学研)など子供向けの図鑑も多数ある。

    日本産オオサンショウオの保護活動に邁進

    生物をめぐる探検で大きな業績といえば、新種の発見だろう。古くから調べられているので、近年では新種はなかなか見つからないはずだが、2日に1種ほどの数で新種記載される陸上動物がいる。それが両生類だ。

    「分類が難しい生物で、分類が進んでいないためである」
     
    と最近の本で書く西川完途さんは、京大爬虫両棲類学研究室(研究室名は「棲」を使う)のリーダーである。現在、日本国内、東南アジア、東アジアへと探検調査に出ている。研究室にライフジャケットなどが並び、いつでもフィールドに出られそうだ。
     
    西川さんは幼いころから生物好きで、大学では当初、イワナをはじめとした淡水魚の研究をしようと考えていた。しかし、そのうちに両生類の不思議さに魅せられていったという。

    「両生類は乾燥に弱い。そのため水中と陸上の中間的な場所が生息地です。この『中間的』というのが、両生類の特徴を表わしやすい。昆虫を食べてヘビや鳥に食べられるという、食物連鎖の中間でもありますからね。
     
    日本には現在98種の両生類がいます。弥生時代に水田稲作が始まり、湿地という中間的な場所が増えたことで、日本列島で少なくとも一部の種はどんどん増えていったと思います。でも、彼らの生息地は気候変動の影響を受けやすい。渇水が続けばなくなり、洪水で流されます。地球温暖化で生物絶滅が起こるとすれば、その予兆は、両生類から起こるのかもしれません」

    戦いを避けるように平和に暮らしている

     
    もうひとつ、西川さんは両生類の魅力を挙げる。それはまるで戦争をやめられない人の生き方に、見直しを迫るような彼らの独特な生き様である。

    「みなさんカエルに襲われたことなどないと思います。敵が近づいていったら逃げるのが彼らの習性なんです。その姿は、あたかも戦いを徹底して避けているかのように思えます。
     
    日本では昔から『ヘビに睨まれたカエル』などといいますね。でも、カエルは睨まれて手足がすくんでいるわけではありません。彼らは、いつも逃げるかじっとしているかで、自分から攻撃することはしないんです。餌の食べ方も昆虫が自分に近寄ってくるのをじっと待つだけです」
     
    日本の両生類には、カエル類のほかイモリ・サンショウウオ類がいる。カエルはよく知られるように、オタマジャクシ時代は水中で暮らし、カエルになると陸上を主な生息場所にする。一方、アカハライモリは水中で子供時代を過ごした後、一旦陸上に上がるが、さらに成長すると再び水中に戻るそうだ。生き方に多少の違いはあるが、中間的な場所で戦いを避けるように平和的に生きる点では、どの両生類も同じだという。

    駆除した個体は進化史解明に使う

     
    そんな両生類だが、昨今は危機に瀕している種もいる。外来種の移入も含めた人間による自然破壊が原因だ。
     
    たとえば、オオサンショウウオ。この種は国の特別天然記念物に指定される日本の固有種で、しかも、両生類としては世界最大である。それが今、外来種に生存を脅かされている。日本人によって食用として持ち込まれたチュウゴクオオサンショウウオが、何かの拍子に逃げ出し、繁殖したのだ。
     
    この現象を前に、西川さんは立ち上がった。クラウドファンディングで資金を集め、日本産の保護活動を始めたのである。

    「両方の種で交雑も起こってしまっています。中国産や交雑個体のほうが生命力は強く、日本産を守るためには駆除するほかありません。そうはいっても彼らに罪はない。活動を手伝ってくれている学生たちも、駆除に心を痛めています。ですから、捕獲した後は、できるだけ研究に役立てています。人間としてのせめてもの償いですよ」
     
    交雑個体は、異なる地域に起源を持つ種から新しく生まれた。地球の生物史上、過去に自然現象として同じことが起こったはずである。西川さんは、交雑個体を生物進化史の解明に役立てようと考えている。

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    研究室で日本産と中国産の交雑個体を飼育。40㎝を超えるほどだがまだ大人になったばかりだ。成長すると1mを超える。

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    分類学の研究には標本が欠かせない。学内には標本用の部屋もあって大切に保存されている。中には戦前に捕獲されたものもある。

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    小さな個体、見つけた!

    研究の大半は野外でのフィールドワーク。山に登り、川や湿地を歩きテント泊もする。アウトドアでの技術も研究の大きな推進力だ。

    両生類には稀少な種が多い

    オオミズカキチョボグチガエル

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    東南アジアの希少種。チョボグチガエルは熱帯アジアに棲み、体長3㎝ほどの種もいる。西川研究室の院生が新種を発見したことも。

    カスミサンショウウオ

    西川研究室で生息域を調査している種。九州の北西部にのみ生息している。絶滅が危惧される「希少野生動植物種」に指定されている。

    世界最大の両生類オオサンショウウオの保護活動も

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    日本産のオオサンショウウオは岐阜県以西の本州、四国、九州の一部に生息。京都市内の賀茂川では、中国産の侵入により絶滅が近いと推測されている。

    西川さんは普及のためにオオサンショウウオのぬいぐるみを監修。購入すると日本産の保護に貢献する仕組み。左から日本産、交雑個体、中国産。各3600円(税別)。

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    戦前の標本の中には骨格標本もある。水底を歩く様子を想像させる出来栄えだ。

    ※ぬいぐるみは西川研究室のサイトからメールで問い合わせを。https://nishikawalab.h.kyoto-u.ac.jp

    ※構成/藍野裕之 撮影/作田祥一

    (BE-PAL 2025年12月号より)

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