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ロード、MTB、グラベル。一年待ってでも欲しい特別な自転車とは?

2020.04.14

私が書きました!
名古屋在住ライター
山本修二
1963年東京生まれ、名古屋在住。自転車が得意なフリーランスライターとして、本誌を中心に25年以上東京で活動。2015年に名古屋へ移住し、スポーツバイクの輸入代理店に勤務。2019年12月に再びフリーランスとなり、アウトドア遊びのパラダイス=名古屋から、ディープな情報をお届けします。著書『スポーツ自転車でまた走ろう』(技術評論社) http://yamabon.jp

ハンドメイドバイクに魅せられて

ドバッツのショールームに展示されている自転車たち。細部を見れば見るほど、手の込んだ作業の跡を発見できる。

2020年1月。東京で開催された「ハンドメイドバイシクル展」に出かけた。そこで目を引いたのが「ドバッツ」の自転車だった。27.5+(27.5インチ径で約3インチ幅のタイヤを装着したMTBの規格)のMTBが、怪しげな魔力を放っていた。

フレームのパイプとパイプを繋ぐ溶接部分は、なめらかに仕上げられ、一切の段差が消し去られている。その美しさは自然が創造した生命体の域にまで達しているかのよう。シルバーとグリーンの2色で構成される全体のカラーリングも秀逸だ。リム(ホイールの一部。タイヤを装着している輪型のパーツ)は、フレームに合わせて前輪がシルバー、後輪はグリーンに塗り分けられている。聞けば、ロゴも手塗りという凝りよう。それ以上、見続けると買ってしまいそうなので、その場から逃げるように離れた。

展示会で出あった自転車を見るため工房を訪ねてみた

ドバッツ・ライノ・ハウスの外観。1階に店舗とフレーム工房がある。名鉄瀬戸線旭前駅から徒歩15分。東名高速道路名古屋ICからクルマで約15分。

そんな衝撃の展示会から数か月。もう一度、その自転車を見たくなり、愛知県尾張旭市にある「ドバッツ・ライノ・ハウス」に出かけた。幹線道から少し入った田んぼの間に、大きな自転車マークがついた一戸建てがある。そこが、魅惑の自転車を生み出す工房だ。平日というのに、お客様が二人。店主でありチーフビルダーである齋場孝由さんが優しい笑顔で迎えてくれた。

齋場さんは、1980年に大阪にある東洋フレームで自転車づくりをスタートした。当時は、アメリカでMTBが生まれたばかりの時代。技術力の高さで定評のあったその工房には、名だたるMTBブランドの創始者たちが海外からやってきては、試作品、あるいは、フレームの製作を依頼していったという。1987年になり、齋場さんは単身渡米。当時、カリフォルニアにあったGTというメーカーの門戸をたたき、フレームビルダーとして雇われた。その会社にオーダーフレーム部門があったわけではなく、量産品の試作、トップ選手用のMTBフレームの製作を任されていたそうだ。

「当時を振り返ると、ほんとうに多種多様のフレームを作りました。大阪時代は、ツーリング車やMTBはもちろん、BMXやサイクルサッカーのフレーム、2人乗りのタンデムや3人乗りのトリプレッタまで、いろいろやりましたね。アメリカでは、日本で学んだTIG溶接の技術を用いて、MTBのクオリティをあげる仕事をしました。このTIG溶接という方法は、その後、MTB生産の主流となり、ブームを支える一役を担いました。仕事もそうですが、アメリカ・カリフォルニアでMTBが生まれ、そして、世界を席巻するまでの時代を、現地でライブで見て、その雰囲気を肌で感じたことが自分にとって大きかったですね」と齋場さんは激動の時代を振り返った。

あっ、あのMTBがそこにある!

パッと見は普通のMTBに見えるかもしれない。しかし、目を凝らしてみると、フレームの溶接後の仕上げや、カラーリングの凝りように驚かされる。長く楽しく付き合えそうな1台だ。これは、現在の齋場さんの愛車とか。

ハンドメイドバイシクル展で見た、あの自転車はショールームに入って正面に展示されていた。カーボン全盛の現代において、クロモリスチール製のフレームで、しかもサスペンション非搭載。それでも組み込まれたパーツは最新のスペックだ。「このビルダーは、ただモノではない」と感じたが、ルーツを聞いて納得した。そう、本物のMTBの価値と楽しみを心得ていて、今も普通に遊んでいる人なのだ。

恐る恐る価格を聞いてみると、そのMTBはおよそ50万円程度という。似たようなパーツスペックの量産車のわずか2倍程度。オーナーの意図を反映した注文設計で、しかも驚くほど手間をかけた作り。それを、ちょっとしたカスタム車と変わらない価格に抑えていることに驚かされた。そのためだろうか、納期は現在1年ほどを要しているそうだ。

憧れのオーダー車は、どうやって手に入れる?

後学のために、ドバッツの自転車のオーダー方法を聞いてみた。まずメールか電話で問い合わせて、オーダー待ちの順番に入る。これで注文の第1ステップは完了。そして、打ち合わせのアポイントを取る。お店を訪ねて、体のサイズを採寸し、どのような方向性の自転車にするかを話し合う。その後、フレームに使う素材、パーツ構成、色をつめていく。そこで、ある程度、固まったら図面をおこし、必要な部分を修正する。フレーム製作に入る前に、50%の料金を支払う。そして、フレームの製作がスタート。丁寧な手作業でフレームが仕上がったら塗装工場に送り、戻ってきたらパーツを組み付ける。そして、支払を完了して納車となるそうだ。

これはロードバイクか、ツーリングバイクか?ジャンルにこだわらない自分だけの夢の自転車を作れるのがドバッツの懐深さである。

ステムも自社生産。パイプを繋ぐ際には、最初から美しい曲線的な造形を目指しロウ付け(溶接の手法)する。そのあとに丁寧に仕上げをして、なめらかな曲線を描き出す。ボルトが目立たないようデザインされていたり、ハンドルの高さを調整するためのスペーサーまで同色に塗装するなど、細部まで徹底した仕上がり。

フレームを上から見るとハンドル後方からサドル下を結ぶ最上部のパイプが、左右にズレた位置に接合されていることがわかる。これは、フレーム内部を通したブレーキケーブルの形状を直線に近づけることで、少しでもブレーキレバーを握った際のタッチを軽くするための工夫だ。

グラベルロードバイクやバイクパッキング用の加工もお手の物

「最近では、グラベルロードバイク(ロードバイクよりやや太いタイヤを履いた未舗装路まで走れるスポーツ自転車)と呼ばれるロードバイクとMTBの中間のような自転車とか、ツーリングやバイクパッキングするために荷物を積みやすいようフレームに加工を施したり、増え続けるパーツ規格にいち早く対応したフレームなど、お客様のニーズも多種多様になっています。長らくMTBを作っているので、強度が必要なMTBはもちろん、最近ではグラベル(砂利道や未舗装路)を走るための自転車を求めてくるお客様が多いですね」。

そんな齋場さんは、現在も休みの日には自ら作ったMTBで山道に繰り出し、時間を作っては長距離のオフロードレースにも参加しているそうだ。

パイプの切断、溶接、磨きあげなど、塗装以外はすべて、この工房内で行われる。

二人三脚でサイクリストの夢をかなえる

ショールームに展示されていたドバッツのフレームは、現在、齋場さんとコンビを組む出口旭さんと二人で分業して製作している。予算に応じて、大衆的なパーツで組むこともできれば、最高峰のパーツを使い、その機能を最大限に引き出す仕事も得意だ。店舗では、量販メーカーの取り扱いもあれば、パーツの販売もある。

フレームビルダーというと、職人気質が強く、どうも敷居が高いという先入観を持つ方も多いと思うが、ドバッツには敷居の存在は感じない。例えるならば、自転車競技をテーマにした青春コミックに登場するような、豊富な知識と経験をもった気のいいオジサンがいる自転車ショップという印象だ。量販車で満足できない自分に気づいたら、こんな店を訪ねてみるといい。

ドバッツの創設者であり現在もビルダーとして活躍する齋場孝由さん(左)と、齋場さんとともに夢ある自転車を送り出す出口旭さん。

ショップ情報

ドバッツ・ライノ・ハウス

愛知県尾張旭市東印場町二反田348-2
TEL:0561-52-1022
営業時間 平日14:00~19:30、土・日・祝日9:00~19:30
定休日 水・木曜
https://www.dobbats.com/

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