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極夜の旅で探検家が見たものとは? ー『極夜行』角幡唯介  

2018.11.09

全国の書店員が選ぶ、本屋大賞。今年初めての試みとして、本屋大賞がYahoo!ニュースと組み新たにノンフィクション部門賞を新設した。栄えある第一回目のノンフィクション本大賞は、角幡唯介さんの『極夜行』(きょくやこう)に決定! 本好きの書店員のみなさんから圧倒的な支持を集めた『極夜行』。

それにしても極夜とはいったいなにか……

昨今、地図の空白域を埋める探検はほぼ不可能になっている。そんな中で角幡さんが挑んだ挑戦は、「私たちが暮らす社会の外側」だった。

 

極夜行

『極夜行』角幡唯介著 文藝春秋 ¥1,750

システムの外側へ挑む

 角幡さんのビーパル本誌連載(4月号)でちらっと紹介されていた、極夜のグリーンランド探検記である。もちろん橇犬であるウヤミリックも一緒だ。
 角幡さんは、このグリーンランド探検の準備(装備調達、デポ設置など)に4年の歳月を費やしたという。探検期間は真冬の4か月。先住民が住む集落としては世界最北のシオラパルクを起点に、氷河を越えツンドラを突っ切り最終的には北極海を目指すのだ。しかも極地方に特有な極夜、つまり数か月も続く暗闇の中を、橇を引きながら歩き通すという尋常でない旅だった。

 極夜という選択には、はっきりした目的があった。人間にとってすべての行動の基準となっていたはずの太陽が、文明(電気)の発達とともに軽い存在となり、現代では本当の太陽が見えなくなってしまっている。同時にそれは、真の闇も失ったということ。だから、太陽がまったく出ない極夜の世界を体験すれば、それが明けたとき本物の太陽を見られるのではないかと考えた。角幡さん自身、「これは自分の人生において最も重要な旅」と位置付けたのだった。
 だが探検である。予定や目的などというものは、現実の前では幻想にすぎない。登り始めたばかりの氷河で、予想をはるかに越える激しいブリザードに2度も襲われ、いきなり進退窮まる。さらにGPSなど持たない角幡さんが、いちばん頼りにしていた特注の六分儀まで吹き飛ばされてしまう。となると、普通ならいったん撤退するところだが、探検家はマイナス40度の中でひたすら寒さと恐怖に耐え、その後はコンパスと星と自分の勘を信じて進んだ。これをはるかに上回る艱難辛苦が次々に待ち構えていたというのに。
 プロの探検家とて不安や後悔に襲われることもある。が、生死をかけた状況になると、ここまで知力も行動力も意志もタフなのかと何度も驚かされた。
 心底冷え切る冬に逆戻りすることを覚悟して読んでいただきたい。

 

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)
ノンフィクション作家・探検家。1976年、北海道芦別市生まれ。早稲田大学探検部OB。元朝日新聞社記者。チベット・ツァンポー峡谷の探検を描いた『空白の五マイル』で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞をトリプル受賞。『雪男は向こうからやって来た』で新田次郎文学賞、『アグルーカの行方』で講談社ノンフィクション賞、『探検家の日々本本』で毎日出版文化賞を受賞。対談・書評集『旅人の表現術』、沖縄・伊良部島の漂流漁師を追ったノンフィクション『漂流』、最新刊『極夜行』(文藝春秋刊)が好評発売中。

 

※構成/三宅直人

(※この記事はビーパル5月号に掲載されたものを再編したものです)

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