やさしくって強い。自然を纏う草木染めブランド『MAITO/真糸(マイト)』

2019.10.21

私が書きました!
編集者・ライター
ニイミユカ
兵庫県出身、浅草在住。よく食べよく動く、編集者・ライター。暮らしやものづくりにまつわる企画をメインに、雑誌や書籍、WEBメディアなどで編集・執筆しています。「機嫌よく暮らす」がテーマのWEBサイト『melabo』運営中。

キャンプやハイキングなど、外遊びを楽しむうえで、これからも地球には気持ちよくあってほしいもの。そのためにも“エシカル生活”を始めてみませんか? 「エシカル」とは、自然と人と動物がちょうどよい塩梅で共存できる世界を目指すこと。日本人が古くから持ってきた「おかげさま」「足るを知る」といった考え方を実践することが、“エシカル生活”につながると考えられています。ここでは、日々に楽しみながら取り入れられる、エシカルな物事を紹介していきます!

第2回:みんなにやさしい方法で、これまでにないものづくりを目指す『MAITO/真糸』

MAITO/真糸』のアイテムを初めて見たとき、本連載を担当する記者は、カラフルな色合いに驚きました。それは「草木染め=ナチュラルな色」という思い込みを打ち砕かれた瞬間。思わず近づき、手にとったことを覚えています。その魅力を覗くため、東京・蔵前にあるアトリエ兼お店を訪れました。

身近な自然を纏う、大地に根ざした技法

さて、インタビューを始める前に。そもそも「草木染め」とは、植物を煮出して抽出した色素で染める技術のこと。ルーツは太古にまで遡ります。

道すがらで見かける樹木、草花。スーパーマーケットで手に取る旬の果物。台所でむいた野菜の皮に、コーヒーや紅茶の出がらし……。こうした身近な存在が原料であり、ほとんどすべての植物が染料になるといわれています。とくに、日本は四季があり、雨も多いことから、植物の種類が豊富。そのため技術も発達したと考えられているそうです。

不思議なことに、草木染めが染められる生地は天然素材のものだけ。大地に根ざした技法ともいえます。

MAITO/真糸』について、お話ししてくださったのは、代表の小室真人(こむろ・まいと)さん。9才のときにお父さまが草木染め工房を立ち上げ、その技を眺めて育ちました。

ーーまず、草木染めブランドを立ち上げたきっかけから聞かせてください。

「父が草木染めに携わっていたということが、やはりきっかけですね。『面白いことをしているな、楽しそうだな』と、子ども心に感じた記憶があります。その後、家業を手伝ううちに興味が深まって、大学では染織を専攻しました。友禅染や紅型染などの伝統的な染織技法を学んだのですが、そのなかで、草木染めの技術が失われつつあることを知ったんです」

ーーこれは、なくしちゃいけないぞと。

「はい。そういう気持ちもありました。あとは、学んだことに面白さを感じる一方で、布は、飾るのではなく、人に使ったり着てもらったりしてこそと考えるようになったんです。そこで、家業でもある草木染めの道へ進みました。

実家の工房で6年くらい修行したのですが、そのうち、自分なりの解釈と提案が生まれて……。それは、製品をつくって売るだけじゃなく、ブランディングすることで広く知ってもらい、この技術を残したいということ。そこで、2008年に独立して『MAITO/真糸』を始めました」

店内にずらりと並んだ衣類。同じ素材でも、収穫時期や気候によって、微妙に染めあがる色が変わるそうです。そのため、同じ型でも印象がグッと違ったものに。

故きを温ねて新しきを知る。アナログと最先端を掛け合わせたものづくり

大阪の泉州にある自社編み機で製作した、コットン製ジャカード。スカートやストールをラインナップ。肌への刺激が穏やかで、静電気も起きづらいんだとか。

ーー『MAITO/真糸』を代表するアイテムの一つがニットですね。ふわりとした優しい触れ心地で、身につけていても気分がいいです。

「ありがとうございます。実はこのニットが、ブランドを立ち上げるきっかけになったんです。

10年ほど前、テレビで『島精機製作所』が開発したホールガーメントⓇ横編機でニットが編まれる様子を観ました。それまでニットには手編みで、平たく編んでいくイメージしかなかったけど、機械に糸をセットするだけで立体的に、どんどん編まれていく。最先端の技術に気持ちが高まりましたね。

しかも、この方法なら、通常であれば裁断によって出る40%ものロスもなくなるうえに、無縫製だから身体にやさしくフィットするニットができる。地球にも人にもやさしい、草木染めに通づるものづくりだと感じました」

綿を染めた糸で編んだコットン製のくつ下は、老若男女問わず人気。「草木染の綿ゆったりソックス」全8色、各1600円。

ーーなるほど! そして、もう一つの特徴が「綿を染め上げる」というつくり方と聞きました。

「はい。製品や糸よりも前の段階の、オーガニックコットンの原綿から染めています。これにより、色落ちしにくく風合いのある糸になり、より堅牢度の高いものづくりができるんですね。つまり、美しさをより長く楽しんでいただける。

しかも、色を濃くしたり、色落ちを防ぐために繰り返す”染め・洗い”の作業を大幅に省くことができるから、価格も抑えられるんです。草木染めといえば、色落ちしやすいけれど高価、というイメージを打ち砕けると思いました」

職人の顔を見て、声を聞くところから始める

ーーブランドを立ち上げた当初から、大切にしていることはありますか?

全国各地の職人に会うところからものづくりを始める、というスタンスですね。

職人さんの特性は、まさに多種多様。直接会って、コミュニケーションをとることで、ご本人が気づいていない能力や特性が見えてくるんです。それに、職人さんの失敗談からヒントが得られることも多いんですよね。確かな技術をもつ方々の、あらゆる可能性を引き出したいと考えています。

ーー失敗談も視点を変えれば活きる、ということですね。そんな風に考えるのは、小室さんがつくり手であるお父さまの元で育ったことや、学校などでものづくりに進む人たちと、たくさん出会ったからかもしれませんね。

「そうかもしれません。僕は、使ってくださる方々はもちろん、ものづくりに関わるすべての人たちが幸せであってほしいんですよね

お店の奥にある工房。ここでは、不定期で定員制のワークショップ(WEBサイトから事前に要予約)も開催しています。「今後は、お客さまと一体になって驚きや喜びを共有出来る体感型の企画を検討中です(小室さん)」。

ーー誰もが幸せであることって、何事においても、とても大切ですね。

「はい、それが持続に繋がるとも思います」

ーー最後に、今後思い描いていることを聞かせてください。

「現在動き始めているボタニカルレザー(100%天然由来の革染め)を始め、いろんな素材や見たこともないような植物を使って、いろいろな染めをしたいです。

また、衣料やレッグウェアなどのレディースアパレルが中心ですが、ベビー用品やインテリア雑貨など、生活に根ざしたデイリーアイテムも増やしていきたいですね。アイテムの幅を広げることで、老若男女問わずご愛用いただけるブランドでありたいと思います。

あとは、海外からのお客さまも近年増えつつあるので、世界中の方に草木染めの魅力を伝えていけるように頑張りたい。そのためにも、現在は“染め”と“編み”に特化していますが、今後は“織り”も交えた、3つの要素をまとめた製作の場をつくりたいと模索中です」

ーー取り組みたいことは、山のようですね。ありがとうございました。

そのカラフルな世界は、使い手、つくり手、地球環境……ブランドに関わる、さまざまな物事への思いやりと、熱い創作意欲に支えられていました。

 

MAITO/真糸』代表 小室真以人さん
1983年、福岡生まれ、東京育ち。9才で再び福岡へ。東京藝術大学美術学部工芸科で染織を専攻。在学中に伝統技法を学ぶ傍ら、革の草木染めなどの新しい技術表現を模索。2007年、ホールガーメントニットを導入し、技法を習得。2008年に自身のニットブランド『MAITO/真糸』をスタート。2010年『Maito Design Works』設立。同年、東京都・上野にある『2k540』へ直営店を出店。2012年に東京・蔵前にアトリエショップをオープンした。

 

<アトリエショップ『Maito Design Works 蔵前本店』概要>
住所:東京都台東区蔵前4丁目14-12 1F
営業時間:11:30~18:30
定休日:月曜 ※祝日は営業
Tel:03-3863-1128(平日11:30〜17:00)

WEB:https://maitokomuro.com

 

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