私たちでもできるSDGs活動って、一体何?カヌーイストで環境マンガ家の本田亮さんに聞いてみた | 本 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2021.06.16

    私たちでもできるSDGs活動って、一体何?カヌーイストで環境マンガ家の本田亮さんに聞いてみた

    今、行動しないと地球は人間が住めなくなってしまう

    最近、よく聞くようになった「SDGs」という言葉。レジ袋が有料化になったり、サステナブル製品を目にしたり、行政や企業の取り組みを知る機会は増えたけれど、実際どういうことなの? と疑問に思っている人も多いはず。今、私達ができることについて、カヌーイストで環境マンガ家の本田亮さんに聞きました。

    ー本田さんが「SDGs」を意識されたのは、いつですか?

    「33年前にサハラ砂漠を横断するパリダカールラリーを追いかけて走ったときですね。サハラは真っ赤な砂浜が永遠と続くんですが、突然真っ白な砂丘地帯が現れたんです。すぐに走り寄って写真を撮ろうとしたら砂漠ではなく、貝殻の浜でした。ものすごい量の貝殻が連なっていたので、これはどういう状況なのか近くの村人に聞いたんです。そしたら、昔は湖があって漁師がいたけれど、干上がってしまったと。そのせいで漁師たちは生活ができなくなったというんです。そのときに地球温暖化というのをリアルに感じました。砂漠化や地球温暖化が始まっているということはニュースで知ってはいたんですが、リアリティはまったくなかったんです。だから、そのすごくシリアスな状況を見て、多くの人に伝えなくちゃいけないと思い始めました。

    すぐにユーモアイラストを描くことを思いついて、翌年には展覧会もやりました。当時はSDGsの中でも環境問題に特化したイラストでしたね。できるだけユーモアなものにして、身近に感じてもらおうと思ったんです」

    ーなぜイラストだと思ったんですか?

    「僕の仕事はCMプランナーだったんですが、CMというのは伝えにくい商品のメリットをわかりやすく楽しく短い時間で伝えるものです。だったら、その商品を環境問題に置き換えてみようと思ったんです。難しくて、固くて、近寄りがたい環境問題は誰もが近づきたくない。だけど重要な問題です。そのシリアスなものをあえて明るくて楽しくてみんなにとって近寄りやすいテーマにするには、ひとコママンガにするのがいいのではないかと考えました」

    ー33年前ですと、今と周りの反応も違いそうですね。

    「そうですね。環境問題の波はきていましたが、リアリティはなかった。いつかシリアスになるだろうとは思っていたでしょうけど、まだまだ身近な問題としては感じていなくて、誰もが生きている間には関係ないことだと思っていました。地球温暖化についても展覧会を見に来てくれた人から『暖かくなっていいじゃない』なんて言われたこともあったんです」

    ー今とは、かなり差がある意見ですね!

    「当時から人類すべてが取り組まないと地球は危ないとメッセージを発信し続けていたけど、届いているとは思えませんでした。今は待ったなしの状態で行動を起こさないと地球は住めない星になると感じている人が多くなりましたよね。とくにここ1年ぐらいはすごい。少し前は、企業の中のCRS(企業が儲かった利益の一部を使って世の中をよくする活動に参加したり寄付したりする活動)にいる人や教育の現場でのテーマでしかなかった。それが一般の人までおりてきているのを実感します。環境だけじゃなく、人権やジェンダーあらゆるものが注目されていますね。人間がこの地球で幸せに暮らしていくすべてのことがSDGsのテーマだとわかって、気にする人が増えたんだと思います」

    ー本の中では、本田さんが世界を旅する中で体験したことを元にSDGsの説明がされていますね。

    「SDGs関連の本は、たくさん出ているんですよ。でも読み込めば読み込むほど難しくなってしまう。学者の人やコンサルティングをしている方が書いているものは、ものすごい知識量だけど、テーブルの上の出来事だなという気がしてしまって。世界を旅する中でそのときはわからなかったけれど、今思えばSDGsに関連する出来事をたくさん経験してきました。だから僕は地球の上で感じたことを伝えて、わかりやすい入口にしたかったんです」

    SDGsはみんなのものである

    ー日本でもSDGsへの取り組みが盛んになってきているのを感じますね。

    「そうですね。日本は世界的なランキングでいえば17位ですが、いい方向に進んでいるとは思います。日本は世界でもトイレと水のキレイさは抜群に優れています。教育についても評価が高いですね。たけどSDGsがまるでできていない国は、まだまだたくさんあるんですよ。それらの国が日本と同じような取り組みまでできれば、もっと地球の未来は明るくなると思います。全世界がやらないと解決しない問題なので、先進国がインフラやシステムを手助けしてあげる必要性も感じます。自国内をちゃんとさせるのはもちろん、他国を助けることも日本はやらなくちゃいけないですよね」

    ー普段の生活でできるSDGsはありますか?

    「SDGsは、17個もテーマがあって、あらゆる項目が当てはまります。人間が人間として正しく生きる、地球のことを考えようとして行動したこと、何かちょっとでもいい行動をすればSDGsに繋がります。逆にこれだけをやっていればいいというものでもありません。毎日、いろいろな局面でその瞬間があります。それぞれの場面で地球のことを考えようとするスタンスが重要。ものを買う時、移動する時、エアコンを使う時、車で出かけるとき、ちょっと考えてみてください。自分たちの未来にとっていいものを選ぶようにすれば、きっとSDGsはいい方向に動いていくはずです」

    ーなるほど。ゴミの分別やエアコンの温度を1度下げるなど小さい行動でもいいんですね!

    「そうそう。SDGsは、すべての人の問題。企業や専門職のためのことではありません。難しく捉える必要はないんですよ。

    それぞれ興味があることをやったらいいんです。野生動物、人権、児童労働、意見があったり、心を痛めていることがあれば、活動しているNPOやNGOを調べてみてください。どう貢献できるかが見つかると思います。静かに粛々と当たり前に行動するのが、かっこいいですよね」

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    本田亮さん

    1953年、東京生まれ。電通にCMプランナーとして入社し「ピカピカの一年生」(小学館)など数多くのヒットCMをつくる。1990年に環境問題に目覚めて以降、日本全国で「エコノザウルス環境マンガ展」を開催。カヌーイストとして世界中を旅し、BE-PAL本誌では「サラリーマン転覆隊」を連載中。

    構成・文=中山夏美

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