「キノコ採りのとき山へ持っていく道具? そんなにはねえぞ。剣鉈だろ。ザックだろ。おっと、大事なのがあった。鎌だよ。杖代わりだからあんまり意識したことなかったけど、考えてみりゃ、キノコ採りではいちばんよく使うな」
と、奥利根の番長、モリさんこと高柳盛芳さんが車から取り出したのは、柄の長い小鎌だった。
近在の老刀鍛冶に剣鉈を頼んだとき、一緒に鍛えてもらったものだ。使っているハガネは玉鋼。日本刀に使われている伝統的な炭素鋼だ。なりこそ小さいが、鎌の峰はしっかり厚く、肌には荒々しい鎚目が残っている。