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    2016.02.10

    【写真家・丹葉暁弥さんに聞く:後編】 極北の自然の中で生きるシロクマたちの素顔と、彼らの未来について

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    2015年10月に最新作『HUG! today』を上梓された、シロクマ写真の第一人者、丹葉暁弥さん。前回に続くインタビューの後編では、丹葉さんが長年の間見つめてきた、カナダのマニトバ州チャーチル周辺に集まる野生のシロクマたちの暮らしぶりと、人間との関係、そして環境の変化に伴ってシロクマたちが直面している事態についてお話を伺います。

    ――丹葉さんが撮影された写真を拝見すると、シロクマって、顔つきやしぐさの表情が本当に豊かだなあと感じるんですが、実際に車の中などから間近で見ると、野生のシロクマというのはどんな印象の動物なんですか? 

    丹葉暁弥さん(以下丹葉):これが本当に食物連鎖の頂点にいる陸上最大の肉食動物なのかと疑いたくなるくらい、かわいいです。ストレスのない自然の中で暮らしているからでしょうけど、喜怒哀楽の表情がはっきりわかります。歩き方とかからも、何を考えているのか伝わってきますね。

    ――性格はどうなんでしょう?

    丹葉:すごく臆病ですよ。音に敏感で、車がちょっと動いただけでバーッと逃げちゃいます。匂いにもすごく敏感で、1、2キロ先からでも嗅げると思います。目はそこまでよくはないのかも。ちなみに、これはネタなのかもしれませんが、氷の上でシロクマがアザラシに近づいていく時、目立たないように黒い鼻を手で隠しながら近づくという話をしている人がいました。そんなシロクマは見たことないので、違うんじゃないかなと思いますけど。シロクマは左利きだから左腕から攻撃するという話もどこかで聞きましたが、右腕で攻撃しているシロクマも見ましたしね。

    ――そんな話も出てきちゃうんですか。あと、写真で見ると、シロクマの毛って完全に純白というわけではないんですね。

    丹葉:ちょっとクリーム色がかって見えますね。雪や氷の上にいるシロクマは、実は見つけやすいんです。北極圏のほかの動物の白さとは違いますね。キツネ、ウサギ、ライチョウとかは本当に雪と同化してわからなくなるくらい白いんですが、シロクマだけは何キロ先からでも見つけられます。僕は、ガイドよりも早くシロクマを見つけられるという特技があるんです。

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    ――それはすごい……。ところで、シロクマは冬になって海が凍ると、主食のアザラシを食べるために海に向かうそうですが、夏の間はどこで何をしているんですか?

    丹葉:海から少し離れたところのツンドラ地帯にいますね。そこでだいたい、寝てます。本当に横になって。シロクマは夏の間、ほぼ絶食しているんですよ。冬になると氷上の旅に出て、アザラシを食べて、身体にたっぷり脂肪をたくわえます。ある調査によると、シロクマは、氷上の旅に出る直前のガリガリの時と、アザラシをたっぷり食べ続けて脂肪をたくわえた時だと、体重に倍近くの差があるそうです。

    ――ということは、冬になる前のシロクマは、相当はらぺこなんですね。

    丹葉:チャーチルは少し前まで、町で出たゴミを分別もせずに郊外で野焼きしていたんです。人口が少ないのでゴミ処理場がないんですね。で、そのゴミの匂いにつられて、はらぺこで気が立っている状態のシロクマが集まってきてしまっていたんですよ。それで最近は、昔あった軍の施設に残っている倉庫にゴミを一時的に貯蔵して、チャーチルから列車で隣町のゴミ処理施設に運んでいます。そうした対策で、町に近づいてくるシロクマの数が減ったとも言われていますが……自分の目で見たかぎりでは、それはないなあと。

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